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□ゲリラ恋雨-rennu-
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ランチタイムまで、あと10分弱。
アーサーが、来た。


一気に鼓動が早まるのが解った。
今更パジャマのままだったことに気付いたが、
気にせず玄関に向かった。

ドアを開けるとグリーンの瞳とかち合った。
その瞳は俺を見るなり少し見開かれた。

「お前……」
「うん?」

続くであろう言葉に俺は軽い相槌を打つ。




「泣いてたのか? 何か…あったか?」


それはいつも憎まれ口を叩く彼からは、
想像もつかない言葉。
しかも、手を伸ばして頬を撫でてきた。
いきなり別人のようになったアーサーに、
呆然とする。

……。




「アル?」


彼の声で気が遠くなって、彼の声で覚醒する。



「……大丈夫だよ、君が来てくれたから」


言い終わる頃には、アーサーを強く抱き締めていた。
窮屈そうに、でも、笑ったような声で、
「痛ぇよ、アル」と言われて、腕を緩める。
気温と雨のせいか、アーサーの身体は冷たかった。



部屋に入ると、アーサーはコートを脱いで、
ソファにもたれ掛かる。
俺がコーヒーを淹れていると、
アーサーがさっきの話を反芻する。

「何かあったんじゃないのかよ」
「ううん、大丈夫だよ」

本当に大丈夫なのになぁ。
アーサーの表情はまだ晴れない。

「……言えよ」
「だから、何ともないってば」


アーサーも俺も、口調がキツくなる。
これじゃ、いつも通りになってしまう。
アーサーが立ち上がった。
嫌な予感しかしなかった。


……でも。



「アル、ごめんな」
「え…?」


アーサーの口から飛び出したのは、
また予想を裏切る言葉だった。




「俺、お前といると、素直になれなくて…。
なりたいのに、なれねぇんだ。それで少しづつ、
アルとの距離が離れてくのが怖かった。
だから、その……俺のこと、嫌いにならないでくれ…!」




ああ、そうか。
もがいてたのは、アーサーも一緒なんだ。


今度は嬉しさで涙が込み上げてくる。
これ以上、俺らは悩む必要はないんだ。

「…確かに、君は素直じゃないし、皮肉屋だよね」


アーサーのとこまで歩み寄って、
もう一度抱き締める。


「俺はそんな君を好きになったんだよ?
これからもずっと、大好きさ」
「……俺も、大好きだ」


初めて彼からの愛の告白を聞いた。
初めて抱き締め返してくれた。
初めて一緒に──泣いた。




「 ねぇアーサー……キス、していい?」
「…喜んで」

頷いて、目を閉じるのを確認してから、
ゆっくりとキスをする。


いつの間にか晴れた空には、七色が輝いていた。




End

甘くなりましたかね…?
アーサーをもっとツンツンさせたかったです!
あれ?そういえば、アルの家ってワシントンだったっけ…?

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