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クラス中が浮き足立ったような騒がしいままで終えた午前授業。

次は昼休みというだけあってここぞとばかりに俺に群がる学生たち。

俺はそんな中、廊下に向かって歩いていく徹を人ごみを縫って歩いて後ろから手首を掴む。

「徹一緒にお昼、いい?」

こくりと首を傾げて困った、同情を誘うような顔で言うと徹は困ったように俺の後ろに群がる学生を眺めて。

あぁ、こんなに人がいたら落ち着いてご飯も食べられないよね。

俺は徹の手首を掴んだまま廊下に飛び出て走り出した。

「じゃあねっ!みんなもお昼、ちゃんと食べるんだよー」

そして追いかけてくる子たちを全力で走って何とか撒いて。

気付いたら知らないところに来ていた。

まぁいっか。誰もいないし。

「ごめん徹。巻き込んじゃって」

すると徹は少しムッとした何とも可愛い顔で腕を組んで俺を見上げる。

う、うわぁ…睨んでるみたいだけど俺の方が身長高いし見上げてくるしソレ上目遣い…可愛いっ…!

心の中では感極まって小躍りしながら、でも表ではポーカーフェイスでにこりと笑う。

「ちょっと何でいきなり連れ出したわけ?」

あら?怒ってる?

「ごめん。俺、徹と仲良くなりたくて……怒った…?」

しょぼんと申し訳なさそうな顔をつくって徹をチラッと見ると彼はしょうがないとでもいうかのように溜め息を吐いて。

「もういい…ご飯食べよ」

わぁ〜チョロい。

そんなところも好き。

にこにこと上機嫌でお弁当の蓋を開くと隣では徹が片手に持っていたコンビニ袋からパンを取り出して。

パンのパッケージには大きく『ミルクパン』と書かれている。

「徹パン好きなの?」

玉子焼きを箸で一口大に切り分けながら聞くとうん、と素っ気ない返事が返ってくる。

次に徹は俺の弁当箱を覗いて。

「からあげ、おいしそう」

と呟く。

俺は箸でからあげをつまんで徹の口元に差し出して。

「はい、あーん」

すると徹は素直に箸からからあげを食べてくれた。嬉しい。

あ、コレもしかしなくても間接キス…。

俺が徹のくわえた箸を凝視していると彼はもぐもぐとからあげを咀嚼して飲み込む。

「おいしい。自分で作ったの?」

再びパンを食べながら聞いてくる彼ににこりと笑いかけながら答える。

「あぁ、趣味は料理だから」

すると彼はおかしそうに笑って。

「なにそれ。アイドルなのに?」

う…可愛い…。

「今度弁当作ってきてあげる」

断られるだろうなーと思って冗談めかして言うと徹はえっ、と驚いた顔をして。

「本当?」

えっ?いいの?

「うん。徹さえ良ければ明日でも作ってくるよ」

すると徹は興味津々な顔で。

「アイドルの手作り弁当が食べられるなんて」

と呟く。

アイドルになって本当よかった。

そんなたわいのない話をしているといつの間にか休み時間が終わる5分前。

「そろそろ教室に帰るかー」

空になった弁当箱を持って立ち上がると徹もパンのゴミを持って立ち上がる。

次の授業はなんだろー。

そう思いながら歩き出すと隣を歩く徹が手に持ったゴミを弄りながら言う。

「俺もよく囲まれるけど遊佐くんはアイドルだし大変そうだね」

徹が持ってるゴミになりたい。

なんて一瞬思ったけど表情には一切出さず笑顔で。

「あぁ、徹が囲まれる理由分かるなぁ。徹、かっこいいし。ていうか名前で呼んでよ」

すると徹はムッと片眉をあげて。

「俺は本気で心配してるんだけど。握手とかサインとかキリがないデショ」

俺、徹の制服になりたい。

でもやっぱりにっこり笑って。

「あー、握手もサインも事務所からNGって言われてるし適当に断ればどうにかなるでしょー」

まぁいつまで経っても俺がこの学校にいる限りみんなは騒ぎ続けるだろうけど。

少し不機嫌な徹の手を然り気無く握って俺を見上げる整った顔に笑いかける。

「握手は駄目なんじゃないの…」

困ったようにそう言う徹の目を真っ直ぐ見つめて、愛しくて目を細める。

それからにこりと笑って。

「友達と手を繋ぐくらい許してよ」

そして二人で手を繋いで教室に戻った。

さて、午後の授業は何かなー。

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