大声で魔法の言葉を、
□magic×10
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「先生〜入部届くださーい」
朝学校にきてすぐに職員室の担任にそういうと担任は目を丸くして。
「お前何部に入るんだ?バスケか?」
「違いますよー。バレー部に入りたいんです」
そう言い返すと担任は不思議そうに首をかしげながらも素直に入部届を渡してくれる。
「まぁまたスポーツをしようとするのはいいことだ。入部届は書けたら顧問の武田先生に渡してね」
「はーい」
そして一回廊下に出て廊下の壁を机代わりに学ランの胸ポケットに入ってたボールペンで記入欄を埋めてからまた職員室に戻って武田先生を探す。
顔も分からないから職員の椅子に貼ってある名前のラベルを確認しながらキョロキョロ探して。
あ、いた。
あれ?思ってたより全然若い。
俺は不思議に思いながら武田先生に声を掛ける。
「あの、武田先生ですか?」
その声に振り返った顔は後ろ姿よりもっと童顔で。
「そうだよ。どうかした?」
にこにこと人当たりのいい笑顔で聞いてくる先生に入部届を差し出して。
「よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げると先生は嬉しそうな声をあげて顔を輝かせる。
「うわぁ新入部員だ!こちらこそよろしくね!あ、部活は毎日放課後あるから今日から参加でいい?」
それにこくりと首を縦に振って授業が始まるので教室に戻る。
ガラにもなく放課後が楽しみだった。
やっと帰りのHRが終わった放課後。
入院中に体育着をどこかに無くしてしまったらしく見当たらなかったから適当に持ってきたTシャツにジャージを羽織る。
同じく長ズボンのジャージを穿いてどこか変なところはないか確認してから荷物を持って体育館へ急いだ。
体育館に着いて半開きの重い鉄のドアに手を掛ける。
ガラガラガラーっと音を立ててドアが開くと中にいた人みんなが俺の方へ振り返った。
えーっと、どうしよう?
色んな視線が突き刺さる中一人でこくりと首をかしげると後ろからパタパタと響く足音。
振り返ると顧問の武田先生がいて思わず安堵の息を吐く。
よかった。
先生は「遅れてごめんね」と、申し訳なさそうに言ってから俺を体育館の中へ手招きをする。
そして体育館の中にいるみんなに集合を掛けて。
俺は体育館の入口に荷物を置いて武田先生の隣に並んで立つ。
不思議そうな顔をして並ぶバレー部員。
えっ、うわぁよく見たら隣の席の目付きが怖い人がいる。
目付きが怖い人の視線をサッと受け流したところで武田先生がにこにこと笑顔で口を開く。
「今日からバレー部に入った原沢さんです!みんな仲良くしてあげてね」
それから先生に視線で促されて自己紹介をする。
「1年の原沢空絵です。最近まで入院していたので微妙な時期からの入部になりますがよろしくお願いします」
言い終わってぺこりと頭を下げる。
するとパチパチと拍手をされて顔を上げてふにゃりと笑う。
この場がいい感じの雰囲気になったところで武田先生が
「じゃあ僕はちょっと用事があるから。頑張ってね」
と言って体育館から去っていった。
すると俺の周りにわらわらと人が集まってきて。その内の背の高い(俺から見たらみんな高いけど)黒髪短髪の人がにこりと笑って。
「俺は主将の澤村大地だ。よろしくな」
「よろしくお願いします」
次にちょんちょんと肩をつつかれてそちらを見ると見たことのある顔が。
「空絵、俺のこと覚えてる?」
「菅原さん!バレー部だったんですか」
驚いて色素の薄い目を見返すとニシシとイタズラっ子のような笑顔を浮かべる菅原さん。
あざと可愛い。
菅原さんの笑顔をガン見してると彼は思い出したかのように聞いてくる。
「あ、そういえば空絵はバレー経験者?」
それに手をヒラヒラ振って否定しながら。
「バレーは一切やったことないです。すみません」
と言うと菅原さんは不思議そうな顔をして。
「え?そうなの?まぁ経験者じゃなくても大歓迎だけど。なんでバレーやろうと思ったの?」
「幼馴染みがバレーをやっていましてすすめられたんです」
そういえば研磨が烏野のバレー部に友達がいるとか何とか言ってたな。
言えば分かるかな。
「音駒高校って分かります?そこの主将とセッターが俺の幼馴染みで」
するとオレンジの髪の小さな子が嬉しそうに声をあげる。
「あのトサカヘッドと研磨か!?」
トサカヘッドってクロのことかな?
あぁ、確かにw
「うんそのトサカヘッドと研磨だよ」
にっこりと笑って答えるとオレンジの髪の子はすげぇを連呼する。
一通り質問も終わったところで澤村さんが練習を再開させて、俺は澤村さんと菅原さんに体育館の隅っこに連れていかれる。
何だろうと思っていると澤村さんが真面目な顔で。
「原沢はバレー初心者なんだよな」
「はい」
「じゃあとりあえず今日は基礎から教えるからそれからポジションを決めよう」
ポジション…。
詳しくは分からないけど多分バスケと一緒で向き不向きがあるんだろうなぁ。
「じゃあスガ、よろしくな」
そう言って澤村さんは練習に戻っていく。
菅原さんと二人きり。
「えっと、じゃあ…始めるか」
菅原さんの可愛い笑顔を見つめて俺はふにゃりと笑い返した。
「ねぇ、大地!大地!ちょっと来て!」
部活が終わる間際、菅原さんが澤村さんを呼んで。
何事だと駆け寄ってきた澤村さんに菅原さんは驚いたような声で。
「ねぇ、大地!空絵凄いんだよ!ある程度っていうか日向よりレシーブ出来るしサーブも出来るしスパイクも出来るんだよ!」
それを聞いて澤村さんは驚いた顔をこちらに向けて。
「原沢はバレー初心者だよな?」
「…はい」
「レシーブやサーブはまだ分かるとして…なんでスパイクも出来るんだ?」
ぇぇえ…。
俺は眉をさげて澤村さんを見上げる。
「あの人たちを見て真似しただけです」
そしてオレンジの髪の子と目付きが怖い人を指差す。
「見て、出来るのか?」
「ただの見よう見真似ですけど…」
自信がなくて段々言葉が小さくなっていく。
と、突然澤村さんに頭を撫でられて。
「すごい才能だな!」
褒められた。
一瞬ぽかんとしたけど嬉しくてすぐいつものふにゃりとした笑顔になる。
それを見て菅原さんも俺の頭を撫でて、
「空絵凄いな。いきなりだけどレシーブ練は混ざってやっても大丈夫なんじゃない?」
なんだかペットのような扱いだな。
でも可愛がられてるのが分かるから悪い気はしなかった。
その日の夜。
『空絵、今暇?』
『暇ですよ。どうしたの徹』
『いや、何となくメールしただけ』
『なにそれw
そう言えば俺、バレー部入ったんだ』
『えぇ!?嘘っ!?
暇な時バレー、教えるよ!!!』
『本当?
助かるー!俺、初心者だからw』
『え、じゃあいつ暇!?』
『うーん…
今週の日曜なら暇だけど』
『じゃあ日曜会おう!!
あ、お昼も一緒に食べて遊ぼう!』
『遊ぶのかよww
まぁいっか。遊ぼう』
『本当!?約束だからね!!!』
『はいはいww
じゃあおやすみ』
『おやすみ(+.+)(-.-)(__)..zzZZ☆』