ようこそ学園へ 〜長編〜

□始まり
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乱太郎たちは一時間目の授業が始まると言って去っていった。どうやら次の授業は山田先生の実技の授業らしい。
隣にいる土井先生も笑いながら一緒に見送っている。一度、振り返った生徒たちに手を振っていたが、遂に姿が見えなくなった頃、不意に声を掛けられた。

「 苗字さん、先程の事なんですが・・・ 」

「はい」

返事をしながら土井先生に目線を移すと真剣な面持ちでこちらを見ていた。

「学園長が苗字さんの例の件の事は暫く伏せておいた方が良いと言ってまして 」
例の件とは異世界云々の事か。やはり信じ難い為だろうか、 名前 は考えた。

「余所者が苗字さんの事を聞き付ければ良からぬ事を企む者もいますからね。」

・・・・良からぬ事?

意味が良く分からず首を傾げていると、半助は少し俯きながら躊躇いがちに言う。

「無闇に怖がらせたくは無いんですが。例えば人売りに拐われたり、ですとか・・・」

「人売り!?」

突然聞きなれない文句が出てきた為、名前は驚いて目を見開く。
半助はその様子を見て宥めようと少し笑顔を見せながら答える。
「いや、中にはそういう輩もいると言う事です。」

「・・・・はい。」

山賊がいるなら人売りだって居てもおかしくない。
自分は助けられたから良いような物の万が一、友達等もこちらへ来ていたら大変な事になっているだろう。
不安な考えが過り 名前は半助に訊ねる。
「あの・・・、私と同じようにこちらへ来てしまった人間の噂はありませんか?」

半助は今自分にすがるような目を向けているこの人物が、恐らくあの時に言っていたた友達の事であろうかと考えた。

「・・・・いや、聞きませんね。」
真実あれ以来、調査で町に出る事も暫しあったが、その様な噂は耳にしない。
居たとしたら、やはり無事で居るのは難しいだろうと半助は思ったが 名前 を不安にさせるだけだと思い、それ以上は口にはしなかった。
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