ようこそ学園へ 〜長編〜

□螺旋の紡ぎ
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学園長が障子の向こうから茶目っ気たっぷりに且つ満足げに笑み、これまた何かの一つの遊びのようにしてゆっくりと近寄った。

「よう来たな。確かお主は・・・・しょせんそんなもんだったかの?」

「っ!諸泉尊奈門だ。狸爺ぃ!」

「こら。口を謹め」

存在な口利きの尊奈門を嗜めるようにして小突くと雑渡は包帯から覗く右目の眼光を鋭くした。

「学園長先生。私に何か御用がおありなのでは?」

「うむ。」

学園長は部屋の最奥に進み、そのまま胡座をかいて座わると、側にあった文机を引き寄せて脇息替わりにし、ゆったりと構えた。

「ドクタケの様子はどのようじゃな?」

緊張の糸が徐々に張り詰めていく。
呼応するかのように日は西へ沈み室内は静寂の薄闇へと変わる。

雑渡はこの老人が何処まで事の経緯を知り得ているのか分からなかった。
あるいは全ての情報が実は既にその手中に有るような気さえさせてくるから恐ろしい。
余裕の笑みがその場の空気にそぐわずただ人ならぬ雰囲気を醸し出していた。

「はい。丁度その事に付いて、尊奈門より報せを受けておりました所で・・・・。」

ちらり、と目配せすると尊奈門はやや戸惑った様子でその顔色を伺おうとした。
幼子が親に判断を仰ぐような心境である。
忍術学園とタソガレドキ城は同盟状態であるが果たして手の内をさらけ出して良いものかどうか考えあぐねていたのだった。
しかし雑渡はいつもと変わらぬ落ち着きぶりであり、その静かな態度こそが是と促している。
尊奈門は口を開いたのだった。
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