◆ユリスマ本棚 1

□ユーリ様のご寵愛(★1)
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(甘い…)
 スマイルは、吹いてくる風の甘い香りに、ふと目を覚ました。
 「この部屋を好きに使え」ともらった“自分の部屋”…。
 閉め忘れて寝てしまった窓から、ふわり、いい香りがする。
(…花の香り?)
 昼下がりの心地よいあたたかさにさそわれて、スマイルはいつのまにかベッドに倒れ込んで、眠ってしまっていたのだった。
 今は、もう、夕暮れ…。

 う〜んと伸びをして、それから立ち上がって、窓から外を見てみる。
 オレンジ色の空、甘い花の香り、サーッと小さく水の音…。
(ユーリだ…)
 ここから姿は見えないけれど、ユーリが庭の薔薇に水をやる姿が目に浮かぶ。
(ユーリみたいに翼があったら、ここから飛び降りちゃうのに)
 パタンと窓を閉めて、スマイルは駆け出す…。

「あれ?スマイル、昼寝でもしてたっスか?」
「うん。ねぇ、ユーリは庭?」
「そうみたいっスよー」
 夕食の支度をしているアッシュに再確認して、スマイルは庭へと急ぐ。

 スマイルを自分の城へと招待し、住まわせた、美しきヴァンパイア、ユーリ…。
 初めは、ただなんとなく来ただけだったのに、彼のそばにいるうちに、どんどんその魅力に気づいていつしか…
「ユーリ」
「ああ…スマイルか」

 いつしか…
──── いつまでも、ユーリのそばにいたい…
 そんな気持ちが、スマイルの心の中に芽生えていた。

「何かあったか?」
「ううん、ただ、なんとなく…風がとても甘い香りだったから…」
 ユーリは、ガーデニングシャワーを高く向けて、夕日にきらめく水のつぶをながめているようだった。
「…薔薇…すごいね、キレイだね。ぼく…薔薇、好き」
「…おまえが…花が好きだとは意外だな」
 軽く笑いながら、ユーリは水やりを終えてシャワーを片付ける。
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