ようこそ学園へ 〜長編〜
□旅路
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空の道のりも終わろうとしていた。
目的地まであと少し、もう少しで島の姿が見える、そんな時だった。
それは始めコップの中の水が微かに揺れを増した程度でしかなかった。
次第に揺れはガタガタと大きくなり、眠っていた乗客も起き上がり皆いまの状況に不安を感じ始めた。
名前は見たのだった。
雲の間に一点墨を落としたかのような暗い闇が、徐々に大きくなりながら速度を増し近付いて来るのを。
今は現地時間では昼過ぎ頃に当たり、まだ夜の気配には早すぎる。
あれは何だろう。
雷雲だろうか。それにしても黒すぎる。
奇妙な闇が近付き機内は揺れを増して来る中で、名前は不安を覚えながらもどこか冷静な自分を感じた。
そんな思考を巡らせる数分にも充たない時間にも闇は更に近づき巨大になっている。
隣にいる友人たちも、必死に揺れに耐えながら恐怖を堪えている。
これから何が起こるのか予想もつかず命の危険をも感じ、唯の手が 名前の手を繋ごうと触れたその時だった。
目の前は一点の光も許さない暗闇に覆われた。
そして頭に強い痛みにも似た衝撃を受け 名前は意識を手放したのだった。