鋼文。

□血と渇望の行方
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毎月決まって或る時期に訪れる欲求がある。


甘いお菓子が食べたい。


旅の途中一人になると、何故かその欲求を我慢出来なくなる。
オレはアルと別行動をとる振りをして、こっそり大量のお菓子を買い込み、宿に戻った。


テーブルに広げられたクリームたっぷりのケーキ。チョコレート。プディング。それからアイスクリームにキャンディー。

一度口にすると止まらなくなり、今まで食事の出来ないアルに遠慮して控えていた分を取り戻す様に手掴みでガツガツと貪った。指に付いたクリームまでもを綺麗に舐めとる。
アルに見つかったらきっと『行儀が悪い』と叱られると心の隅で思いながらも、毎月のその行為を中々止める事は出来なかった。


やがて全てを胃に納めるとその足で向かうのは、常宿の簡素な、でもいつも清潔に手入れしてある洗面所。
生身の左手に歯で傷が付かない様に機械鎧の右手を口に突っ込んで嘔吐する。オレの周りに居るのは感の鋭い軍人ばかりだ。吐きタコでも有ればバレて咎められる。アルだって…


無理矢理に吐き出される残骸は苦しくて、でもそれよりも何かが悲しくてオレは泣いた。そのまま冷たいタイルの床に座り込んでぼんやりと思う。

オレが本当に欲しかったモノはなんだろうか?


誰か教えて。


誰か。




胃が落ち着いてから、散らかった菓子の包装やら何やらをアルに見つからない様に片付けて、倒れる様にボスンとベットに横になる。

そんな時は

決まってあの漆黒を思い出した。



オレが本当に欲しかったモノは



何?






END
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