BOOK

□文化祭@
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夏休みが終わりを告げて、二学期が始まって暫く。
漣たち学生にとって一年に一度のイベントの時期がやってきた。

「ウチの二組は露天をすることになりましたが────………」

実行委員なんていう至極面倒な仕事をする羽目になった彼女…もとい不破弓月は、欠伸を噛み殺して普段と一変した生真面目な顔つきで話し続ける。
もっとも、視線は常に前列の少女の瞳へと注がれており、座席が前に近い者は全員が彼女の視線に疑問符を浮かべている訳だが。

一方、最前列の疑問等とは程遠いピンクの妄想を続けるのは窓際最後尾の席に居座る女生徒。
夢魔なるものが実在したと言うならば、彼女の思考を読み取ったところで這う這う逃げ出すだろう。

「何か提案はありますか?」

唯一の友人の普段は見られない生真面目な声に、ふと覚醒した彼女…漣は教卓へ視線を向ける。
最前列の少女に熱烈な視線を向けつつ生真面目な声で説明を続ける友人の姿を視界に収めて、漣はクッと笑いを堪えるのだった。
「(変人だぁ)」




「何か提案はありますか?」
聞きなれない声が頭上から降ってきたので、水乃は手にしていた本を閉じて机の端に置き、視線を上げた。

普段は声を滅多に聞かないクラスメイトが実行委員として口をきいていた。
一瞬呆気にとられて、その後違和感に気付いた。

──コイツどこ見てんの?

一点に向けられた視線は一切ブレずにジッと保たれている。
視線をそっと辿って行くと何故かクラスメイトの鈴谷日向に辿り着いた。

──なんで?

再び水乃は彼女を見てみる。
相変わらず視線は鈴谷へと注がれている。
なにより水乃が見つめ続けているにも関わらず一切反応しない。

そういえばこのクラスメイトについて何も知らないなと思った水乃。
彼は脳裏にクラスメイトの変人を思い浮かべた。

──漣…は不破と仲良いよな…?
  なんで普通に会話できんの?

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