ようこそ学園へ 〜長編〜

□花の名は
1ページ/6ページ

学園で名前が異世界からやって来た事を知る人物は三人、学園長である大川平次渦正、山田伝蔵、土井半助である。
それ故、 名前は学園長の知人の娘という事で通っている。
学園の誰もがそれを疑わなかったが、伝蔵の息子である利吉だけは異変に気付いていた。





「ふう、暑い。」

名前は食堂の釜戸で火を興していた。
焼くのも煮るのもこの作業無しでは始まらない。
最初は上手く出来ず火が消えてしまったりもしたが徐々に上達しているのが自分でも分かる。
額に滲む汗を手拭いで押さえながらひたすら竹筒に息を吹き込む。

名前は学園で働くという話しを学園長から貰たあと翌日から働き始めた。
場所はいま人出が不足しているというこの食堂だった。

「 名前ちゃん、こっちは一段落したから。その汁物が出来たら少し休憩しておいで。 」

そう笑顔で言うのはこの食堂の総統である。学園の人達には食堂のおばちゃんと呼ばれて親しまれているらしい。
自分がおばちゃんと言うのは失礼なような気がするのだが、その方がしっくり来ると言われ少し躊躇われるがそう呼ぶ。

「はい、・・・おばちゃん。ありがとうございます」

名前も釣られるようにしてニコッと笑う。大方出来上がった所で味見をお願いするとおばちゃんは再び口を開く。

「それにしても 名前ちゃんは料理上手だねえ。最初、火が起こせなかった時はどうした物かと思ったけど 」

そう言いおばちゃんは声をたてて笑った。
働き始めて数日だが三度三度毎日学園中の食事を作るのは容易ではない。
それを一人でこなしてきたのだから率直に凄いと思う。
名前はそんなおばちゃんに褒めて貰い嬉しい半面少し気恥ずかしくもあり顔を赤くした。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ