ハニ受け3

□誘惑コレクション
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鼻歌が遠くから聞こえる、

その嬉しそうな、楽しそうな音色で目を覚ます。

腫れたように重い瞼を開けて見渡せば、自分の部屋じゃない事に一瞬ここがどこかわからない。
掠れた目を何度も瞬きして誰の部屋か見ようとしていたら、自分の頭の右上辺りから声がした。


「…ハニ?起きたか?」


優しい、声。

未だぼやけた視界、それでも俺の頭を撫でる逞しい腕は誰なのか、少しのヒントですぐにわかる。


「ス、ンチョ、ラ」


目の前でパンツ一枚のまま楽しそうに携帯をいじる男の名前を呼んで初めて自分の声がガザガザに枯れているのがわかった。

思わず咳き込めば、またすかさず腕が伸びてきて俺の背中を撫でてくれる。


「大丈夫か?…大丈夫、じゃないよな」



咳き込むたびに身体中が筋肉痛のように怠い。

ああ、今日本ツアー中だし、ほぼほぼ連日コンサートだし。

でもそれだけじゃない、何とも言えない身体の奥まで残るこの独特な違和感、残存感ーーー


「気失ってたんだぞ、お前。…まあ、俺が無理させすぎたんだけど」


その一言でぼんやりしていた頭が少しずつ記憶を取り戻す。

そうだ、夜スンチョルに呼び出されて、
瞬く間にベッドに引きずられて、
押し倒されて、キスされながら服の中に手が忍び込んできてーーーーー


やめて、とかもう嫌だ、とか言っても聞いてもらえなかった事も覚えてる。

普段なら絶対にしない体勢で何度も突かれて、喘がされて、いつもなら俺の身体に噛み跡一つ残してくれないのに確か、スンチョル 、…!!


「い、たっ…!!」

怠くて軋む身体を動かして、脚に少し力を入れたらズキ、と鈍い痛みが走った。

目線を俺の局部の真横に向ければ、紫黒い痣の痕。

そこだけじゃない、服で隠れる場所を知り尽くしたように無数の同じ色の痕がいくつも出来ている。


「これでも手加減した方なんだけどな…まだ怠いなら寝てろよ、時間あるから」


そう言って目線を携帯に戻したスンチョルの画像が一瞬、見えた。


「…???スンチョラ、何やってんの」


元に戻らない声で肘をついて身を乗り出したスンチョルの背中。

鍛えられ上げた身体越しに見るスンチョルの携帯は画像のフォルダだった。

画像のフォルダ??何みてるんだろう、ーーー


「お前はどれが良いと思う?本人に聞くのが1番だよなこうゆうのは」

「…へ、?」


そのフォルダには俺の寝顔のアップや髪を振り乱してぐったりとベッドに横たわる俺の背中や裸で寝ている俺のかなりヤバい危険な写真ばかりがスクロールしてもしても出てくる。


「ちょ、なにこれ、」

「お前コレクションその2、あ、いや、3か4かこれは」

「待ってこれ全部俺?!」

「当たり前だろこんな卑猥な写真、お前しか写さないし持ってない。あ、このフォルダその5だった、だいぶ前のだった」


5でだいぶ前ってどんだけ撮ってんだよ…


「いつのまにそんなに…!!」


わなわな震える俺に、上機嫌そうなスンチョルの顔。


「お前が気絶してる時とか寝てる時に撮ってる」


にっこり微笑まれて、青ざめる俺の顔ーーー


「…なにしてんだ、」

「インスタで匂わせようかと思って」

「…は?」

「お前がジス達と海辺で青春してるんなら、こっちはもっと濃厚なやつ用意してやるよ」


とんでもないやついっぱいあるぞ、
さっきの鼻歌が混じったような声色でそう言いながら、
無邪気にヤバい回答をするスンチョル。

あ、そうだ、昨日はあのインスタをシュアがあげた後このスンチョルの部屋に呼び出されて、それから始まったんだ、
終わらない詰問と、
耐力の無い身体に容赦なく打ち込まれ続けた夜がーーーーー

怠くて仕方ない身体が今度は震えて止まらない。


「…せ、スンチョラ」

「今すぐ全部消せ!やらないなら俺が葬ってやる!」

「痛ってえ!こら、ハニなにすんだよやめろ暴れんな!」


奪い取ろうとして誤作動が起きたのか、カメラに切り替わった携帯。


ーーーーカシャ、


「…ん?」

「…お、また撮れた。保存して、」

「すんじゃねー!!!」


ベッドの上で、昨晩とはまた違うスンチョル との攻防戦を繰り広げる。


二度寝なんて叶わず、
昨日ぐちゃぐちゃに抱かれて更に体力を失くした俺の身体は容易く腕を掴まれて、
その強い身体に抱きとめられたなら俺も俺で途端に大人しくしてしまう。


結局、あの際どい俺のフォルダは消せなかったーーー
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