東方天使録

□紳士、自ら望んで幻想入りする。
2ページ/5ページ

「・・・ここが、幻想郷」
不思議な空間をぬけた先は、森だった。
「なぁ、紫・・・紫?」
「ごめんなさい。急用ができたの。この森に私の知り合いの知り合いがいるからたずねて。きっと力添えしてくれるわ」
先程のスキマとかいう空間から話しているのか、紫の姿は見えない。
ただ、声だけが聞こえる。
・・・いや、よく見ると、かなり小さい穴が空中にあいている。
恐らくだが、あそこから話しているんだろう。
「その方の名前は?」
「『霧雨 魔理沙』よ。それじゃあ失礼するわ。『博麗神社』で会いましょう」
紫の声はその後聞こえなくなった。
さて・・・とにかく進むか。
それにしてもこの森、瘴気が濃いな。
そこら辺に魔法のキノコが自生してるし、多分そのせいだな。
しかし・・・幻想郷は一体どんな所なんだ?
書物には楽園だと書いてあったが・・・
これじゃあ楽園というか、ただの森だな。
「うわぁぁぁぁっ!!」
「ん?」
声?
あたりを見回すが、それらしき人影は見当たらない。
ってことは、上か!
上を見上げると、人間の影らしきモノが徐々に落下してくるのが見えた。
「待ってろ!今助ける!」
空を飛ぶにはあの姿になるしかないな。
久しぶりだが、いけるか?
懐から☆ステッキを取り出す。
「ほあた☆」
天使の力が開放され、体に力がみなぎる。
・・・?
妙だな。いつもより力が強い・・・
「あ、もうこれ終わったな」
っ!
今はそんなこと考えてる場合じゃねえ!
羽を羽ばたかせ、地面へ落下する寸前の影に向けて飛ぶ。
なんとかキャッチできた・・・!
流石にあの高さから落ちてきたのをキャッチするのには無理があるか・・・!
「だ、大丈夫か?」
「な、なんとか」
「立てるか?」
「あぁ」
・・・日本の家でこんな魔法使いのアニメ見たな。
最初に少女を見て思った感想はそれだった。
白と黒の・・・ゴスロリ?姿、なのか?
・・・幻想郷のファッションはよく分からないな。
とにかく、元に戻るか。
俺が元の姿に戻ると同時に、少女は俺に話しかけてきた。
「その、助けてくれてありがとな。私は霧雨 魔理沙。お前は?」
「グレートブリテンおよび北部アイルランド連合王国。イギリスって呼んでくれ」
「よろしくなイギリス。それで、イギリスは外来人なのか?可笑しな格好だが・・・」
外来人・・・結界の外の世界の住人のことだよな。
・・・服については、お前にだけは言われたくない。
「あぁ。それでな魔理沙。博麗神社って知ってるか?」
「知ってるが、どうしてだ?」
「案内してほしい。紫とそこで待ち合わせなんだ」
「あぁ。勿論いいぜ。助けてもらった恩もあるしな!」
「Thank you!魔理沙!」
「それじゃあ行くか」
「・・・魔理沙。お前飛べるか?」
「あぁ。飛べたぜ」
「? なんで過去形なんだ?」
「私は魔法をかけた箒で飛んでたんだ。それで突然機能が停止してな。空から落ちちまったんだ」
「箒が無いと飛べないのか?」
「いや。別に飛べるはずなんだが・・・どうも魔法が使えなくなってるみたいなんだ」
「魔法が使えない?」
おかしい・・・魔理沙には魔力がまだある。
なのに飛べないのか?
・・・ん?
「魔理沙。ちょっと動かないでくれよ」
「? 一体どうしたんだ?」
「いいから、動かないでくれ」
魔理沙の髪についている何かを取る。
「これは・・・ヒル?」
「うげっ!マジかよ!気持ち悪い!・・・って、ん?・・・おぉ!」
「どうし・・・飛べたのか」
魔理沙の体は地面から数センチ浮いていた。
魔法が使えるようになったのか?
・・・ということは。
「こいつが原因、なのか?」
手に握っているヒルを見る。
・・・ヒル、なのか?
「イギリス。そいつ貸してくれ」
「? あぁ。ほらよ」
「ありがとな・・・そらっ」
魔理沙はヒルを放り投げると、懐から何かを取り出した。
魔道具か?・・・八角形ってことは、五行は表してないな。
魔方陣でも組み込んでるのか?
・・・あぁ。
八卦炉を表した魔法関係のアイテムなんだろう。
魔理沙はそれを落ちてくるヒルに向けた。
・・・おい、まさか。
「恋符『マスタースパーク』!」
極太のレーザーがヒル共々回りの木々をなぎ払う。
「何やってるんだお前はぁぁぁ!アメリカでももう少しマシな反応するぞ!?」
「乙女の心を傷つけた罰だ!当然の報いだぜ!」
「オーバーだオーバー!とりあえず落ち着け!」
「・・・わ、悪い。なんかさっきから動悸が激しくて、落ち着かないんだ」
「風邪か?どれどれ・・・」
「!!」
魔理沙の額に俺の額を当て、熱を測る。
うわ・・・これは凄いな。
「魔理沙・・・案内はやっぱりいい。場所だけ教えてくれ。お前は家で寝ておけ」
「だ、大丈夫だ!心配ないって!さぁ行こうぜ!」
「・・・まぁ。お前がいいって言うなら止めねぇけど」
(ヤバイ!なんなんだよこれ・・・!マジで何なんだ・・・!?)
魔理沙の動悸は治まるどころか、段々と速くなっていく。
チラッとイギリスの様子を伺うと、イギリスは魔理沙に微笑む。
その微笑を見た魔理沙の鼓動が先程より速くなる。
(あー!もー!何なんだよコレはぁぁぁ!!)
暴走した魔理沙は自分の頭を木にぶつけ始める。
「うぉっ!?どうした!?」
イギリスが止めに入り、なんとか魔理沙を落ち着かせる。
「あー・・・大丈夫、か?」
「あ、あぁ。悪い・・・んじゃ、さっさと行くか」
「了解」
魔理沙は、自分の無意識の行動に疑問を抱きながら、イギリスは楽しい旅になりそうだと思いながら、博麗神社へと飛んでいく。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ