SERVAMP

□手品師と嘘吐き
1ページ/3ページ






雨が降っていた。



窓からの景色でベルキアはそれを知っていた。



あいにく今はベルキア1人。



あとのみんなは全員趣味だの私用だので出掛けてしまった。



暇で暇で仕方ないベルキアだが、こうも雨が降っていては何処かへ出掛ける気すらも失せる。



ムスッとした表情を浮かべながらベルキアは窓の外を睨みつける。



「つばきゅん傘持ってったかな。あ〜でもシャムがついてるし平気か。」



ベルキアが独り言と呟く。



そんなとき、ガチャリとドアの開く音がした。



誰か帰ってきたのだと嬉しげに振り向いたベルキアだが、直後ぎょっとした表情に変わった。



帰ってきた緑の髪の少年は、いつもの見慣れた姿ではなく、体中傷だらけで、血と雨で濡れていた。




「桜哉!?」



これには流石のベルキアも驚いて柄にもなくうろたえてしまう。



ふらつき今にも倒れそうな桜哉のもとへベルキアが駆け寄る。



「ベル・・キア」



「今つばきゅんに電話するよ。あ、ギリオトの方がいいのかなァ・・?」



自分にはどうすることもできないと判断したベルキアが仲間を呼びだそうとケータイを取り出した。



が、電話を掛ける前にベルキアの手は桜哉によって止められた。



「大丈・・夫だ、ベルキア。すぐ、治る。」



桜哉の言うように吸血鬼の傷の治りは早い。



だからといってこの怪我は酷すぎる。



一体誰がこんなことをしたのだろうか。




「とりあえずボクの部屋まで連れてってあげるよォ。ほら、首に手ェ回して。」



桜哉はよほどキツかったのか、珍しく素直に言うことを聞く。




ベルキアは桜哉を抱き抱えると自室のベッドに寝かせてやり、水を持ってきてやる。




「桜哉ァ、これ誰にされたの?」



ベルキアにいつものようなふざけた様子はない。



その証拠に声音が低い。



「・・・」



桜哉はキュッと唇を紡いだ。



ベルキアは桜哉が言わずとも十中八九サーヴァンプの誰かであろうことはわかっていた。



ベルキアはもちろんのこと桜哉もこの憂鬱組の中でも力のある下位吸血鬼の1人だ。



そんじょそこらの吸血鬼では桜哉に手も足も出ないだろう。



人間なんてもっての他だ。



まあ、人間は人間でもイヴだというなら話は別だが。



「桜哉、言いなよォ。誰にやられたの?怠惰?傲慢?嫉妬?憤怒?強欲?暴食?色欲?」



「・・全部、違う。サーヴァンプにやられたわけじゃ、ない。」



「へ?」



桜哉の意外な言葉にベルキアは唖然とした。 



「じゃア、イヴの方?強欲のイヴはやたらと強かったし〜。じゃなかったらまさか城田真昼?」



「真昼はそんなことしねぇよ!!」



桜哉は思わず声を張り上げた。



言った直後にハッとなったが覆水は盆に返らない。



桜哉に一喝されたベルキアはムスッとした表情になりながらも



「じゃあ誰なんだよ」



と聞き返した。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ