ようこそ学園へ 〜長編〜
□花の名は
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名前は食堂のすぐ外で火照る頬を風で鎮めていた。
日は西山に傾き、朱を含んだ紫色の夕空が稜線の向こうに広がっていた。
辺りは少し薄暗くなって来ており、そろそろ学園の人達が夕飯を食べに来る頃だと思い食堂に戻ろうとした。
すると向こうから人影が歩いてきているのが見えた。
誰だろうかと思い暫くそちらを見ているとその人物と目が合った。
涼しげな目元が印象的な青年であった。
近寄りがたい雰囲気を感じさせるこの人物に名前は頭を下げて挨拶する。
すると相手もこちらの様子を伺うようにして頭を下げ、やはり涼しげな声で問う。
「新しい方ですか?」
「はい、 苗字 名前と 申します。数日前から食堂で働かせて頂いています」
学園の方だろうか、それにしては見たことがない、と 名前は思った。
働き初めてまだ一週間経たないが、毎日三度は必ず会うので正確には覚えきれていない物の会ったことがある人物かそうでないか位は分かる。
「すみません、こちらが名乗りもせず。私は山田利吉。山田伝蔵の息子です」
そう言い笑んで見せる利吉に先程の鋭さは無く、むしろ気遣いさえ感じさせた。
「・・・山田先生の息子さんですか!利吉さんもこの学園でお仕事されているんですか?」
そういえば目の辺りが似ているかもしれない・・・・。
「・・・いえ、私はこちらで働いているわけではないのですが、」
そこまで言うと食堂の方から声が聞こえてきた。