skmくん受け1

□一度座ると重い腰が上げにくい
1ページ/1ページ

:fk視点



阿部ちゃんが休止から帰ってきた。
見事難関大学の合格を引っ提げての凱旋である。
帰って来た彼の笑顔を見たとき、俺たちは阿部ちゃんが帰ってくる場所を守り抜いたのだと正直安堵に崩れ落ちそうになったりした。
けれど帰ってくる場所を守り抜けるかという不安の反面、俺は阿部ちゃんが戻ってくるかどうかの心配は正直していなかった。
見かけより遥かに頑固かつ信念を持つ友人だ。戻ってくるといえば戻ってくると思っていた。

…というより戻って来ないわけがなかった。

ここには阿部ちゃんが何より大事にしている佐久間がいる。
阿部ちゃんが佐久間の待っている場所に戻ってこないはずがない、俺はそう思っていた。

けれど、当の佐久間が不安なのか見ていられないほどに日々情緒不安定になっていった。

やっぱりシンメで対の相手は特別だ。
シンメのいない半年間を佐久間は一人で戦っていたのだろうと思うのだ。


阿部ちゃんと佐久間は両片思いだ。
端から見ればどうしてお互い好きあっているのがわからないんだろうと思うくらい露骨なのに。
でも恋愛って自分のことになれば全くわからなくなる。
俺もそんな気持ちはわからなくもない。
阿部ちゃんは俺に相談して、佐久間は照に相談する。
だから俺と照が相談すれば俺らには拗らせシンメの恋愛事情は筒抜けだった。
阿部ちゃんが愛しそうに佐久間を見守るのも、佐久間が切なそうに阿部ちゃんを見つめるのも、そして隣にいられなくなるくらいなら今のままでもいいという二人の恐怖すらも。

阿部ちゃんが帰ってきて、また佐久間と一緒にいるようになった。
見る見るうちに佐久間の精神が安定しくのがわかる。

はにかむように佐久間が阿部ちゃんに微笑む。

控えめに言っても大好きオーラがすごい。

おおい、阿部ちゃんなんでそんな顔向けられて佐久間の気持ちに気づかないのー?
お前が一言好きだって言えばすぐに佐久間はお前のモノだよー?
脳内で阿部ちゃんにスリッパで突っ込みをいれていたら、ふっと佐久間の後ろにいた照が顔色を変えてこっちに走ってきた。

「ふっか、あと、くびっっっ!!!!!」

なるほどわからん。

「痕っっっ!!!!!」

………?落ち着け?
日本語で頼むわ。

「ふっか、首、キスマーク!!」

照の喋る言葉がようやく解読可能レベルになってきた。
ん?問題発言じゃね?

「え、お前つけたの?いつ?見えるところつけるなっていったじゃん」

「俺じゃない!お前でもない!佐久間!!!!」

なんですって?
うちの可愛いさくちゃんに!?
いや待って待って待って。

「佐久間の首筋、髪でぎりぎり隠れてるけど…動いた瞬間見えて…あれ絶対キスマークだって!」

「え?おかしくない?だって俺らちゃんと阿部ちゃんいない間佐久間によってくる虫はらってたじゃん!」

大変だった。
もちろん大変だった。
ああ見えてこう見えて可愛い佐久間だ。
しかも阿部ちゃん不在で弱ってる佐久間は庇護欲をいつもの倍以上そそられる。
いつもくっついてマウントオーラはなってる阿部ちゃんがいない隙に近づいてこようとする虫は多かった。
ゆり組を巻き込んで任務完了した暁には、俺たちは阿部ちゃんのおごりで焼肉パーティにありついたはずだった…(阿部ちゃんの復帰祝いが何故全て阿部払いだったのか佐久間だけが知らなかったりしたけど。あれは正当な報酬である)

そそそそと照と佐久間の後ろに移動する。

ちらりと何気ない装いで視線を向けると、ある。確かにある。
これでもかとつけられた所有印。
待て待て。お前どこでそれつけられた???

まさかどこかで食われたのか???阿部ちゃんへの片想い拗らせて自暴自棄になったりしちゃったの??
いやちょっと待って。ほんと困る。
お前そんなの阿部ちゃんに見られたらどうなると思ってんの!?
あの拗らせインテリに強硬手段なんかとられたら、お前あっという間に監禁コースよ!!!!!!

「さああああくううぅうううちゃああああああぁん!!!!!」

阿部ちゃんの前から佐久間を華麗に掻っ攫う。

照が不審な目をする阿部ちゃんを必死に引き付けているのがわかる。

頼むぞ照、俺たちのグループの未来は今お前にかかってる。

「わっ…、なに、ふっか…?」

きょとんとした幼い顔。
えっこのかわい子ちゃんに手を出したの誰?うちの子に不埒な真似したやつぜってー潰す。


「なに?じゃない、お前、首!!!!誰につけられた!?」

「く……び…?」

暫く何のことかわからないという表情だったが、阿部ちゃんに見られないようにその辺りを覆ってやると思い当たる節があったのか白い肌がカッと真っ赤に染まる。

「お前そんなの阿部ちゃんに見られてみろ!?良くて監禁悪くて監禁だぞ!?」

「…それ、どっちも同じじゃない…?」

「同じじゃない!!!!!!!」

悪い方はどんなプレイで犯されるかわからんだろうが!!!!
いや、でも佐久間も阿部ちゃんが好きな訳だから同意の上になるのか?いやでも他の男に痕つけられてるんだぞ?あーもう訳わからん!!!


「ふ っ か」


ひいぃいいいいいいいいいいい!!!!!


照お前最終兵器はちゃんと抑えとけよおおおおおおお!!!!!
終わった、うちのグループ終わった…

拗らせインテリが他の男に佐久間食われたなんて知ったら……

「俺だよ、ソレ」

「へっ」

「佐久間のソレ。痕つけたの俺」

「……キスマーク…?」

「そう。一応見えない場所につけたつもりだったんだけど気付かれるもんなんだね」

にこやかに笑うイケメンに俺の殺意ゲージが上がっても誰が責められようか。


「もーやっぱり見える所じゃんかー!俺のアイドル生命終わったらどうしてくれんのー!」


佐久間が阿部ちゃんに真っ赤になって掴みかかるが華麗に避けられて体制を崩した所を抱きすくめられる。
うーうー言いながらジタバタしているがしっかりと阿部ちゃんの腕の中に閉じ込められて身動きできずにいる。
可愛い、とかいって佐久間の額にリップ音をたてて唇を落とす阿部ちゃんは今までと別人のように幸せそうだ。
ようやく大切な宝物を手に入れた生気で満ち溢れている。
あれ?俺たちは何を見せられている?

「……お前ら…出来上がった?」

「一昨日。おかげさまで」

そういや昨日こいつら揃って休みだったな。


「………食った?」

「まーだーw」

途中でーす、とでれでれとした笑みを見せる阿部ちゃん。
あ、途中までは手を出してるんですかそうですか。
じゃなくおい待て。その顔。人に見られたら佐久間のアイドル生命より先に阿部ちゃんのアイドル生命が終わりそうだ。


「ね、佐久間。ハジメテいつくれるの?まだ?」

「こ、ここでそれを言うかああああああぁああああ!!????」

「だって準備ってどれくらいかかるの?早く佐久間のバージンちょうだい」

「うわああぁあああああん、あべちゃんがセクハラするううぅううう」


真っ赤になって泣き出しそうな佐久間。
でもきっと幸せなんだろう。
犬も食わない…というよりどうせ阿部ちゃんに食われるんだからおとなしくと食われとけ。


阿部ちゃんと佐久間がどれだけお互いを好きあっていたか、俺と照は知っているから。
うん、とりあえず佐久間監禁プレイは避けられたしめでたしめでたし。

まだきゃんきゃんと何かを言い合っている二人を尻目に、俺と照はそっと苦笑した。
次の章へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ