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□ゲリラ恋雨-rennu-
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ベッドから見るワシントンの朝は灰色だ。
今にも涙を雫しそうな寒空みたいに。
アーサーと恋人になってからもう半年が経っていた。
それなのに、彼とは一向に距離が縮まらない。
キスだってまともにしたことは無い。
…正確には一回だけ、したことはあった。
けれど、触れるか触れないかのそれは、
何かぎごちなかったのを覚えている。
俺は、もう何度目かの溜め息と独り言を漏らす。
「本当、どうにかなりそうだよ……」
もう色々と、限界だった。
好きなのに、両想いなのに。
まあ、先に告白したのは俺だったし、
アーサーは"付き合ってくれ"の言葉に、
唯肯定してくれただけだけど。
彼が本当に俺のことを好きでいてくれて
いるのかは定かではない。
少なくとも、俺の"好き"とアーサーの"好き"に
確かな差はあると思う。
気分が沈んでいく。もう底についちゃいそう。
らしくないけど…。
俺の気分のドン底っていうのは他の人とは
ちょっとばかり深い、きっと。
それぐらいには、俺は彼を……。
「アーサー…」
寝不足からか、瞼が重くなっていく。
空が雫した涙と、俺が降らせた雨は、
どっちが早かったかな?
──二度寝を起こす着信音。
心地よい音色が、アーサーからだということ
にはすぐに気付いた。
電話に急いで応答する。
「アル、今そっちに向かってる。待ってろ」
「ア、アーサー…」
ツーツー…という音で電話を切られてしまったことに
少し遅れて気付く。
素っ気ない一言。
嬉しさと虚しさが混ざって、気がさらに滅入った。