ようこそ学園へ 〜長編〜

□始まり
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学園長らが訪ねて来た後、一週間ほどで傷も随分癒え、名前は 一人で歩き回れるようになっていた。
そして新野先生の勧めで毎朝こうやって薬草園の辺りまで歩いている。
ふと、立ち止まり草花の生えている畑を見た。

さすが忍者の学校。薬草も育てるんだ・・・。

そんなことを考えながら見渡していると、遠くから子どもたちの話し声が聞こえてきた。
見ると土井先生と先日自分を助けてくれた子どもたちがこちらの方に歩いてやって来る所だった。
名前が見ているのに気付いたのか、子どもたちは手を振りながら駆けてくる。

「もうお加減は良いんですかぁ?」

満面の笑みでそう言ってきたのは、丸眼鏡の男の子だった。

「良かったねえ、僕たち心配してたんだぁ」

鼻水を垂らしながら、やはり笑顔のこちらの男の子。あの夜には見かけなかったが気遣ってくれているようだ。

「いや〜!お礼なんて良いっすよ!全然、いらないっすよ!」

この男の子も覚えている。自分を助けようと必死になってくれていた。
しかし、今は言葉とは裏腹にニコニコしながらその手を 名前の前に差し出している。

・・・よ、要求されてる。

お礼はしたいが、自分が持っている物は何があったか。今は小袖を借りて着ているが元の洋服のポケットには何か入っていただろうか。


「・・・・っ、きり丸〜!」

ゴキン、と音がした。
土井先生が男の子の頭に鉄拳を食らわしたのだった。
「駄賃をねだる奴があるかっ!」
苦虫を噛み潰したような顔でお説教を始めたのだった。
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