黒子のバスケ
□蜘蛛の巣
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霧崎第一は本日、練習試合のまっ最中だった。
バスケ人口を増やすために高校のバスケット協会が強豪校をランダムに選び練習試合をさせ、バスケの魅力をみんなに知ってもらうという企画が今年から始まったのだ。
霧崎第一はそれらの強豪から選ばれた1校だった。
霧崎第一の他に選出校は2校。
泉真館高校と、何の因縁か誠凛高校であった。
気乗りしていなかった霧崎だが、霧崎第一高校は都内有数の進学校。
学校の面子にかけても参加してほしいと理事長に頼まれ、普段優等生の面を被っている花宮はこれを拒めるはずもなく渋々承諾したのだった。
そして当日。
1戦目、霧崎第一は泉真館高校にラフプレーなしで圧勝した。
霧崎第一がラフプレーしなかったというのは泉真館や誠凛内でも話題になっていた。
しかし、ラフプレーの件よりも騒がれていた事実があった。
花宮真の様子が変だ、と。
40分間のあいだ、放ったシュートは1本も決まらない。
ドリブルもすぐに失敗する。
得意のスティールもまるで形なしだった。
いくら体調が悪くてもあの花宮がここまでグダグダだなんて、信じられることではなかった。
ときより顔をしかめたりしてはいるが、顔色はさして悪くない。
手を抜いてる様子もない。
「花宮、どうしたんだろうな。」
体育館の上から見ていた木吉が呟いた。
「さあな。また何か企んでないといいが・・」
日向が怪訝な顔をして言う。
「安心しろ日向。きっと今回は何もないさ。」
「何で言い切れるんだよ?」
「だってさっきの試合俺には花宮が何か企むどころか、ずっと必死だったように見えたから。」
日向もそれには納得といった様子で頷いていた。
一方、霧崎第一は1試合目が終わって、控え室で休憩していた。
「よく頑張ったねー、花宮。」
原がベンチに座って息を荒げている花宮の頭を撫でる。
「っ!さわるな!」
原は花宮からはねのけられ、不服そうにガムを膨らませた。
「どうすんだよ、後20分で誠凛とやるんだぞ。一回許してやってもいいんじゃないか?」
山崎が提案すると、他のメンバーも頷いた。
「花宮、一回ヌいてきていいぞ。」
古橋が言うと花宮は勢いよく立ちあがった。
「手伝ってあげようか?」
「いらねぇよ!バァカ!」
花宮はこう言うと、控え室を出てトイレに行ってしまった。
そう。
今、花宮のアナルにはローターが入っているのだ。
もちろん花宮が自分でしたわけじゃない。
昨日、花宮が同じクラスの男子生徒に告白されていたのだ。
花宮が悪いわけじゃないが、独占欲が強い霧崎のレギュラー陣は他人に惚れさせたお仕置きだと称してこの計画を企てたのだ。
つまり、先程の試合花宮は、ローターが入ったまま挑んでいたのだ。
満足なプレーができてなかった理由はソレである。
それを本気で拒まないあたり、花宮も彼らのことを好いているという証拠なのだ。
「ちゃんと抜いてきた?」
トイレから戻ってきた花宮に瀬戸が問いかける。
「うるせぇ。」
「ローターは抜いてないよな?」
古橋からの問に無言で頷く。
「今はオフにしてるけどさ、わかってると思うけど試合始まったらスイッチ入れるからねん。」
楽しそうなメンバーを見て、花宮は舌打ちをした。
「あーあ、花宮が本調子じゃなかったら絶対誠凛には負けるよなー」
「誠凛に負けるのは嫌だが仕方ないだろう。」
「わかってるよん。今から誠凛に勝つより楽しいこと始まるんだもんね。」
「お前らうるせぇよ。その下品な笑い今すぐやめろ死ね。」
花宮が一喝すると、「ごめんごめん」と軽い返事が帰ってくる。
「そんな怒んなよ花宮。それもこれも全部花宮が大好きだからやってるんだよ。」
花宮は全員に微笑まれて思わずたじろいだ。
「まァせいぜいバレないように頑張ってね♪」