大声で魔法の言葉を、
□magic×3
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今まで入院してて休学中で自分の入学した学校すら忘れそうだったけどちゃんと着いた。
烏野高校。
俺は学ランが息苦しくて首元のホックと第一ボタンを外す。
ふぅ、と一つ溜め息を吐いて背中のリュックを背負い直して校舎の中へ足を踏み入れた。
とにかく職員室に着ければ。
そう思って校内地図を探すけどどこにも貼り出してなくて普通はあるもんだろうと心の中で拗ねる。
しょうがない誰かに聞くかな。
そう思って丁度隣を通り過ぎようとした男子生徒を呼び止めた。
「あの、すいません」
「ん?俺?」
振り返る男子生徒は優しそうな顔が印象的だった。
色素の薄い髪はセンター分けで肌も白い。可愛いという言葉が似合う。
俺はそんな彼の目を真っ直ぐ見つめてヘラリと笑って。
「あの、俺休学が終わって学校に来たのはいいものの職員室の場所が分からなくて…教えていただけませんか?」
すると彼は一瞬きょとんとするがすぐにニカッと笑顔を浮かべて。
「じゃあ案内するよ。ついてきて」
そしてスタスタと歩き出す。
彼に並んで歩いていると思い出したかのように話し掛けられた。
「俺、菅原孝支っていうんだ。キミは?」
「あっ、俺は原沢空絵です」
「空絵ねー。よろしく」
そしてニシシっと可愛らしい笑顔を俺に向ける。
たわいのない話をしながら歩けば職員室なんてすぐで案内してくれたお礼を言って頭を下げれば菅原さんはにっと可愛い笑顔で。
「また会えるといいな」
と言って俺の頭を撫でて去って行った。
俺は撫でられた頭を押さえてぽかんとして。
………学校、頑張るか。
「やっと休学終わりました!俺のこと覚えてる人、よろしくお願いします!覚えてない人も仲良くしてください!」
担任につれられて約6ヶ月振りの教室で俺は久々に登校ということで教壇に立って挨拶をした。
ヘラリと笑えば俺のことを覚えてくれてる友達は手を振ってくれてついつい頬が緩んでしまう。
あぁ、今の俺すごくカッコ悪い顔してるだろうな。
席が分からないと言えば苦笑しながら教えてくれる友達。
背負っていたリュックを机の横にかけてふと、隣から視線を感じてパッと見ればそこには黒髪の目付きの怖い男子生徒が。
思わず視線を逸らしてしまう。
どういう訳かその男子生徒はHRの間ずっと俺を見ていて俺は目を合わせないようにするので精一杯。
あぁもう怖くて泣きそう。
やっとHRが終わって溜め息を吐くとわらわらと俺の机に集まる友達。
「本当に久し振りだなもう平気なのか空絵」
「心配してくれてるの?ありがとーもう平気!」
「久々だし今度お前の快気祝いしようぜ」
「うん!期待してるー」
「お前授業ついてこれるか?」
「がんばりますー!」
「ところでお前部活、」
ガタンっっ。
友達の言葉を遮って俺はバッと立ち上がる。
「……空絵?どうした?」
「ごめん……ちょっと具合悪くなって…」
「大丈夫か?」
「無理かも…帰る」
俺は呟くようにそう言って教卓にいる担任の所へ。
後ろからは友達の心配そうな声が聞こえたが今はどうしても話を続ける気分にはなれなかった。
担任に早退の許可をもらって復帰1日目だと言うのに早々とリュックを背負って玄関へ向かう。
今は授業中で廊下に各授業の担当教諭の説明の声が響いている。
俺は大きな溜め息を吐いた。
“部活”、ね。