BOOK

□泡沫の願いを聞いた
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気が付けば目の前に血濡れの手が写った。

あぁこれは夢だな、と漠然とそう思った。

いつの頃の夢だろう、と思った。

「師、匠……?」

呆然とする声が背後から聞こえて、気怠い体を引き摺るように緩慢に振り返る。

僕と同じに血濡れの姿で、あの時のまま。

なんだ、あの時の夢か。
随分と久しく見ていなかったものを、よく思い出したものだ。

暫く呆然としていた彼は思い出したように、いつもの二丁銃の一方だけをこちらへ伸ばす。
何時ものように両手に構えないのは僕に敵対したくなかった、なんていう甘えからか。

「すみません、すみません師匠…」

泣いてでもいるんじゃないかと紛うくらい悲しい顔で繰り返す彼に、僕は何も言えない。
そもそもこの時も、何も言えなかったのだけれど。

「殺して下さい、師匠」

零れるように呟かれた言葉が僕に対しての物だと理解するには、時間がかかった。

何か言おうと思って、言ってあげないと、と思って口を開こうとしたら、その口から全く別の言葉が溢れた。

「一生の願いって奴か…?」

自由が効かなくなった身体は所有権の移動を表していて。

アイツはまるでボクの苦しみを肩代わりするように身体を乗っ取った。

アイツは持っていた血濡れの長剣を軽々と振りかぶり、何の躊躇いも無いように振り下ろした。

肉を裂く嫌な感触が共有されて、アイツは暫く無言で立ち尽くした後、彼の身体を木陰に凭れさせて瞼を降ろさせた。
そしてやがて、何事もなかったように、ポタポタと、フラフラと歩き出した。




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「兄さん兄さんおはよう!!!!」
「ん……あれ、さざみん?おはよう?」
(…………………〈サザナミ〉、な……)

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