大声で魔法の言葉を、

□magic×7
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「風呂、ありがとー」

タオルで頭をガシガシ拭きながら部屋に入ると片手にドライヤーを持ったクロがニヤッと笑って。

「こっちこいよ」

と言う。

そういえば昔からクロは俺の髪を乾かすのが好きなんだよなぁと思いながら大人しくクロの前に座った。

研磨は携帯ゲーム機の画面を見てボタンをカチカチしながら俺の隣にピタリと寄り添って座る。

「研磨お前ゲームなら向こうでしろよわざわざ空絵の隣に来んな」

「やだ」

「研磨何のゲームしてんの?見ていい?」

「うん」

それを見てクロは面白くなさそうにドライヤーのスイッチをつけて俺の髪を乾かし始める。

俺は隣でゲームをする研磨の方に乗り出してゲーム機の画面を覗き込む。

うわRPGだ俺、こういう難しいの苦手。

眉を下げてゲーム機の画面を眺めているとふと、研磨が喋り出した。

「空絵は明日何時に出ていくの?」

俺は少し悩む。どうするかなー。もういっそ

「夕方頃に帰ればいいかなぁ」

そう呟くとクロにペチッと頭を叩かれる。

「馬鹿、学校行けよ。朝練は?」

朝練――――――……。

「俺、今帰宅部だよ」

「「は?」」

俺の言葉にクロと研磨がハモった。

えへへ、と困ったように笑えばうるさかったドライヤーを止められて静かになった部屋で俺は気まずくてうつ向いてしまう。

それからしばらく誰も言葉を発しなくて。

その沈黙を破ったのはクロだった。

「怪我、したのか?」

俺はその問いに緩く首を縦に振って肯定して。

「左腕の骨をね、螺旋骨折しちゃって…まぁそれ以外にも入院した理由はあるけど」

そう言って苦笑すると次に研磨が呟くような声で聞いてくる。

「リハビリしてどうにかなんないの?」

それに対して俺はゆるゆると首を横に振ってやっぱり苦笑い。

「駄目だよ。いくら腕が昔みたいに動いたとしてもー…もう、嫌いになっちゃったから、出来ない」

するとクロが少し驚いたような、怒ってるような声で言う。

「何でだよ。お前あんなに好きだったじゃねぇか………バスケ」

俺はその言葉にこくりと一つ、頷いた。

物心つく前からバスケをしていた。

バスケが大好きだった。

ミニバスでも活躍したし、中学では主将に指名されて。

ポジションはPFだった。

俺がいた中学は全中三連覇するほどのバスケ部強豪校で、そんなところでスタメンをしていたこと、主将をつとめていたこと、受験シーズンになれば色々なバスケ強豪校から推薦がきたこと。

全部が幻に思えるくらい。

それでも、バスケをしていたことは俺の誇りだった。

でも、もうバスケは、

「やめたんだ」

誰に言うでもなく、自分に言い聞かせるように呟く。

しばらく二人は黙ったままだったけど突然わしゃわしゃと二人して俺の頭を撫でて。

「なぁ、空絵」

クロに呼ばれて後ろを振り向けば彼は少し寂しそうな顔をして笑う。

「バレー、やってみねぇか?」

「バレー…?」

キョトンと言われた言葉を反芻するとクロはあぁ、と頷く。

「楽しいぞ。バレー」

うつむいてどうしようか考えるとクロは優しい声で。

「お前は元々運動出来んだからやってみろよ。バスケがしたくなったらまたバスケをやればいいんだ」

うう…っと呻くと次は研磨に手を握られて俺はそちらを向く。

「空絵は今どこの学校に通ってるの?」

突然話が変わってちょっと安心して研磨の質問に答える。

「確かー…烏野とかそんな名前」

「烏野?」

研磨は少し驚いたような顔をしてそれからクロを見る。クロも研磨を見返して。

うわぁすごい。

研磨が無表情以外の顔してる。

そんなことに小さく感動していると研磨が笑った。

「いいね、烏野」

「?」

どういう意味だろうか。首をかしげると研磨は嬉しそうに話す。

「烏野のバレー部に友達がいるんだ」

あ。

「そういえばクロも研磨もバレー部だったっけ」

「今さらかよ」

思ったことを言えばクロに苦笑されて。

バレーかぁ。

「やってみよう…かなぁ」

ぽつりと呟けば頭を撫でられて俺は嬉しくなる。

「でもバレーやったことないや」

ハッと気付いて言うとクロが笑って。

「暇なとき俺が教えてやるよ」

次に研磨が。

「俺も教えるから」

あぁ、二人はやっぱり優しいなぁ。

「ありがとう」

俺は二人の手を握ってふにゃりと笑った。

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