大声で魔法の言葉を、

□magic×9
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「うーん…!」

電車から降りて大きく伸びをする。

やっと宮城に着いた。

辺りを見回すと陽は落ちきっていてもう暗くて星が空でチカチカと輝いている。とてもきれいな夜。

街灯の光を頼りにぼーっと歩いているとこの間の星がキレイな橋について。

やっぱりここから見る星空はなんか違うなぁ。

橋の下を流れる川に星の光が反射して上も下も、視界いっぱいに広がる星のキラキラ。

橋の手すりに手をかけてキレイな星をじっと眺める。

もう10月で秋なだけあって割りと肌寒くてはぁっと息を吐けば空中に白いモヤができる。

モヤで霞んだ視界の中で目を細めて遠くを見つめる。それからゆっくり目を閉じて。

また、一つ溜め息。

と、突然。

ぎゅっ。

手を握られた。

驚いて目を開いて掴まれた手の方を見れば最近知り合った顔があって。

「及川…くん?」

こくんと首をかしげれば整った顔の彼は困ったように眉をさげてにっこりと笑う。

「えっとー…ごめん。また、掴まないとキミが消えちゃいそうで…」

そして気まずそうにパッと握っていた手を離す。

「空絵でいいよ。あ、途中まで一緒に帰る?」

そう言うとこくりと頷かれて俺ら二人並んで歩き出す。

「じ、じゃあ空絵…」

「うん?」

「あー…えーっと…あ、俺、青葉城西高校の三年」

「えっ。先輩だったんですか。タメ口きいてごめんなさいえっと、及川先輩?」

「えぇぇえいいよ!タメ口でいいから!及川先輩なんてやめてよ!徹でいいから!」

「でもさすがに先輩に向かって呼び捨てタメ口は無理ですよ」

すると及川先輩は俺の両手をぎゅっ、と握って拗ねたように小さな声で。

「お願いします…」

えぇえ…いいのかな…。

俺は機嫌をとるように手を握り返して彼の目を真っ直ぐ見つめる。

「………徹」

「はい………」

仕方なく名前を呼ぶと驚いた顔をした徹の顔が段々赤くなっていってうつ向いたけど耳が真っ赤なのもバレバレでそれがとても可愛く思えて。

「徹、顔真っ赤」

ふはっと笑ってそう言えばぷいっとそっぽを向いてしまう。

それが可愛くて笑っていると徹はムスッとした表情で口を尖らせて言う。

「笑いすぎだよ」

俺はそんな徹のうなじをわさわさと撫でて笑う。

「ごめん。なんだか徹が可愛くて。あ、ところで徹はこんな時間に何してるの?」

すると徹は顔を赤くしてキョトキョト視線を泳がせる。

「俺は部活終わりで帰りの途中。……て言うか可愛いって何…恥ずかしい」

その照れてるのも可愛い。と言おうとして、でもこれ以上恥ずかしがらせるのも可哀想かなと思いただ、にっこりと笑ってもう一度徹のうなじを撫でる。

「部活、お疲れさま。何部に入ってるの?」

何となく話の流れで聞いてみると徹は得意気に笑って言う。

「バレー部だよ」

へぇ。

俺の周りの人はバレー部ばっかだなぁ。

そう思ってクスッと笑うと次に徹が不思議そうな顔で聞いてくる。

「空絵は?運動部に入ってそうな筋肉だね」

そして俺の腕を撫でてから全身をじぃーっと見つめて。

なんだかその視線がくすぐったくて困ったように笑いながら答える。

「前までバスケをしてたんだ」

「今はやってないの?」

それにこくりと頷くと察したような視線が返ってくる。

でも俺、新しくバレー始めるつもりだし。もうバスケへの未練も全部無いつもり。

だからふにゃっと笑ってみせると徹はまた顔を赤くして両手で顔を覆って隠した。

しばらく雑談をしていると、

「あ、俺ここ曲がるんだけど」

「あー…俺は真っ直ぐ」

そしていつの間にか繋いでいた手を離して別れ道でさよならを言おうとした時。

「ちょっと待って!あ、えっと…連絡先、教えて…?」

恐る恐るといったように徹が顔を伏せて上目遣いで聞いてきて。

俺は一瞬ポカンとして次に声をあげて笑う。

そしてズボンのポケットからアイポンを取り出してニカッと笑顔で。

「赤外線無いから言うよ?」

すると徹は慌ててスマホを出して。

メアドと番号を言ったあと、別れ道でさよならを言って別れてすぐにメールがきた。

『及川徹です!

 今日はありがとう。

 また会おうね!』

それに俺は

『こちらこそ有り難うな、徹。

 いつでも連絡していいから

 気を付けて帰れよ』

と返信してアイポンをしまう。

さぁ、俺も急いで帰ろうかな。

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