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□rust heart、3
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色々あった入院生活。
今日でやっと、それが終わる。
「今までよく頑張ったわね!」
「まぁみなさんの支えがあったのでね!」
「リハビリも大変だっただろう」
「そうですね!でも高校の入学には間に合いたくて!」
「ギリギリだったわね。これから入学式でしょう?」
「はい!そのまま行きます!」
「理愛ちゃん。退院、おめでとう」
入院してから一年と約3ヶ月、私の担当の医者と看護師に次々と言葉を掛けられて私はにこにこ上機嫌に笑う。
「今までお世話になりました!」
そして荷物を肩にかけて、私は歩き出す。
梟谷学園高校。
私が入学した学校に着くと校舎の近くの一ヵ所に人だかりが出来ていた。
あそこにクラス表でも貼り出してあるのかな、と思いながら真新しいシワ一つない綺麗な制服に身を包む人達に近付く。
あぁ〜見゛え゛な゛い゛〜。
しょうがない。
押し潰される覚悟で人だかりに突っ込んで行く。
埋もれそうになりながらも流されるようにクラス表が貼ってあるボードの前まで来て、運の良さに感謝しながら自分の名前を探す。
あ、あった。
同じクラスに知ってる人はー…いないか。
しゅんと落ち込みながらクラスに着いてみると黒板に席順の書かれた紙が貼ってあって、私はその紙を見に行く。
私の名字は木兎では行だからちょうど教室の真ん中辺りの席。
自分の席を見付けて座ると入学というイベントによってテンションが高くなった人達に囲まれる。
「初めまして!キミ可愛いね!名前は?」
何だかナンパみたいな名前の聞き方だな。と思って笑いながら質問に答える。
「木兎理愛です」
「理愛ちゃんか!これから一年よろしくね!」
一年という単語を懐かしく思いながらははっと笑って、
「こちらこそよろしく」
と言うと男子たちはみんなしてうつ向いた。
何事だと首を傾げると今度は女の子達が寄ってきて。
「初めまして。髪、きれいだね」
「そうかな。ありがとう!あなたも可愛いよ」
スッと目を眇て言うとその子は顔を赤くして固まる。
さっきからみんな挙動不審だぞどうしたんだ。私がかっこよすぎて惚れたかな?
そう思ってニヤリとちょっと悪い笑みをつくってみんなを見る。
「私、みんなと仲良くなりたいな〜。よろしくね?イロイロと」
最後、意味深な言葉と共に妖しく笑えばみんなは赤い顔で私を見る。
はい、オチた。
やっぱいいな〜人に好かれるって。
わぁわぁと騒がしくなった人だかりの真ん中でクスッと笑う。
すると女の子の一人に聞かれた。
「ねぇ、理愛ちゃんは何部に入るの?」
私はその子にニッと笑いかけて。
「ん。バスケ部」
あの時、バスケはもう絶対しないと決めた。それでも諦めきれなくて。
奪われて初めて気付いたから、私はバスケがないと駄目なんだと分かったから、一年で終わるはずのリハビリのプログラムを三ヶ月延ばしてただ動けるようになるだけでじゃなく、元の動きに戻れるようにするリハビリと、元の体力に戻すためのトレーニングをしていた。
おかげで見てこの筋肉。
自慢の筋肉達です。
今日は入学式とオリエンテーションだけで午前中に学校が終わる。
オリエンテーションで自己紹介をして、担任からちょっとした学校の説明があってもう終わり。
終わって早々机の横に掛けてあったでかいリュックを掴んで教室を出ていこうとすると女の子達に呼び止められる。
「あのっ、理愛ちゃん!」
「ん?」
「一緒に、帰ってください!」
いかにも勇気を出して言いましたって感じの女の子にははっと笑いかけて。
「ごめん、これからちょっと用事があって。また誘ってよ。その時は一緒にアイスでも食べに行こ!」
そしてヒラヒラ手を振って教室を出る。
後ろからはキャアキャアと黄色い声が聞こえて機嫌が右肩上がり。
軽薄だって?
違うよ、みんな平等に愛してるだけ。
目的の体育館に着くと私はこっそり中を覗く。
そこには、たくさんの人がいてゲーム形式で練習してる人もいればサーブ練をしてる人、スパイク練をしてる人と色々な人がいる。
そんな体育館の中はボールが地面に打ち付けられる音やバレーシューズと床が擦れて起こるスキール音が響いて懐かしさに思わず一人で笑ってしまう。
そんな中見付けたお目当ての人物。
バッシュに履き替えてそろそろと近付く。
私が一人制服で女だからか目立ってるけどドリンクを飲んでいる彼には気付かれてない。
クスクス笑って彼の後ろに回り込む。
そしてタオルで汗を拭いてる時、特徴的な派手な頭の彼の背中に思いっきり抱き付いた。
「うわっ!?」
そして背中によじ登って彼に目隠しをして。
「だ〜れだ?」
すると彼、もとい兄の光太郎は嬉しそうな声で。
「えっ!?えぇっ、理愛!?!?」
「せーかーい!」
目隠ししていた手を離して光太郎の背中から降りてひょこっと顔を見せる。
「ビックリしたー?」
光太郎の目の前でヒラヒラと手を振る。
光太郎は心底驚いた顔をして。
それからポロポロと涙を溢した。
「え、ちょ、こうたろ、」
まさか泣くとは思わなかった。
困った顔で名前を呼ぼうとしたら突然抱きしめられて。
「理愛〜〜〜!!!」
久々に兄から名前を呼ばれて照れ笑い。
なんてことをしている私たちの周りにはいつの間にか人が集まっていて。
「はっ!?木兎その子誰!?彼女!?」
一人の男の人がそう言う。
その言葉に光太郎が顔を上げるとみんな一斉に一歩下がった。
「おい……お前何泣いてんの…」
ドン引きである。
言われた光太郎は鼻をすすりながらぐすぐすと答える。
「だって!一年と三ヶ月と14日振りに会えたんだぞ!?」
「だからって泣かないでよ光太郎〜。笑っちゃうよ」
「笑うの!?でも元気そうで良かった…」
そして光太郎は私の首筋にすりすりとスリ寄る。
そろそろ離してほしい。
「あ、光太郎。今日から私家に戻るから一緒に帰ろ」
「えっ本当!?よっしゃ一緒に寝ようぜ!!」
「いいよ」
その会話を聞いて絶句する他の部員。
するとそこへ凛とした声が響いた。
「ちょっとみなさん何遊んでるんですか。練習してくださいよ」
声が聞こえた方へ目を向けるとそこにはクセっ毛っぽい黒い短髪の背の高い男の人が。
あ。
「京治?」
ぽつんと呟くと京治もこくりと首をかしげて。
「理愛?」
あぁ、運命ってこういうことを指すんだろうなー。
私は嬉しくて光太郎の腕からするりとすり抜けると京治の首に抱き付いた。