幻想少年創生録

□読書と常識と姉妹愛
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そして放課後 紅魔館前
「あのー・・・ちょっといいかな?」
少年は門番らしき女性に話しかける。
「なんです?」
「ここに素晴らしい図書館があるって聞いたんだけど、見せてもらえないかな?」
「駄目です」
ですよねー。
「そこをなんとか・・・なんなら俺の血を館の主に献上しますよ」
「駄目です」
「だからそこをなんとか・・・」
「いいでしょう」
少年の背後にいきなり現れた女性に少年は驚いた。
格好から察するに、この女性は紅魔館のメイドのようだ。
「え?誰?え?・・・って、いいの?」
「ただし、私と戦ってからです」
「えぇ!?なんで!?」
「お嬢様が暇つぶしをさせてくれたら入れてあげるとおっしゃっていましたので」
「あぁ、なるほど」
確かに、吸血鬼って太陽が出てる時ってやることないから暇だよねぇ。
「じゃあ、行くよっ!」
少年は相手の力量や能力を探る為に、弾幕を数個撃ちだした。
「遅い」
しかし、メイドはいつの間にか少年の背後に立っていた。
「後―」
メイドが少年から離れた瞬間、少年のわき腹に激痛が走った。
「・・・・っ!!?」
わき腹の肉が切れ、血が流れ出ているのが見える。
「いった・・・!弾幕じゃ・・・!?」
「終わりです。『幻符『殺人ドール』』」
そうメイドが宣言した瞬間、少年の周りに無数のナイフが現れ、少年に切っ先を向けて飛んできた。
「くっ・・・!神様!」
少年は神様で壁を作ることでメイドの攻撃を回避した。
「はぁ・・・」
『いつまでもそうしているわけにはいかないでしょう?はやく出てきたらどうです?』
壁の外からメイドの声が聞こえてくる。
あぁ、もう!もう少し穏便にできなかったの!?
あぁ・・・なんで幻想郷には普通の図書館がないんだろう・・・
少年は嘆きながらも神様でわき腹辺りに通常の何倍もの再生能力を生み出し、傷を癒した。
これでよし・・・しかし、あの人の尋常じゃないスピードはなんなんだろう?
瞬間移動の能力・・・?
でも、それならあんなに早くナイフは飛ばないような・・・
・・・

『遅い』

・・・あ!
そうだ・・・魔理沙が言っていたじゃないか!
俺のバカ!なんで覚えてなかったんだ!
スピードの問題じゃなかったんだ!
「神様!」
能力で壁の時間経過を生み出し、風化させ、少年は外へと踏み出した。
「(傷が塞がっている・・・能力かしら?)準備は終わりましたか?」
「まぁね・・・『転生『六道輪廻』』!」
少年は現在の技の中で最も強い弾幕を繰り出した。
「無駄で―」
今だ!
「神様!」
「・・・え!?時間が止まらな―」
少年の弾幕が的中し、メイドの言葉はそこで途絶え、言葉の代わりに痛みを逃がそうとしているかのような悲鳴が聞こえた。
「ぁっ・・・!」
し、しまった!
少年はメイドに近寄り、神様でメイドの傷を癒した。
「大丈夫!?ごめん。痛かった?」
「・・・えぇ。問題ないわ」
「あぁ!これあんまりやったことないし、急に動かないほうがいいよ!」
「そう・・・二つ、質問いいかしら?」
「もちろん」
「私の能力が発動しなかったのは、あなたが何かしたからなの?」
「うん。俺の能力は神様っていうんだけど、その能力で時の流れを生み出したんだ。いくら時間を止める力でも、強大な時間の流れには逆らえないと思ってね」
「なるほどね・・・次に戦う時の参考にさせてもらうわ」
「いや、できればもうしたくないんだけど」
「もう一つ。どうして私の能力に気がついたの?」
「実は、魔理沙から聞いてたんだ。でも、君と戦うまで忘れてた」
「それで最初、反撃しなかったのね」
「うん。まぁ・・・」
「この・・・!咲夜さんによくも・・・!」
門番の女性が凄い剣幕で少年を睨みつけた。
「ご、ごめん!こうするしか思い浮かばなくて!」
「やめなさい美鈴。先に戦えと言ったのはこちらよ?」
「ですが・・・」
「・・・本当に、ごめんなさい!いくら戦いとはいえど、女性を傷つけちゃうなんて、男の、いや、戦士の風上にもおけない!美鈴!」
「え?あ、はい」
「俺を殴って!」
「え?」
「そうしないと、俺の気がすまない!」
「でも、あなたは先ほど私の攻撃を・・・」
「でも、さすがに六道輪廻を撃ったのはやりすぎだと思うし・・・だから!」
「・・・解りました」
「ちょっと美鈴!」
「この子はまだ子供ですが、中身は立派な戦士のようです。戦士の頼みを無下に断るのは、武術を嗜む者としては許せないことなんです」
「よし・・・きて」
「いきます」
美鈴の拳が少年の右頬に減り込む。
メキメキと不快な音を立てながら骨は折れ、そして少年は吹っ飛び、壁へと衝突した。
「いっつ・・・!」
「す、すみません!やりすぎてしまいました・・・!」
「いいんだよ・・・」
少年は怪我を治しながら2人に言った。
「咲夜が受けた痛みに比べたら、全然ましだって」
パチパチと小さな拍手が微かに響いた。
気がつくと日は完全に落ち、美しい満月の夜が辺りに広がっていた。
「咲夜に勝てるほどの強さで、戦いへの心意気も良し。なかなかに楽しませてもらったわ」
上空から青髪の少女が少年に話しかけてきた。
「君が、レミリア?」
「そう。私が紅魔館の主のレミリア。あなたが噂の創生神様かしら?」
「え!?なんで知ってるの!?」
「そんなことはどうでもいいわ」
どうでもよくないよ!?
「創生し―」
「あ、陽炎って呼んで」
「・・・陽炎は、どうして調べ物をしようとしているの?」
「ここには魔法とか気とかがあったり、俺の知らない暦が使われていたりと、驚くようなことばかりだから、図書館の本を読んで勉強しようと思って」
「それならあのスキマ妖怪にでも聞けばいいでしょうに」
「俺、本で勉強するのが好きだから」
「・・・まさか、その為だけに、咲夜と戦ったとでも?」
「うん。本当は血を献上すれば終わると思ったんだけど、ね」
(((・・・本当に、おかしな人)))
「?」
なんだろう。馬鹿にされたような気が・・・
「約束は約束だし、入れてくれるよね?」
「えぇ。ただ、パチェに許可を得てからだけど、いいかしら?」
「えぇ!?まだ駄目なの!?嘘つき!」
「私が許可するとは言ったわ。でも、パチェが許可するとは言ってないはずだけど?」
「〜っ!このぉ・・・!馬鹿!」
「ふふ。子供ね」
「君に言われたかないよ!」
レミリアは少年を馬鹿にするかのような笑みを浮かべると、紅魔館の方へと戻っていった。
「では、私もこれで―」
「あ、待って!」
「どうしました?」
「あの・・・本当にごめんなさい」
「もう、いいんですよ」
「でも・・・」
「これ以上言えば、私のナイフが貴方のわき腹をもう一度貫くことになりますよ?」
「ごめんなさい!」
「ふふ。では、失礼いたします」
パッ と咲夜は能力で姿を消した。
・・・普通に移動しないのかな?
「あんなに嬉しそうな咲夜さん、久しぶりに見ました。気にいられたようですね」
「そ、そうかな・・・?俺には怖い発言をして消えていったメイドっていう風にしか見えなかったけど・・・あ、そうだ。美鈴、さっきはありがとね」
「? なんのことです?」
「立派な戦士って言ってくれたこと」
「真実を述べたまでです」
「でも、俺周りの人に子供扱いされるんだ・・・だから、嬉しかった。ありがとう美鈴。できれば・・・その・・・友達になってくれないかな?」
「ええ。もちろん」
「! ありがとう、美鈴!」
「これからよろしくね、陽炎」
「うん!」
「・・・確かに、子供ね」
「えぇ!?そんな・・・!戦士っていうのは!?」
「確かに貴方は戦士よ。でも、それと同時に子供の心ももっているということよ」
「そんな・・・戦士になっても、子供のままなんて・・・」
「・・・何を話しているのですか?」
「あぁ、咲夜か・・・俺、そんなに子供みたい?」
「ちょっと待ってください。本当に何を話していたのですか?・・・あぁ、それよりも。パチュリー様が図書館の利用を許可してくださいましたよ」
「本当?良かった・・・」
正直、あんなに頑張って何も成果なしだったら、魔理沙と一緒に忍び込んでたかも・・・
「案内いたします」
「ありがとう。美鈴、またね」
「えぇ。また」
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