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□深く深く堕ちていく
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俺には大きな声で世界中の皆に自慢したいくらい、とても綺麗な兄がいる。名前はジョンハン。俺より歳は一つ上。綺麗という言葉は彼のためにあるような気がする程、白い肌にくっきり二重の綺麗な眼、薄く色付いた赤い唇に、程よい肉付きのスラッとした体型。なにより俺は、ジョンハニヒョンの肩まで伸びた長い髪が大好きだ。女の子のようないい匂いがするし、手触りはサラサラで。暇さえあればいつも触っていた。


そんな兄、ジョンハニヒョンと俺は兄弟だけど似ていない。所謂、義理の兄というわけだ。俺が5歳の時に俺の父親とジョンハニヒョンのお母さんが結婚した。だから血は繋がっていない。血は繋がっていない、そんな事実はどうでも良かった。物心ついた時にはもう隣にはジョンハニヒョンがいた。俺にとっては大好きな、誰よりも大事な優しいヒョン。

そう、誰よりも大事な俺のヒョンだ。


「ジフナ、起きて」

「ん…?」

深い深い眠りについていたけれど、暖かい手が俺の前髪をかきあげるように撫でたから目が覚める。うっすら目を開くとそこには優しい微笑みでこちらを見るジョンハニヒョンがいた。

「遅刻すんぞ、起きろって」

「んー…」

曖昧な返事をしてゆっくりと身体を起こした。未だ開ききらない目を擦ると「おはよ」とヒョンが声を掛けてきた。学校の日、朝起きるのが苦手な俺をジョンハニヒョンは毎日こうやって起こしてくれる。俺は本当に朝が苦手だ。ヒョンが起こしてくれるからわざと起きないわけじゃない。

大好きなヒョンとの時間も束の間で、階段の下から大嫌いな声が聞こえてきた。


「ジョンハナー!」

「あ、シュア待たせてるから先行くよ。ちゃんと起きて飯食べてから行くんだぞ?」

そう言ったジョンハニヒョンが俺の肩を抱き寄せて頭のてっぺんにチュ、とキスを落とした。俺がその手を掴んで引き止める間もなく、ヒョンは俺の部屋を出て一階で待ってる大嫌いなアイツの元へ行ってしまった。

その後ろ姿に、俺の大好きな長い綺麗な髪はもうなくて。後ろ髪は黒く染められ項が露わになるようにバッサリと短く切られている。
それもこれも全部大嫌いなアイツのせいだった。

ホン・ジス。ジョンハニヒョンが高校に入学すると同時に隣の家に越してきた帰国子女。ヒョンと同い年で同じ高校。と2人には共通点が多く、あっという間に仲良くなった。それまで、周囲からはブラコンと言われる程俺のことを可愛がってくれていたヒョンは、すっかりジョシュア一筋になってしまった。

俺がホンジスを嫌いな理由はなにも大好きなヒョンを取られたというだけではない。長く綺麗に伸びていたジョンハニヒョンの髪を触って、胡散臭いあの笑顔で「ハニは短い方が似合いそう」だと言いやがったのだ。

それに何を思ったのかジョンハニヒョンは、次の日には美容室に行って、俺の大好きな髪の毛をバッサリと切ってしまった。

ジョンハニヒョンの心だけでなく、髪までアイツは奪っていた。絶対許さない、大嫌いなアメリカ野郎。


ヒョンの後を追うように俺もリビングへと降りていった。階段を降りてすぐにある玄関に、大嫌いなホンジスと靴を履くジョンハニヒョンがいた。朝から嫌な奴の顔を見た、とあからさまに顔を顰めるとそんな俺に気付いたホンジスはニコリと態とらしく微笑んだ。


「おはよう、ジフナ。相変わらずお寝坊さんだね」

「…おはようございます」

俺が降りてきたことに気付いたジョンハニヒョンが顔を上げて笑顔で手を振ってくる。

「偉いぞ、ちゃんと起きてきたな」

「ジョンハナ。子供扱いしなくてもジフナももう高校一年生なんだから1人で起きれるよ」

ね?とこちらに微笑みかけてくるホンジス。なんだか牽制されているような気分で心底嫌気がした。

「そんなことない。ジフナは俺がいないとダメだもん。な?」

「どっちも不正解だよ。じゃあね、ヒョン。また学校で」

牽制してくるホンジスも、いつまでも子供扱いしてくるジョンハニヒョンもキライだ。俺が素っ気なく返答すると、ジョンハニヒョンは悲しそうに唇を尖らせて俯いた。そんなヒョンの肩をホンジスが笑って抱き寄せる。

「はは、早く弟大好きを卒業しないとね」


そう言ってチラっと俺を見るホンジス。

絶対コイツ性格悪い。

家に帰り着いて俺は鍵をカバンから出してドアを開けた。今日は部活の吹奏楽が急に休みになったので早い帰りになった。うちの家は両親が共働きだから夜遅くまで家には親がいない。
小学校の頃からジョンハニヒョンは俺の手を引いていつも一緒に帰ってくれた。家に帰ってきて、腹が減ったなと笑ったヒョンが一生懸命作ってくれるホットケーキが大好きだった。そんな日課も、周りの友達に冷やかされるからヒョンが中学に入るのと同時に「もう一緒に帰らない」と俺から言って終わった。あの時のヒョンは本当に悲しそうに落ち込んでいたっけ。

昔を懐かしみながら家の中に入って、すぐに俺は顔を顰めた。玄関にはローファーが2つ置いてある。


「アイツ来てんのかよ」

ため息混じりに嫌な言葉が零れた。ジョンハニヒョンだけでいいのに…ホンジスが家に上がり込んでいる。肩にかけていたカバンを玄関の隅に置こうとした時に、2階からガタン、と大きな物音がした。何事かと玄関のすぐ近くにある階段から2階を見上げるが、もちろん部屋の様子など見えるわけがない。

「?」

一体何をしてるんだ、喧嘩か?
ゆっくりと、恐る恐る階段を登る。2階へ上がるとジョンハニヒョンの部屋のドアが少しだけ開いているのが見えた。


「…っあ、ジス、ん…!」

「!?」

甘ったるい吐息混じりの声にビクリと肩が震えた。後を追うようにすぐ心臓がドクンドクンと脈を打つ。
その甘い鳴き声は、俺のよく知る声だった。

物音を立てないように部屋へ近付いて、バレないようにそっとドアの隙間から覗いて見た。


そこから目に入った光景に俺は絶句した。

(ジョンハニヒョン……!?)


ベッドの上で座るホンジスの上に背中を向けて跨るジョンハニヒョン。ホンジスはズボンとパンツだけ中途半端に脱いでいて、ヒョンはカッターシャツ1枚だけであとは何も着ていない。一生懸命ヒョンが腰を揺らす度にくちゅ、くち、と厭らしい水音が響くしベッドも軋む。「ジフナ」といつも優しく俺を呼んでくれるヒョンの声は今、快楽から甘い音を漏らしている。


「かわい、ジョンハナ。」
「ふ、ん…ぁ、ジス、……ジスぅ…」

後ろから手を伸ばしてヒョンに振り向くように促したホンジスは、振り向いたヒョンに噛みつくようにキスをした。

今目の前で繰り広げられている光景が信じられなかった。大事なヒョンに何をするんだと、怒りで胸を黒く焦がすのと同時に、見たことないジョンハニヒョンの妖艶な姿に興奮している自分がいた。

ツー…、とジョンハニヒョンと銀色の糸を垂らしながら唇を離したホンジスがこちらを見たので目が合った。やばいと思った時にはもう遅くて、いつも口角が上がっている唇が意地悪く微笑んだ。


「ジフナ、おいでよ」

「え!?…ぁ、む…!…ん、ぁ」

アイツが俺の名を呼んで、余計に胸が脈を打つ。
突然出てきた俺の名前に驚いたジョンハニヒョンの口の中にホンジスが指を入れてゆっくりと動かす。口の中に指を入れられたせいで何も喋れなくなるヒョン越しに、ホンジスがこちらを見て笑っている。
その勝ち誇ったような笑みが、俺の中の怒りを煽る。逃げ出すのも嫌で、わざと扉を開けて中へ入ると後ろ手で扉を閉めた。

部屋に入ってきた俺を見てジョンハニヒョンが目を大きくして驚く。

「!…やだやだ、っジス、抜いて、いやだ!」

「なんで?抜かれて困るのはハニじゃないの?」

ホンジスの上から降りようと立ち上がろうとするジョンハニヒョンの腰を掴んで引き寄せたホンジスは、そのまま腰を突き上げるように動かしてジョンハニヒョンを攻める。その揺れに長めの前髪を乱しながらジョンハニヒョンが甘く鳴く。

「ひゃっ、あっ、やだ…ジス、やめて…、あっ、んん…!!」

忙しなく腰を揺らして暫くジョンハニヒョンを攻めていたホンジスの腰が止まった。その瞬間ヒョンは力が抜けたようにぐったりと背中を預ける形でホンジスへと倒れ込む。頭を上げたジョンハニヒョンの顔は涙でぐしゃぐしゃに濡れていた。

「見な、で……ジフナ…」

ぐすんぐすん子供のように泣くジョンハニヒョンをホンジスが優しく頭を撫でて宥めるように頬にチュ、チュ、とキスをした。


「大丈夫、ジョンハナ。ジフニはこれを見て君を嫌いになったりしないよ。」

言い聞かせるように優しい声色でそう言ったあと、チラとこちらに目線を送るホンジスと目が合う。

「むしろ興奮してるよね?ジフナ。」

そう言ってホンジスは閉じていた足をグッと開く。そうすると必然的に跨っているジョンハニヒョンの足も開かれて、ふたりが繋がっている結合部が丸見えになった。厭らしいその光景に、俺の意志とは裏腹に熱が下半身に集中する。抵抗する力もなくなってしまったのかジョンハニヒョンは「あ、」と可愛らしい声を出しただけだった。

「君のヒョンは凄く可愛いよ。こんな風にドロドロになりながらいつも僕を欲しがるんだ。」

ジョンハニヒョンの脇を抱えて繋がったままベッドから床へ降りると両手をつかせて四つん這いにさせるホンジス。ヒョンはもうされるがままだった。バックの形で挿入したままホンジスはこちらを見て手招きをする。

「おいで、ジフナ。勃ってるんだろ?ハニのせいなんだから、ハニにどうにかしてもらお?」

そう言ってホンジスがぐっ、と腰を動かして1回突くと「ぃあっ…!」と高い声を漏らしてはゆっくりと顔を上げたジョンハニヒョン。ぼーっとした表情はちゃんと俺が見えているのか分からない。薄く赤く色付いた唇が少しだけ開いたかと思うと縋るような声で俺の名前を呼ぶから、もう何も我慢ができなくなった。

ヒョンの前まで来ては制服のズボンのファスナーを下ろす。パンツの中から存在を主張する俺自身を取り出すとヒョンの口へと宛てがった。ちょん、と先端で唇を突くとジョンハニヒョンは抵抗することなくチュッと先端にキスをして、そのまま口に含んで咥えた。生暖かいヒョンの咥内、裏筋を這う舌の腹に気持ちが良くて身震いした。

「んっ……ぁ、はむ……ん」
「っ…!」

何回か息継ぎをするように口を離しては一生懸命俺のを咥えて気持ち良くしようと口を窄めたりと尽くしてくれるジョンハニヒョン。たまにこちらを見上げる瞳が綺麗で可愛くて。

ただ、こういうのも全部目の前で優しく微笑んでこちらを見てくるこの男に教えて貰ったんだろうなと思うとどうしようもなく腹が立つ。


「ハニのフェラ上手でしょ?最初はさぁ、全然ダメだったんだよ。舐めるのも嫌だって言われて」

ね、ジョンハナ?と問い掛けながらカッターシャツの下から中に手を入れてヒョンの背を優しく撫でる。
ジョンハニヒョンの肩がビクリと揺れるのを見てホンジスは愛しそうに微笑んだ。

「でもね、フェラより得意なのなこっち」

「ん、やぁ…シュア…!」

何をするのか、ホンジスは腰を引いてヒョンから自身を抜いた。それを俺自身から口を離して名残惜しそうな声を出すヒョンに思わずムッとする。
ホンジスはジョンハニヒョンのお腹に手を回して上体を起こすように促すと、そのままこちらを向いて座るようにさせて後ろから両足を持ち上げるとぐっ、と足を開いてみせた。


「なっ!なに、ジス?やだよ、やめて」

いやいやと首を振って両手で前を隠そうとするヒョンに「ハニ、」と子供を叱るようにホンジスが呼び掛ける。

「ハニは口で咥えるよりも、こっちの口で咥える方が上手なんだよ。ほら、ジフニも挿れてごらん?」


ぐ、とヒョンの両足を持ち上げては先程までホンジスを咥えていた後穴を見せてくる。ひく、とヒクつく穴がとても厭らしい。



もし挿入してしまったら。
俺とジョンハニヒョンは、元通りの兄弟に戻れるのか。

それが頭をよぎって、なかなか足が動かない。
フェラしてもらっておいて今更だけど。

そのまま動けずに呆然と立っているとホンジスがふふ、っと吹き出した。


「ひどい弟だなぁ。大好きなヒョンが欲しがってるのにあげないなんて。」
そう言ってヒョンの首筋にちゅ、と吸い付いてそのまま耳元に唇を寄せる。

「ほら、ジョンハナ。ちゃんと言わないとジフニ分かんないって」

促されると虚ろな目でジョンハニヒョンがこちらを見る。視界に俺を捉えると、ジョンハニヒョンの顔が泣きそうにくしゃ、と歪んだ。

「ジフナぁ……ごめん、……挿れて…?」


そう言って泣き出してしまうヒョンに恐る恐る近付いて、俺は優しく頬を撫でた。その手にぐすっと泣きながら頬を擦り寄せるジョンハニヒョン。


「ふふ。可愛いなぁ、ジョンハナ。」

後ろからヒョンの項にキスをするホンジスを見ながら俺はヒョンの穴に自身を宛てがう。
腰を進めるとすんなりナカへ挿っていく。でもナカは緩くなくて、きゅんきゅんと収縮しながら俺自身を包んでいく。その気持ちよさにどうにかなりそうだった。

「っ…はぁ…ジョンハニヒョン…!」
「あ、っ…あぁ……」

一心不乱に腰を振っていると、頭を撫でられて我に返る。前を見るといつもの胡散臭い笑顔で俺の頭を撫でるホンジス。心底胸糞悪かった。


「っ…、…アンタ、頭どうかしてる…」

俺がそう言うと、最初こそ目を丸くして驚いたホンジスだったが、すぐにまた微笑んだ。

「オカシイのは、君達兄弟だよ。」




ホンジスの言葉の真意が分からなかった。
続けて、「ジョンハニは渡さないよ」と言ったホンジス。


やっぱりコイツ性根が腐ってる、そう思いながら俺はジョンハニヒョンの中で達した。




深く深く堕ちていく。
(そこはもう抜けられない深い深い闇だった。)

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