短編集

□3:永遠の中で
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「は?」

俺はきっと間抜けな顔をしているだろう。

それでも信じられなくて聞き返すと、エレンはニッコリ笑って。

「だから、吸血鬼は立体機動が無くても空を飛べるんですよ」

それは、

「どういうことだ」

ちょっとよく分からない。

たくさんの疑問符を浮かべているとやっぱりエレンは眩しい笑顔で。

「まぁ、言われるより見た方が早いですね」

そして何の前触れもなくふわりと空中に浮くエレン。

どんな原理で飛んでるんだ、お前。

唖然としていると、空中でエレンが金目を光らせて。

「リヴァイさんもできますよ」

いや、

「どうやればいいのか全く分からん」

真剣に考え込むとエレンは妖しく笑って。

「オレが教えますよ。手取り足取り、ね?」

「...いや。口頭で教えてくれ」

「リヴァイさんつれないなぁ」

エレンはそう言って拗ねたフリをする。

「まぁ良いでしょう。まずは―――」




























「ここまで出来れば良い方ですね」

教えてもらって約3時間。

やっと地上から3メートル程、浮くことが出来た。

それにしても、

「不思議な感じだな」

ぽつんと言うと、エレンは首をかしげて。

「オレからしたら立体機動の方が不思議ですけどね」

「立体機動の方がしっくりくる」

「オレは何百年もこれで飛んでるので」

「そうだな」

そんな他愛のない話をして。

ふと、疑問を口にする。

「そう言えば、ここはどこなんだ」

ずっと疑問だった。壁の外とは聞いていたがそれ以上は聞いたことがなくて。

壁の外とは。

壁からどのくらい離れているんだ。

こくんと首をかしげると、エレンはニッコリ笑って。

「ここは、壁の裏側です」

「は?」


壁の、裏側?

訳が分からなくてエレンを凝視する。


「この、オレらが住んでる土地は球体で出来ていて」

エレンが紙にペンで丸を描く。

「ここが、人類の活動領域、いわゆる壁」

丸の一部にちょんと印をつけて。

「ここが、今オレとリヴァイさんがいるところ」

次にそう言ってその印の対極の所にちょんと印をつけて。



は?




完全にキャパオーバー。


土地が球体?

裏側?


つまり、


「よく分からない」

「でしょうね」

相変わらずエレンは笑ってて。

キラキラの笑顔。

そんなエレンに見惚れていると。

「夜になると空に星が光っているでしょう?」

「あぁ」

「ここもその星の一つなんですよ」

「えっ」

「他の星からここを見れば、同じように光ってますよ」




もう、訳が分からないから、この話はやめよう。

そう思って俺は誤魔化すように話題を変える。

「ここは巨人に襲われないのか?」

するとエレンは俺の頭を撫でて。

「言ったでしょう。オレは何百年も生きています。それこそ、人類が壁を築く前から」

「あぁ」

「何百年も捕まえられない、しかも人間じゃないオレを、巨人は捕食対象と見てないようで」

「...........」

「そもそも襲われたところで、オレは飛べるので。それもガスに限りがある、とかじゃなくて死ぬまで、ずっと飛んでいられます。巨人たちも諦めるべきと判断したんでしょう」

そして妖しく光る金目を向けて。

「それに、吸血鬼なんてマズそうでしょう?」

ニヤリと厭らしく笑う。

「確かにマズそうだな」

今の自分も巨人から見たらマズそうなのか気になる。

巨人の前に出て人間の頃と食い付きが違うか見てみたい。

なんて、考えていると。

エレンは顔をぐっと近づけてきて。

「でも、リヴァイさんはおいしそう」

鋭く光る金目に見つめられて、思わず固まる。

「ねぇ、リヴァイさん。オレ、お腹空いたな...」

そして俺の返事より早く首筋の顔をうずめて牙をたてる。

「っ.....!」

途端に体中に広がる快感が。

頭も、手も足も痺れて。

熱が下半身に集まる。

吸血鬼は人間の血じゃなくてもいいようで、エレンは俺の血を、俺はエレンの血を、食事とする。

ただ、この吸血行為には強い性的快感が伴って。

「リヴァイさん...気持ちいい?」

そうやって毎回、なし崩しに抱かれるんだ。




























「リヴァイさん。機嫌直してください」

「......................」

「ねぇ、ごめんなさい、リヴァイさん」

「.......................」

「リヴァイさぁん............」

エレンは叱られた犬のようにしゅんとしながら俺の肩をゆさゆさ揺らして。

それでも、意地でもエレンに視線は向けない。

エレンはかわいい。

よしよしって甘やかしたいと常日頃思ってはいるが。

それとこれとは話が別だ。

「リヴァイさん、何でそんなに怒ってるんですかぁ」

その発言に俺の中で何かが切れる。

「何でだって?俺が無理だっつってんのに強引にブチ犯したのはどこのどいつだ?しかも何回もイかされるし中出しされるしふざけんな。立てねぇじゃねぇか」

むすっとして言うと、エレンに頭を撫でられて。

「ちゃんと終わった後掻き出してあげてるじゃないですか」

「うるせぇ当然だろ」

「それにいつもはかっこいいリヴァイさんが甘ったるい声でオレの名前を呼んで、真っ赤な顔で泣くし、自分から腰振るし、可愛くおねだりしてくるし、しょうがないじゃないですか。オレじゃなくてもブチ犯したくなりますって」

「......もう黙れ」

恥ずかしくなってシーツに顔をうずめると後ろからエレンに抱きしめられて。


「だって、ずっとこうしたかったから。リヴァイさんの体温とか、息遣いとか、エロいリヴァイさんを想像して何度も抜いたし。本物とヤれるって思うと、つい歯止めが効かなくて」

「変態」

「はい」

馬鹿正直な返事に思わず脱力する。

それでも、こんなに思われているのが嬉しくて。

息が詰まりそうで。

あぁ、俺はこいつが好きなんだなぁ、って思って。

「......好きだ」

ぽつりと、本音が口から零れて。

しまったと思った時にはもう遅くて。


「リヴァイさん、今なんて言いました...?」

色気を孕んだ妖しい声が、耳元で囁かれて。

「エレン、落ちつけ、」

「もう一度言わせてやる」

妖しく微笑む綺麗な顔が段々近づいて。

「えれ、ん、.....待っ...ぁっ、もう、無...理、」


そしてまた夜は更けていく。

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