ハニ受け3
□nobody knows
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全校生徒が同じところに向かうこの時間。
さっさと移動するやつもいれば、いつまで経っても廊下で喋ってるやつもいる。
気だるい授業が終わった後だからか、騒ぐ声はやたら大きくて、もはや祭り状態。
ちなみに俺は、その廊下の横のトイレの手洗い場で一生懸命ヘアチェックに勤しんでいた。
だって、これから大好きな人に会いに行くんだ。
好きな人にはかっこよく見られたい、そんなの恋する人たち世界共通の事じゃん。
「おいミンギュ遅いよ〜」
「早くしないと遅れるぞ」
そう言いながらトイレの重たい扉を開けたのは、クラスメイトのミンハオとソクミン。
半分だけ身体を出して嫌そうな顔をしてるミンハオと、その後ろで背伸びしてるソクミン。
そんな二人を鏡ごしに見ながら、最後に前髪を整えてっと、、
「はい終わりましたおまたせ」
「生徒総会だけなのにいちいち髪の毛直す意味はどこにあるんだよ」
「早く行こうよ〜」
お前たちにとったらただの生徒総会だろうけど、俺にとったら一大イベントなの!
まあなんでそうなのかは後で説明するとして、ちゃんと綺麗にした髪型が崩れないように、俺たちも体育館へ向かった。
体育館はもう既にほとんどの人が中に入っていて、俺たちのクラスも後ろの方まで列が伸びていた。
あ、ミスった。こんな後ろじゃ全然見えないかもしれないじゃんか、、(まあ俺が前に座ったところでどうせ後ろに回されるんだろうけど)
完全に盲点だった。
そんな風にしょぼんとする俺をよそに、二人は前でけらけら笑いながら何かを話してる。
そうこうしているうちに体育館は満杯になって、徐々に静かになっていった。
そして、本日の主役たちの登場に会場は湧く。
生徒たちが座る列の真ん中だけあけられた通路を颯爽と歩くのは、この学校の生徒会メンバー。
一番前を歩くのは生徒会長のチェスンチョル先輩で、次が副会長のホンジス先輩。
でも俺は、その次を歩く人に釘付けだった。
「わーすごい黄色い声」
「アイドルみたいだな」
そんな二人の会話も耳に入らないくらい俺が夢中で視線を送る人。
それは、生徒会会計のユンジョンハン先輩。
真っ白で透き通った肌に、サラサラの茶色い髪。
運動が得意で球技大会では大活躍。さらに勉強もすごく出来て、文化祭のミスターコンでは一年の時からグランプリ。
そしてついた名前は、「ユン天使」。その名の通り、この世に存在するはずのないくらい、本当に綺麗な人だ。
そんなジョンハン先輩は、会長のスンチョル先輩や副会長のジス先輩を差し置いて、この学校でダントツ人気の人。
それでいて、俺の内緒の恋人でもあった。
生徒会のメンバーが壇上に置かれた席について、スンチョル先輩が初めの挨拶をする。
その間も俺はひたすらジョンハン先輩を見つめ続けていて、話なんて何にも耳に入らない。
スンチョル先輩の話が終われば、待ちに待った決算報告だ。いや、こんなに楽しみにしてるの多分俺だけだろうけど。
「次に決算報告をします、会計のユンジョンハンです。今年度の、……………」
手元の紙を読み上げるジョンハン先輩の声が、体育館中にさらさらと流れていく。
隣に座る女子たちが、かっこいいだのなんだの言ってるのを横目に、大好きな恋人の頑張っている姿を目に焼き付ける。
その瞬間、ジョンハン先輩がちらっと視線をこっちに向ける。
どくん、と心臓が震え上がった。
目なんて合うはずがないのに、ましてやこんな後ろにいる俺となんて。
そのあと、すぐに視線を紙に戻したジョンハン先輩に、ホッと胸をなでおろした。
みんなの憧れで何をさせても完璧な人。
そんな学校一の人気者の本当の顔を知ってるのは、俺だけでいいんだって。
俺だけのユンジョンハンだから。
「…っ、!……ゃ、」
そんな、俺とユンジョンハンの秘密。
今日は誰もいない生徒会室。
「みんっ…ぁ、やだぁ、」
「なにがやなの」
「あつぃ、…っなか、」
「なかあついね、」
ジョンハンの中に埋め込んだ性器に纏わりついたのとは別に、行き場を失った精液がジョンハンの太ももを伝っていく。
若い性器は何度出しても衰えることはない。目の前の光景を見ていたら余計に。
「ここで、っいつも会議、してんの?」
「あ、っし、してぅのっ…」
「じゃあ、思い出しちゃうね、はに、淫乱だから」
「!やっ…いん、らん、っ、」
ギュッ、となかが締まる。
淫乱って言われて、なに興奮してんだこの人。
俺の下でなかに突っ込まれて気持ちよさそうに目を細めるこの人は、さっきまで壇上で背筋を伸ばして決算報告をしてくれていた、みんなが大好きなユンジョンハン先輩。
誰も知らない、二人だけの秘密。
ユンジョンハンの職権を乱用して生徒会室の鍵をもらって、息をつく間も無くソファーに押し倒して唇に噛みついた。
真面目な優等生、そんなレッテルを貼られた人が、二つも年下の俺に従順な変態だって知ったら、今日隣にいた女子たちは血を吐いて死ぬかもしれない。
綺麗なものは汚したくなる、だから汚した。
暇さえあればこうして身体を重ねて、この薄い身体が俺しか受け入れられないように調教した。
だから、ほら。
「あ、あっ…や、っもっと、おく、」
「ほしいの?」
「はに、っいんらん、なの、だからっ」
「だから?」
「みんぐのでぇ…っおく、ぬぽぬぽって、っ…あ、たりないっ…あぅ、たりないのぉ、」
もうほとんど着れていない白いシャツから覗く白い肌を真っ赤にして、そう懇願する姿にため息を吐いた。
こんなに最高の恋人を持てたなんて、この高校で一番の勝ち組は俺だ。
ふやけきったジョンハンの片脚を持ち上げて、そのまま自分の肩に引っ掛ける。
繋がりが深くなってさっきより奥に入ってくる快感に、ジョンハンはふるふると首を振った。
「ぁ、やらっ…んっ、はいって、」
「奥まできてる?」
「っきて、る、やだっ…」
「なにがやなの?」
「きもちい、みんぎゅのっ…はやく、うごぃて、」
顔をとろとろにして、深くて短い息を吐き続けるジョンハンは、嫌だとか、早くしろだとか、よく分からないことを言い続ける。
この人はいつもこう。ジョンハンにとっての嫌って、もっとしてほしいって意味だから。
「うごく、けど、声出すな」
「っ…むり、」
「バレたらどうするの」
「やっ、ぁ…ん、ぐ、」
ジョンハンの口を手のひらで押さえつけて、再びぐちゅぐちゅと律動を開始する。
手のひらは熱い吐息と、ジョンハンの目から溢れた涙が伝ってきた。
ぐぐ、と手に力を込めると、息の吐き場をなくしたジョンハンが、苦しさからか中を締めつけてくる。
「っ…は、」
「んぐ、っん!…っん、ぅ」
「締め、すぎ、」
「〜〜っ、ん!ぅ、んっ…」
手に力を込めれば込めるほどぎゅうぎゅうに締めつけられて、イってしまいそうになるのを堪えて手を離した。
顔を真っ赤にしたジョンハンは荒く息を吐きながら、弱々しく握りしめた拳で肩を叩いてくる。
「なーに」
「っは、はぁっ…あほ、」
「苦しかった?気持ちよかった?」
「…っ、」
「はに、どっち?」
まあ、聞かなくても分かるけど。
ちゃんと言わないとしてあげないよって、いつも口うるさく言ってるもんね。
ここで憎まれ口叩くものなら、入れてるもの抜いてそのまま帰っちゃうからね、俺。
「……ぃ、っ」
「え?」
「きもちぃ……かったぁ、」
ほら、ちゃんと言った。
この顔本当に可愛いからみんなに見せてやりたい。
ちゃんと言えたご褒美に、ジョンハンの鎖骨の少し下にキスを落とした。
そのまま軽く噛んで痕をつける。キスマークつけられるの、すごく好きなんだって。
「偉いね、ちゃんと言えたね」
「っ…はに、えらい?」
「うん、すごくいーこ」
「みんぎゅ、もっと、あとつけて」
「もうたくさんあるよ?」
「たりないもんっ、」
そう言ってやたら強請るから、今度は耳より後ろのうなじに噛みついて、くっきりと痕を残す。
そのときに、覆い被さった俺の腕を掴んだ両手から、薄いシャツと一緒に爪が食い込んできた。
「いっ…」
「っや、ごめ…なさ、」
「やだ」
ぐじゅ、と繋がったところが音を立てる。
再び腰を進めると、ジョンハンを歯を食いしばってまた爪を食い込ませてくる。
この痛いのも気持ちいいなんて、自分だってどうかしてる。
でも動き出したら止まらなくて、声を抑えさせるのも忘れて夢中で腰を打ちつける。
「い!や、」
「っ、はぁ、」
「やっ、!やぁっやだ、ぁ、」
「…っ、でる、」
「も、っはいん、なっ、ぃ…っ、!」
「っはいる、」
「っやらぁまって、やめっ、」
「やじゃない、でしょ」
そう言ってジョンハンの反り立つ性器に手を伸ばして、根元をきつく握りしめる。
後ろだけでイけるでしょ、なんて耳元で呟いたら、ジョンハンは顔を青ざめて首を振る。
「うそつき、」
そう言ってラストスパートをかける。
生徒会室の高そうなソファーでも軋むくらい揺さぶるのに、必死にしがみついてくるジョンハンが可愛い。
絶頂がちらついて短く息を吐くと、ジョンハンもそろそろだと喘ぐ声を張り上げる。
「あっ、あ!ぁ、みん、ぎゅ、」
「こえ、でかいって、」
「やら、っあ、なんかっへん、」
「も、むり、」
「ひ!〜〜っ、!!ゃ、あ…っ、!」
悲鳴みたいな声が聞こえて、ジョンハンが俺の胸元に顔を埋めてきたのとほぼ同時に、俺は中に欲を吐き出した。
全部流し込ませようと奥を一度突くと、その度にジョンハンが声を出すから、可愛くて何回か腰を打ち付ける。
「…ぁ、ゃ…ぅ、」
「後ろだけでイけたじゃん、」
「ぅ…ぁ、」
「もう何も出てないよ?」
「へ…ん、なる…ぅ、」
「もうなってるよ」
もうほとんど声を発しなくなったジョンハンを抱き上げて、そのままソファーに後ろ向きに倒れる。
上に乗り上げたジョンハンの汗でベトベトになった前髪をかき分けると、涙でぐしゃぐしゃになった顔が夕日に照らされる。
「ごめん、やりすぎた」
「ぁ…みん、ぎゅ…、」
「きもちよかった?」
「んっ…きもち、かったぁ…みんぎゅ、の…」
虚ろな目の瞼が閉じていく。
身体にかかる重みが増していくのを感じながら、疲れ果ててしまった恋人をあやすように撫でた。
「……みんぎゅ………、」
「なに?」
「…みんぎゅ、すき……」
「おれもだよ」
しばらくして、寝息が聞こえる。
こんな無防備な姿をさらけ出してくれるのは、きっと他でもない俺が相手だからだ。
誰も知らない、ふたりだけの秘密。
白いシャツに隠された独占欲の塊に、この学校の人間は誰も気づかない。
頭のてっぺんから足の先まで、この俺のものだっていうことに。
おまけ
結局学校を出たのは外が真っ暗になってからだった。
職員室の電気以外は全部消えていて、今更鍵を返しに行くのもなんだから、ジョンハンが間違えて持って帰っちゃったってことにしよう、ってなって、音も立てずに学校を出た。
駅までは人通りの少ない道を選ぶ。
手を繋いで歩けるし、こっそりキスだって出来る。
「あ、そうだ」
「どうしたの?」
「ミンギュ、生徒総会の時おれのこと見すぎ!」
「え、」
「すっごい視線感じるからそっち見たら、案の定ミンギュだし!」
「やっぱりあの時目合ったんだ〜」
「何言うか全部ぶっ飛びそうになったし…恥ずかしいからやめて!」
「やだよ、ずっと見てられるもん」
「おれもやだよ…」
「なんで?こんな可愛いミンギュくんが熱い視線を送ってるのに」
「それがやなの!」
「なんで」
「だって、だって…思い出すんだもん……」
「なにを?」
「……ぇ、えっち、してるときの、こと…」
「………」
「黙るのやめてよもう嫌だ全部忘れて」
「あんな大勢の人の前で、そんなこと考えてるの?」
「ちがう!」
「かわいー」
「きらい!」
「おれは好きだけど」
「ぅ…」
「ミンギュくんの勝ち〜」
そう言って、暗闇でも分かるくらい顔を真っ赤にさせたジョンハンに、優しくキスを落とした。