大声で魔法の言葉を、
□magic×4
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学校をHRだけ出て早退しても暇なわけでどうしようかと考える帰り道。
チャリに乗りながらどこかに行こうかと考えて。
あ、でも近場だと知ってる人に会ったらまずいな。
うーん…。
………………………あ。
遠くなら心配ないか。よし。
東京に行くか!!
昔、俺が引っ越しをしてしまう前幼馴染みに『お前は妙な行動力があるな』とよく言われた。
確かにそうかも知れない。
宮城から新幹線で約2時間。
俺は東京に降りたって人が混雑してごみごみした駅の片隅でうーんっと伸びをして。
懐かしい、見慣れた光景に思わず口元が緩む。
記憶を辿りながら道を間違えないように慎重に歩いていると所々で掛けられるアイドルにならないか、とかタレントにならないか、というスカウトの声。
そんなことも懐かしくてつい笑ってしまう。
一つ一つ丁寧にお断りして目を細めて眺めた東京の街は、俺がいない間に少し変わったようだけどそれほど大きな変化は無くてちょっと嬉しくなった。
そして俺は一軒の家を目指して歩き出す。
目的の家に着いてインターホンを押せば中から聞こえる女の人の声。
それに
「お久し振りです。原沢です」
と返せば驚いたような声とほぼ同時に家のドアが開けられて中に通される。
俺は女の人にお礼を言って昔のように何の迷いもなくその家のとある部屋にノックも何も無しに入った。
まだこの部屋の主は当たり前だが帰宅していなくて、今頃学校で何してるんだろ。と一人でこくりと首をかしげる。
暇だから勝手に部屋の本棚を漁って適当な本を読んでる途中、女の人もといこの部屋の主の母親がジュースとお菓子を持ってきてくれて、甘いもの大好きな俺は満面の笑みでお礼を言う。
ジュースを飲んで、お菓子を食べて気付いたらやっと学校が終わる時間。
あ、でもアイツ部活があったんだっけ。
俺は読んでいた本をパタリと閉じて部屋の壁沿いに置かれているベッドに学ランを脱いで勝手に潜り込む。
ちょっと寝よう。
そう思って部屋の電気をリモコンで消して目を閉じた。
体を揺すられるような衝撃に小さな声で呻く。
それから次に、懐かしい声で名前を呼ばれて。
「おい。空絵。起きろ」
んーっと唸ってごろんと寝返りをうってぐーっと伸びをして。
瞼越しに透けて見える光に警戒してゆっくり目を開く。
明るい人工の光に目を慣らすように数回、パチパチと瞬きをして段々覚醒してきた頭で今の状況を考える。
あっと思って隣を見ると案の定この部屋の主は帰宅していて、今俺が寝ているベッドの横に赤いジャージ姿のまま立っていて。
「おかえり、クロ」
へにゃっと気の抜けた挨拶をすると彼は溜め息を吐いて。
「ただいま。空絵」
と言って俺の頭を撫でた。