ようこそ学園へ 〜長編〜
□異世界
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木陰の間を風が通りすぎ頬を軽く撫でた。鮮やかな新緑の匂いが鼻孔をくすぐる。穏やかな日射しのなかどこかで郭公のさえずりが聞こえ、 名前はうっすらと目を開けた。
気が付けば草の上に仰向けで倒れていた。
まどろんだ間隔が抜けないまま、むっくりと起き上がり辺りを見渡してみる。
青々とした草木が生い茂り、山の中のようだった。
混乱していて、状況が良く分からない。
私、どうしてこんな場所にいるんだろう・・・?
夢でも見ているのだろうか・・・。
しかし微かに痛む頭や痺れた手足が現実なのだと 名前に教える。
ぼんやりした思考を覚醒させるかのように、頭を軽く手で押さえながら思い返してみる。
確か家から出た後、電車に乗って、それから飛行機に乗って・・・
考え、はっとした。
一緒に飛行機に乗っていた友人たちの姿が見当たらない。
なぜ自分一人がここにいるのか。
乗っていたはずの飛行機はどこへ行ったのか。
墜落したのだろうか。
いやそんなはずはない。墜落の衝撃の後がこの辺りにはまるでない。それに傷も腕に小さな傷がある程度で大したものではない。
一体何が起こったのか・・・。
ここは何処なのか。
不安な気持ちを打ち消すように、友人の名前を叫んでみる。ひょっとすると、この辺りに二人もいるかもしれない。そんな期待を抱きながら。
「唯ーっ!」
「美菜ーっ!」
「どこかにいるのーっ!?」
聞こえるのは鳥のさえずりだけで、返事は聞こえては来なかった。
私だけ、放り出されてしまったのかもしれない。
少し歩いてみよう。
穏やかな天気とは反対に心の中は暗闇でいっぱいだった。
唯と美菜は無事だろうか・・・
そんな不安な考えを凪ぎ払うように、出来る限り大きな声で友人たちの名前を呼んでみる。
答えて欲しい、ただそれだけを一心に願いながらひたすら名前を呼んだ。