ようこそ学園へ 〜長編〜
□出会い
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一瞬の出来事だった。
人が倒れる音がして目をやると、自分たちの周りにいた盗賊は皆倒れていた。
何が起きたのかまるで分からなかった。
名前に触れようとしていた男もやはり何が起きたのか分からず混乱しているのだろう。
固まったまま身動きも出来ずにいる。そして子供たちに先生と呼ばれた黒い影にひたすら目を向けている。
しかし、それも一瞬のことで直ぐ様に己の刀を構え突進して行った。
「おのれーーーーーっ!」
叫びながら二つの影に切りかかろうとした。しかし一つの影がシュッと音もなく素早い動きで男の背後に周り、首の辺りを軽く叩いたと思った瞬間、男は周りの盗賊同様倒れ込んだ。
目を凝らして見ていたが、あまりに早すぎる出来事に 名前は只々驚かずには居られなかった。
「お前たち、怪我はないか!?」
そう言って、やはり音もなく側までやって来た男性は心配気な表情だ。
「土井先生ーーーっ!!」
先程まで自分を助けようと必死になっていた二人の子供は緊張の糸が切れたのか泣きながら抱き付いて行った。
少し倒れ混みそうになりながらも先生と呼ばれたその人は子供たちの頭や背を撫でてやっている。
そんな光景を見ていると突然声を掛けられた。
「立てますかな?」
その問い掛けが自分への物であることが分からず暫く間を置いた後、いつの間にか自分が座り込んでしまっていたことに気付いた。
そして問い掛けられた方を向く。
言葉を発したのはどうやらこの壮年の男性であった。強面だが優しげな目を向けてくれている。
喉が渇ききり声を思うように操れないため頷いて返事をして見せた。
なかなか足に力が入らず、それを見かねてか壮年の男性が手を貸してくれる。立ったと同時に周りにも声を掛ける。
「周りにまだ残党が残っているやもしれん!早々に立ち去るぞ!」
他の皆は小さく頷き走り出そうとした。それに続き自分も走り出そうとしたが足の痛みに耐えられず 名前は思わず転んだ 。
「半助、背負ってやれ」
そう言われ、さあと男性が屈み背を見せる。されるがままに 名前 は背負われ、一同は足早に学園への帰路を辿った。