黒子のバスケ
□事件目撃は恋の始まり
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「おい、こいつで間違いない。」
「お前が花宮真だな?」
「ああ?誰だよお前ら。」
花宮真は現在、見知らぬ男数名に囲まれていた。
油断したという他ない。
学校の帰り、本屋にでも寄ろうと町を歩いていると突然背後から何者かに殴られ、よろついているところを裏路地につれこまれてしまったのだ。
だが、こんな逆境に立たされても花宮の脳は冷静に働いていた。
「ふはっ。お前らM校の奴らかよ。この間の試合の恨みでも晴らしにきたか?」
花宮は彼らの制服から所属を割り当てた。
花宮の言うM校とは、先日霧崎第一と試合を行った学校である。
M校は、いわゆる不良校と言われる学校だ。
試合の時も、観客である生徒のヤジやらなんやらで花宮が苛ついていたのがいい証拠だ。
だが、花宮を一番苛つかせていたのは態度の悪い観客ではなかった。
敵チームのキャプテン。
彼は、花宮の最も嫌う性質を持った人間だった。
表すならば昔の不良といったとこだろう。
義理にあつく、仲間思いで、卑怯な手を使う霧崎に対して仲間を傷つけるのは許さないなどと意気こんでいた。
その姿は、花宮が最も嫌う男に似ていて、結果、不愉快に思った花宮は彼を再起不能にまで追い込んでしまったのだ。
「当然だ!てめー自分がしたこと忘れてんじゃないだろーな!?」
「おいおい、わざとじゃねぇって言ってんだろ?そもそも危険なのわかってて俺の肘の前にいたあいつが悪ぃんじゃねぇの?」
花宮は不敵な笑みを浮かべながら言った。
花宮を取り囲む男数名も、ニヤリと心底楽しそうに笑った。
「でも自分が無事で帰れないことくらい頭のイイ悪童クンならわかるよな?」
「ふはっ。殴りてぇなら好きにしろよ。」
「あれぇー?真クンは自分がリンチされると思ってるのー?」
嫌味げに言われるが、まさにそう思っていた花宮は、眉を寄せる。
「さすがの悪童クンもわからないみたいだねぇー。」
「んだよお前ら、一体なにを・・」
「いやー、マジで綺麗な顔してるなァ。」
花宮の言葉を遮り、1人の男が言った。
「!?」
ネクタイを捕まれ、顔を引き寄せられる。
急な展開に、さすがの花宮の脳も通常に機能することを忘れていた。
「男だけどこれならイケるだろ。」
「んー。俺も大丈夫そうだ。」
「つかその辺の女よりよっぽどよくね?」
男達の会話に花宮はハッとする。
わかってしまったのだ。
彼らのやろうとしていることが。
「クソッ、離せよ!!」
「暴れんなよ!」
「あれぇー?リンチは耐えれるけどレイプは嫌だって?」
「離せよ!近づくな死ね!」
精一杯暴れるが、数名の男と、花宮1人ではどちらが強いかなんて明白だ。
そうこうしているうちに花宮の衣服は乱暴にはぎとられていく。
今までたくさんの恨みを買ってきた花宮は、暴力で返されることがよくあった。
パワー型ではない花宮は、力で来られると敵わないと、それらを甘んじて受け入れていた。
抵抗するのはもっとみっともないからだ。
だが、レイプともなると話は別だ。
プライドの高い花宮は、自分がいいようにされている今の状況が信じられなかった。
「クソッ、離せ!離せよ!!」
花宮が大声で怒鳴る。
すると、
「何やってんだ?」
と、路地の奥から声がした。
そこに居合わせた全員が慌て振り向くと、そこに居たのは猫を抱いた大男だった。
男達が、誰だあっち行けと威嚇する中、花宮だけはその男を知っていた。
「そこに居るの、もしかして花宮か?」
「・・・木吉・・」
花宮が不快そうに呟いた。
そう。
猫を抱いた大男とは花宮と同じ無冠の五将である木吉鉄平だった。
花宮の姿を見て、流石の木吉も状況を察したのか、凄んだ顔で花宮を囲む男達に近寄る。