ようこそ学園へ 〜長編〜

□出会い
2ページ/3ページ


満ちた月は既に南の方角に上っていた。背負われながら前方を見ると忍術学園と書かれた大きな木造の門が見えた。
どうやらここが彼等の言っていた"学園"なのだろうと 名前は思った。

助かったのだろうか・・・

あまりに色々な事が在りすぎて頭の中は混乱状態が続いている。とにかく降ろして貰おうと声を掛けようとした。
しかし土井先生と呼ばれるその人が口を開くのが先だった。

「お前らはっ!しんべえが血相変えて走って帰って来た時は肝を冷やしたぞ」

名前を背負いながら次々に子供たちを叱咤して行く。
だって先生と反論する子供たちには耳を貸さず尚も続ける。

「お前たちに野外鍛練をさせると録な事がない!今回は無事に帰って来れたから良いような物の何かあったらどうするんだ!」

まあまあと、壮年の男性に宥められるが感情は外に出てしまう。それだけ心配だったのだろう。それが分かったのか子供たちももう言い返そうとはしない様子だった。

そんな光景を見て名前は胸が痛んだ。
自分を助けようとした子供たちが叱られている。危険な目に巻き込んでしまった罪悪感から見ていて申し訳ない気持ちでいっぱいになり、為す統べもなく只俯いた。
しかし背負われたままというのは何とも心苦しい。何とか解放して貰おうと再び声を掛けようとする。
だが、またしても今度は壮年の男性によってそれが阻まれる。


「半助、私はこの件を学園長に報告してくる。お前さんは、その娘さんを連れて医務室へ、乱太郎たちはもう部屋に戻りなさい」

それだけ言って、やはり音もなく姿が目の前から消えていた。一瞬の闇と言っていい。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ