戴きもの

□リリィ
6ページ/8ページ

「だが御柳。」

屑桐さんは俺を真っ直ぐ見た。

「お前は必ず甲子園に行くんだ。いいな?」
「ほーい。」

俺も屑桐さんを真っ直ぐ見た。

「じゃぁ屑桐さんは俺を絶対忘れない。いい?」

「当然だ。」

「だから俺も忘れない。」

「当然だ。」

屑桐さん、俺、屑桐さんが愛しいよ。
離れるなんて嫌だよ。

また、会えるよな?

「ねぇ、屑桐さ「まもなく、終電が参ります。」

…もう来たのかよ。
この手を放さなきゃいけないなんて考えられねぇ。

「…俺も一緒に行きたい。」
「そうだな。」
「行かないでよ。」
「…。」
「…変な事言ってごめん。」

「また会おう。」

あ。
俺の聞きたかった言葉、屑桐さんから聞けた。

…よかった…。

「じゃぁ屑桐さんがこっちに来てね。」
「…そうだな。」

電車が来て、ドアが開いた。
俺は右手を放した。

屑桐さんが電車に乗る。
1つの境界線ができたみたいで嫌だった。

「御柳。」
「なんスか。」
「今までありが「やめろ。」
「…?」
「そんな、今が最後みたいな言い方、やめろ。」
「…そうだな。」

そう言ってる俺からは涙が溢れる。

「メールも、手紙も、電話もするから。」
「あぁ。」
「会いに行くから。」
「あぁ。」
「絶対甲子園行くから。」
「あぁ。」

「屑桐さんも、俺に会いに来て。」

「当然だ。」

屑桐さんの言葉が終わると同時に、ドアが閉まった。

屑桐さんは、最後まで笑っていた。


 
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ