SERVAMP

□不幸人と骨董品屋
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「本当久しぶりだな。御国ますます綺麗になった?」




「はは、そんなことないよ。」



鈴木が御国の髪に触れる。



その光景は露木に表現し難い不快感を与えた。



「久々にお茶でも誘いたいみたいだけど、先約がいるみたいだね。」




鈴木が視線を露木に写しながら言った。



仕方なく露木は軽く会釈をする。



「なんだかひ弱そうだな。この人が今の客?」




鈴木が露木を指さしながら言った。


「いや、俺はもうウリの仕事はやってないんだよ。こいつはただの友達。」




「え?」



思わず露木は声をあげた。




(今、ウリって言った?)



「えー、そうなのか?もったいないな。御国みたいな美人はそうそういないのに。」




「どこにでもいますよ。じゃあ俺はこれから用事があるんで。」



「ああ、元気でな。」



「鈴木さんもね。・・修平行くぞ。」




「え?あ・・」



露木は御国に腕を引かれ、挙動不審になりながらも御国の後をついていった。












































「ふぅ、ここまで来ればもう大丈夫かな。」




御国が来たのは駅を出てすぐの薄暗い裏路地。




御国はため息をつくと露木から手を離した。




「悪いね修平。用事があるって言った以上、あそこで修平と別れても変だし。」



御国はそう言うと、露木に背を向け「帽子ありがとう。もう仕事戻っていいよ。」と言いながら足を進めた。





「待ってください御国先輩。」




露木は御国の腕を掴むと自分の方へ向きなおさせた。



「ウリの仕事って何ですか?」



露木が軽く睨みながら訪ねると、御国は余裕げに笑みを浮かべた。



「何ってそのままだけど?」






御国の言葉は露木に怒りや悲しみや妬みや苦しみなどの感情をあたえた。



「どうしてそんな・・」



修平の声は心なしか震えている。



「どうしてって、わかるだろ?世の中高校生が1人で生きていけるほど甘いと思う?」





生きるためにはこれしかなかった。




と、御国の瞳が強く語っていた。




「けど御国さんにはサーヴァンプがついていたじゃないですか・・!」



「はは、ジェジェがいるから何?人襲ってお金奪えって?」





「っ!」




露木は言葉に詰まった。




それは自分が言った発言を御国が無力化したからではない。




御国の顔が今まで見たことないような切なげな表情で、今にも泣き出しそうだったからだ。




露木は今まで気づかなかった。



御国が人知れない悲しみを抱えていたことを。



気づいてしまえば、当然のことだ。



弟を守るために母親を殺し、隠蔽するために有栖院家からは存在を消され、命を懸けてまで守った弟からは疎まれ、生きるために他人に体を売った。



そんな悲しみを背負って、御国は毎日気丈に振る舞っていたのだ。




露木はそんな御国を強く抱き締めた。



「え、何修平。」




「喋らないでください。」




「なんで・・」




御国が話すたびに腕に力がこめられる。




まるで御国の悲しみが溢れ出てこないよう押し込めているようだった。




「はは。ほんと何なんだよ修平。もしかして俺のこと好きなの?」



「はい。」




冗談っぽく話す御国に、修平ら至って真面目に答えた。



「え、?」




修平はさっき気づいたのだ。



自分はこの人が好きなんだ、と。




「御国先輩、さっき何て言おうとしたんですか?」




「・・さっき?」



「どうしてC3に来たがるのかって俺が聞いた時です。」




その質問に御国は目を剥いた。



「え、そんな事言ってたっけ?忘れたな」




「あの時御国先輩、俺に会うためって言ってくれようとしたんじゃないんですか?」




「!!」




「なんとなくですけどね、わかるんですよ。でないといつも不運に備えることなんてできません。」



露木はどこか誇らしげに言う。




「どうなんですか?御国先輩。」




「は、自意識過剰すぎ。」



「先輩、」



「でも、そういうことにしてやってもいい。」




そういうと、御国は露木の背中に手を回し、抱き締め返した。



露木は小さく笑うと、



「好きですよ。御国先輩。」




と言って、御国に触れるだけのキスを送った。



直後、露木の耳に聞こえるか聞こえないかくらいの声で「俺も」と届いた。



聞き間違いかと疑った露木だが、御国の真っ赤な顔を見て、それはないかと微笑んだ。































「ところで御国先輩、その体俺が浄化してもいいですかね?今。」

「は、今?無理に決まってるだろ?てか言い方がなんかキモい。」

「大丈夫ですよ。駅内のトイレは滅多に人が来ませんから。」

「あのねぇ、簡単に言うけど突然しましょうって言われても出来ないの。」

「準備は抜かりありません。」

「え、ゴム?ローションまで・・、どっから出して・・」

「備えあれば多少憂いあれど問題なし!」

「いや、何の備えだよ!流石に本気でキモいから!」



引き気味に悪態をついてみせる御国だったが、その表情は幸せそうだったという。






end.
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