ハニ受け3

□Amnesia999
1ページ/3ページ

僕は、何度でも君に恋をする__




海辺のこの街は全てを受け入れるような優しい場所。僕、スングァンは小さい頃からずっとこの海を見て育った。買い物をした帰り道で、ふと見慣れた砂浜に視線を落とすと人が倒れていた。

銀色の髪が夕陽に照らされて輝いている。
「え、」
服を着ているから溺れたわけではないと思うけれどこれから日が落ちれば一気に気温が下がる。慌てて駆け寄った。

「大丈夫ですか!」

綺麗な顔をした男の人。
声をかけるとゆっくりと目を開けた。

「大丈夫..?」
確かめるようにもう一度声をかけると、ぼんやりと僕を見て彼は瞬きをしながら
はい...と呟いた

「良かった、寒くなるから早く帰った方がいいですよ」
膝についた砂を払って立ち上がる

「あの...」
「はい?」
「僕はどこに帰ればいいんでしょう..」
「は?」

彼はどこからどうやってここに来たか覚えていないと言った。辛うじて、年齢とジョンハンという自分の名前は覚えていたけれどその他の記憶が抜け落ちていた。

「おじいちゃん、人を拾ったー」
「えぇ?」
仕方なく祖父がいるカフェに連れ帰った。近くのクリニックの医者に診てもらったけれど、一時的な健忘でしょうと言われただけだった。祖父は誰にでも優しい人で、家を思い出すまでここにいればいいと彼に温かい牛乳を出して言った。
「僕はスングァン。よろしくね」
そう言うとずっと不安そうに俯いていた彼が顔を上げて頷いた。よろしく..そう呟いた声はあまりに小さくて、湯気を上げて沸いたお湯の音にすら掻き消されるほどの声音だった。

「なんにも持ってないの?」
「ポケットに小銭が入ってる」
「携帯とかは?」
「ない、、」
なんもわかんないね、そう言うとまた悲しそうに目線を落とす。元気出しなよ、そう言って背中を撫でるとあまりに細くて驚いた。

翌日、祖父のカフェの手伝いをすると言うと、彼は「僕も」と言ってついてきた。試しに卵を焼いてもらったら全く形になっていない。
「これ、記憶の問題じゃないよね?」
「ごめん、、」
思わず、ふ、と笑うと彼もへへ、と笑った。

それから毎日僕と一緒にカフェに来て、優しい口調でオーダーを聞いたり珈琲を運んだりして前からここに居たように馴染んでいった。祖父も嬉しそうに僕たちが笑い合うのを見ていた。
夜になると隣に布団を敷いてあげても、不安そうな目をして僕の布団に潜り込んでくる
「もー、なにー」
「怖いんだもん、、」
背中にぎゅっと抱きついて離れない姿は年上のはずなのに赤ちゃんみたいだと思った。仕方ないなぁ、そう言ってその体温を毎日抱いて眠った。守ってあげなきゃいけないような気持ちにさせる人だった。

彼を探している人はいないのだろうか
警察に連れて行った方が...
そんな事を思いながらつい何日も経過していた




「うっわ」
朝からカフェの窓に見えた人影に思わず声を上げた。扉を開けて声をかける

「何してんのミンギュ、あーもう!そこ拭いたんだから手つかないでってば!」

幼馴染のミンギュがガラスに張り付いてジョンハンを食い入るように見ていた

「誰あれ」
「海で拾ったの」
「へえ、、、可愛い、、、」

そのままフラフラと店内に入ってずっとジョンハンを見ている。ジョンハンはその熱い視線に困ったようにしながらも、時折優しく微笑んだ。

「ミンギュもういい加減帰って」
早朝から夜までそこに座ってジョンハンを見続けていたミンギュの腕を引っ張る。
「終わるまで待ってる」
はぁ、とため息をついた僕に構わずにジョンハンと目が合う度に可愛い、と呟いて本当に最後まで待っていた

「なんでついてくんの」
「お前なんで一緒に帰ってんの」
「うちに一緒にいるからだよ」
「は?久しぶりに遊びに行く」
「帰って」

僕たちのやり取りを聞きながらジョンハンは静かに笑っていた。それからも何かとジョンハンの後を追いかけて、カフェが終わる頃に必ず外で待っていた。その姿は飼い主を待つ犬のようだった。

何日もそんな日が続いて、ジョンハンとミンギュは次第に仲良くなっていった。

「今日は俺んちで遊ばねえ?」
ミンギュが言う
「遊ばないよ」
僕がそう答えてもミンギュが見ているのはジョンハンだけだった。
「行ってくれば?僕もたまには1人になりたいし」
昔から仲が良かったミンギュがあまりにもジョンハンにばかり夢中で少し悔しくなった。それで、つい口から出た言葉だったけれどジョンハンはすごく傷ついたみたいな顔をしていた。

謝るタイミングも逃してそのまま足早に1人で帰って来てしまった。


「なに怒ってんだアイツ、、」
「僕が邪魔なのかな..」

泣き出しそうな顔をしている彼に戸惑って、
どうすれば分からない手が行き場を失った。
少し迷った後にぎゅう、と抱き寄せた。

同じ男なのに。こんなに欲しいと思うなんて。

「とりあえず寒いからうちに来なよ」
「うん...」

いつまでも泣きそうな顔をしているジョンハンの手を引いた。小さい手だな、そう思うと、今度はその身体が更に欲しくなった。

部屋に引き入れてその潤んだ目を見ながらキスをすると、驚いたように一瞬離れた。
狡いと思いながらも帰る場所がない彼の隙につけ込んだ。
「好き..だよ、お前の事」
「僕、男だよ..?」
「嫌?」

真っ直ぐに目を見つめたまま握りしめた手を離さずに聞いた。

1人になりたくない彼は、嫌ではないけど、、そう答えるしかなかったんだと思うけれど、
きっかけは何でも良かった。

唇を塞いで身体を撫で上げる。
「ん....っうぅ......」
漏れた甘い声もやっぱり可愛くて止まらなくなる。そのまま押し倒して下半身に手を伸ばした。
「やだ....やめ.......」
「やだって言うわりに反応してるけど?」
そう言って追い詰めるとまた涙を浮かべて下唇を噛んだ。何もかもが可愛くて早く繋がりたくて焦る気持ちが止まらない。
小さな尻の奥で見つけたその蕾も、意外に柔らかくて指が2本飲み込まれたのを確認すると自分の中心を押し当てた
「や....っ....やぁっ.......」
そのまま、ぎゅうぎゅうに締まるその場所に無理矢理押し込んだ
「っッ!痛った、い、やだぁっ、」
そう言うと強い力で突き飛ばされた。

可愛い顔してるけど、こいつも男だな、、、

「いっ..て」
「ばか!最低!!」
「ちょっと、待っ、、、、」
逃げるように走って帰って行く

「足、、はや、、、、、」


----------------------------------


ジョンハン遅いな、泊まるつもりなのかな
僕があんな事言ったからもう帰って来ないのかな

窓を開けて外を見ると、家から少し離れた場所でしゃがみ込んでいるのが見えて慌てて外に出た

「なにしてんの、、、家入りなよ、、」
「大丈夫、、」

座ったまま泣いていた。胸のボタンが外れているのか胸元がさっきより開いていて、寒そうにしている。

「ごめん、さっき、、」
「ううん。邪魔だよね、、」
「そんな事思ってない!本当だよ..」
きっと全てを忘れて不安なはずなのに、酷いことをしてしまった、そう思いながら手を引いた。
「帰ろ...」

風呂から出てきたジョンハンは目元を赤くしたまま、部屋の端に座った
「ミンギュは、、?」
「あの人きらい..」
「え、何があったの」
「無理矢理僕に入れようとした、、」
「はぁ!?」
「もうやだ、明日から遊ばない」
そう言って僕にまた抱きついた
次へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ