大声で魔法の言葉を、
□magic×5
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〜黒尾side〜
部活が終わって家に帰ると母親がいつもより随分手の込んだ夕飯を作って待っていて、しかも妙に機嫌がいい。
不思議に思いつつ着替えるために部屋に行って電気をつける。
肩にかけていた重いカバンを部屋の隅っこに置いてジャージを脱ごうと手をかけたときベッドから衣擦れの音がしてバッとそちらを見る。
すると布団が不自然に盛り上がっている。
何だコレ。
少し考えてから思いきって布団を剥がす。
その先にいた人物を見て思わず声が出そうになった。
……………………。
何で俺のベッドにコイツがいるんだ?
コイツの中学の卒業式以来会ってないのに突然現れたもう一人の幼馴染みに疑問を覚える。
俺には幼馴染みが二人いる。
一人は研磨。俺と同じ高校に進学した。
もう一人はコイツ。家の都合で中学卒業と同時に宮城に引っ越したはず。
それから会ってないし連絡さえとれなかったのに。
今まで何してた、とかどうしてここにいる、とか問い詰めようと思って人のベッドで気持ち良さそうに寝ているコイツの肩を掴んで揺らす。
すると小さな呻き声が聞こえて。
次に名前を呼べば唸ったり寝返りをうったり伸びをしたりしてやっと開かれる瞼。
数回、パチパチと瞬きをしてから何か考えるように動きが止まる。
それからパッとこちらを見て。
へにゃっと気の抜けた笑顔をこちらに向けて、
「おかえり、クロ」
なんて言われて色々問い詰めてやろうという気が一瞬にして消し飛んだ。
やっぱ可愛い。
「ただいま。空絵」
そう答えて抱きしめたい衝動を誤魔化すように空絵の頭を撫でた。