ようこそ学園へ 〜長編〜
□異世界
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友人たちの名前を叫びながら歩いて、もうどのくらいの時間がたっただろうか。
いくら呼んでも返事はない。
日が傾き始め、辺りも少し薄暗くなってきており、それが 名前をより一層不安へと追いやった。
山を下るようにしながら歩いていたが友人の声も無ければ人の声すら聞こえない。
もう直に夜になってしまう・・・
山には無知な 名前であったが 山の夜は恐ろしいだろうということは分かった。獣に襲われれば命は無いだろう。
しかし、友人の安否を早く確かめたいという気持ちが今は勝っていた。
喉も渇ききり、少し血の味がする口を開け力を振り絞るように叫ぶ。
「唯ーっ!」
「美菜ーっ!」
その時だったガサガサと草木が擦れ会う音がしたような気がした。
名前は咄嗟に身を隠し息を潜める。
獣だろうか、それとも唯たちだろうか。
息を殺すように雑木林の中で己の両足を抱えるようにして縮こまる。
草を踏むような足音が聞こえるが果たしてそれが人の物かどうか 名前には良く分からない。
背中にひんやりとした汗が伝うのが分かった。
現れたのは着物のような姿の男が3人だった。
手には刀のような金属が握られている。
「おい、声がしたのはここら辺だな?」
そう言った男の顔は髭面で、眼光は鋭くギラギラしておりただならぬ気配を漂わせていた。
何かで見たいわゆる盗賊のような出で立ちだ。ここは山の中だからひょっとするとあながち勘違いではないかもしれない。
「へえ、確か女の声はこの辺りで・・・」
答える男もやはり同じような恐ろしさを感じさせる。
男たちが探しているのは恐らく自分だろう。
身の危険を感じた 名前はこの場から立ち去ろうとした。音を立てないようにして足を後ろへ擦らし中腰で後退を試みる。
だが、更に後ろへ下がろとしたとき、パキリと音がした。
小枝を踏んでしまったのだ。
男たちが気が付くのが早いか、逃げるが早いか。
名前は咄嗟に走り出す。
足は速い方ではない、しかしここで捕まっては恐らく命は無い。
「おいっ!あそこだ!いたぞっ!!」
男たちが自分を見つけ追って来るのが分かった。
恐ろしさを感じているせいか足がもつれて上手く走れない。
何度も転んでは再び無我夢中で走り出す。
足に生温い自分の血が流れるのを感じた。
誰か、助けてーーーーっ!
助けを叫びたいが、恐怖で声が出て来ない。
もう捕まってしまう!
男が 名前を捕らえ倒れ込んだ。
もうダメだ。
そう思った瞬間だった。