ようこそ学園へ 〜長編〜
□旅路
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旅にトラブルは付き物だ。
けれど、まさかこんな事が起こるとは予想していなかった。
初めての海外旅行。
目的地は南の楽園、オアフ島。
仲の良い学生時代の友達、唯と美菜たちとの旅行だ。
皆、学校を卒業し就職して以来、なかなかまとまった休みを取ることは出来なかった。
会社は違えど揃ってサービス業だ。
連休はおろか、休日返上で働く毎日ではそう易々と会うことは出来ない。
だから仕事から解放され、久しぶりに友人たちと過ごす、この日々をずっと楽しみにしていたのだった。
「ねぇ、 唯。見て、空から見る海って、キレイなんだね〜! 」
飛行機が目的地へと離陸してから、約1時間。
名前は窓際の席で、飽きもせず海を見ていた。
今の言葉も今日搭乗してから、これで三回目である。
最初は一緒になってはしゃいでいたのだが、景色がずっと海ばかりで正直、窓の外の世界はもう見飽きてしまった。
「 名前、ずっと同じ景色なのに見飽きないの? 」
やれやれ、といった感じで訪ねる唯。
その隣にいる美菜は既に眠りに落ちている。
「うん!私、こういう風に景色眺めるの好きなんだ」
キラキラした瞳で言う 名前に、唯は、この子は本当に純真な所があるなと改めて感じる。
会社勤めを始めて、忙しさのなかで多少擦れたかと思いきや、いつまでも子供のように感動出来るこの友人を彼女は羨ましく思った。
「 ・・・ステキだね 」
ポツリと唯は言った。
それは 名前に対してのものだったのだが、窓の外の世界へと向けた言葉だと思ったのだろう。
「そうだね!雲の間から見てるなんてステキだよね」
そう言って屈託のない笑顔を見せる彼女に、苦笑しながらやっぱり 名前は変わってないと感じた。