ハニ受け3

□creeping
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「また泣いてるの?」


扉を開けるなりそう言ったのはジョシュア。
深くため息を吐いて中に入ると、ベッドに座るジョンハンの隣に腰を下ろした。
そのジョンハンを挟んだ隣にはスンチョルがいて、ジョンハンの背中をさすりながら流れていく涙を親指で拭っていた。


「ひぐっ…ぅ、しゅあ、」

「次はどうしたの」

「だって、、だってぇ…っ」


そしてまた、ジョンハンは声を上げて泣き出した。

これはよくあること。
事あるごとにこうして泣きついてくるのを、スンチョルとジョシュアはこれっぽっちも嫌だと思ったことはなかったし、なんなら可愛いと思っているくらい。
ただ次に発せられる言葉に、二人はいつも嫌気がさす。


「みんぎゅがぁ…っ、」

「はぁ……」

「またミンギュか…」


ジョンハンが泣きつく理由。
それはいつも、恋人であるミンギュにあった。

ジョンハンの恋人、キムミンギュ。
端正な顔立ちと抜群のスタイル、それに人懐っこくて甘え上手。それなのに、年上の恋人に見せる顔は打って変わって悪魔のようで、それがジョンハンを繋ぎ止めて離さない。でもジョンハンにとって、そんな完璧な恋人は欠点でもあった。


「今度は何があったの?」

「んっ、ひっく…っうぅ、」

「ゆっくりでいいから、話してみて?」

「…みんぎゅは、っ…おれなんかより、もっといい人がいるんだよ、っきっと、」

「………」

「こんなっ…おれ、より、」

「うん………なんか言われた?」


ジョシュアのその言葉に、ジョンハンはピタリと止まった。
こうしてジョンハンが、自分はミンギュに似合わないんだなんて言い出した時は、大抵誰かに余計なことを言われた後だから。
ジョシュアもスンチョルも、そんなことは分かりきっていて誰に言われたかも大体想像がつくほどだ。


「ハニ、言ってごらん」

「何言われたの?」


ジョシュアが頭を撫でるのと同時に、スンチョルがまた涙を拭った。
ジョンハンはまだ気づいていない、両脇に座る二人の愛おしそうに揺れる目に。


「…みんぎゅは、ほんとにっ、おれのこと好きなのかって、言われてっ…」

「誰に?」

「……みにょぎひょん………」

「やっぱり」

「あの人はハニのこと手に入れるためにそんなこと言ってるんだよ?」

「でもっ…自信、なくなって…」

「うん、」

「っみんぎゅ、おれのことほんとに好きなのかなって、考えたら、なみだっ…とまんなくなって、」

「それで俺の部屋に来た」

「なんでクプスの部屋に行くの?僕の部屋に来たらいいのに」

「そこ?」

「だって…しゅあには、迷惑かけたくない、」

「迷惑なんて思ってないよ。もっと僕を頼って」


そう言ってジョシュアはじりじりと顔を近づける。
スンチョルが気付いた時にはもう遅く、やがてジョシュアは唇を重ねて、無抵抗のジョンハンの口内に舌を侵入させた。


「ん、っんぅ…ぇ、しゅあっ、だめだよ、」

「なんで?」

「だって、みんぎゅが、」

「今はその男の名前口に出さないで」

「まっ…、ん!」


そうしてしばらく二人が舌を絡ませているのを、スンチョルはジョンハンの肩に顎を乗せて、不貞腐れながら見ていた。
二人の影が離れる頃には、ジョンハンの息はすっかり上がっていて、それ越しにジョシュアは、スンチョルに鋭い視線を向ける。


「なにその顔、気が散る」

「ずるいの顔」

「気持ち悪」

「ひど!次俺の番だからあっち行って」

「クプスの番とかないけど」


不満そうに口を尖らせるスンチョルを無視して、ジョシュアはジョンハンの着ているパーカーをたくし上げた。
そして露わになった白い肌の上で、赤く腫れた二つの突起に舌を這わせて、ゆっくりと口に含んだ。


「や、だめ、しゅあっ、…」

「ん、」

「なめちゃ、いやぁ…っあ、だめ、」


ジョンハンの両手はスンチョルが後ろでホールドしている。
なんの抵抗も出来なくなったジョンハンの胸を、ジョシュアは舌の先で転がしたりぐりぐりと押したりしていて、スンチョルも負けじと片方を指で摘んだり引っ張ったりを繰り返した。
二人の真ん中で首を振りながら歯をくいしばるジョンハンは、まだミンギュのことを考える余裕があった。


この時は。


「ひ!っあ、」


ジョシュアが胸に歯を立てると、ジョンハンを腰を跳ねさせて声をあげた。
しめたようにもう一度歯を立てたジョシュア、そしてスンチョルはジョンハンの肩口にキスを落とす。


「いやっ…やめてぇ、っ」

「そう、じゃあやめるね」

「え?やめんの?」

「だってハニが嫌がってるんだもん」

「ぅ……っ」

「嫌だもんね?」

「……ぃ、」

「え?」

「っ、やじゃないっ…きもちいの、もっとして、」

「仕方ないなあ」

「こいつ鬼だ……」


快感に従順なんて当たり前に知っている。
ミンギュの知らないことまで知り尽くしているのがジョシュアだった。だから、他の男に取られた悔しさは消え失せることはない。
壊してでも手に入れたい、そう思っているのはジョシュアだけではなかった。


「じゃあハニ、俺にもちょーだい」

「っん!ぅ、」


無理矢理後ろを向かせて、スンチョルも唇を押し付ける。
それを見て分かりやすく顔を歪めたジョシュアは、邪魔をするようにするすると服を脱がせて首の後ろに唇を這わせたら、あっという間に痕をつけた。


「ん、ぁ…あぅ、」

「ハニ、興奮してる?」

「は、ぇ、」

「ここ、こんなんなってるよ」


ジョシュアは、ズボンの上からでも分かるくらいすっかり勃ち上がったジョンハンの性器に手を伸ばして、その布越しに焦ったくゆるゆると扱く。
ジョンハンはその刺激に耐えきれず、短く声を上げることしかできない。
そうしてまた放ったらかしにされたスンチョルは、頬を膨らませた。


「あ、あっ、…ゃ、」

「邪魔すんなよ〜」

「クプスのせいでハニにキス出来なくなったじゃん」

「なんで、すればいいじゃん」

「嫌だよ、クプスと間接キスとか気色悪い」

「きっ…ひど!」

「っ!ぁ、、んっ…」

「ハニ、気持ちいい?」

「やら…っあ、きもち、ぃ、」

「う〜俺も混ぜて、」


スンチョルがジョンハンのズボンに手をかけた瞬間、部屋の扉が開いた。
部屋の空気は止まって、ドアノブが回る音がやけに大きく響く、そして扉が開くのはゆっくりに感じた。


「なんか面白いことやってんね」


そう言葉を投げたのは、ミンギュ。
ジョンハンが目を見開いて息を止めたのに対して、スンチョルとジョシュアは焦りすら感じていない。


「なにしてんの?ジョンハナ」


火照った顔でジョシュアに身体を預けるジョンハンと、ミンギュを睨む二人。
それより鋭い目でミンギュはジョンハンを睨んでいた。


「ゃ……ぁ、みん…ぎゅ、、」

「俺の名前呼ばないでくれる?」

「い、や…」

「他の男に構ってもらえて良かったね」


それに一番早く反応したのはジョシュア。
余裕そうにふっと笑って、ジョンハンの頭を撫でながらミンギュに言葉を投げた。


「そうやって逃げるの?」

「………、はい?」

「お前がそう言うなら、ハニのこともらうけど?」


ジョシュアが「お前」を使うときは笑ってても泣いていても、怒っている時だけだ。
事実、今のジョシュアは表情さえ柔らかいものの、目はミンギュを刺すように鋭い。

そしてそれは、ミンギュも同じだった。


「お前みたいなやつに、ハニを渡すことは出来ない」

「っ、しゅあ、」

「既に俺のものですけど」

「ハニ、こんな男のどこがいいの?」

「ぇ、」

「ジョンハナ、さっさとこっち来い」

「っ、」

「行かなくていいよ、ハニ」

「ヒョン、そろそろ身を引いたほうがいいですよ」

「それはこっちの台詞なんだけど」


嫉妬と独占欲が部屋中を渦巻く。
その中心にいるジョンハンは、何をどうしたらいいかも分からなくて、額を汗で濡らしながら俯くしかなかった。

そして、スンチョルはそんな三人を交互に見て、深くため息をついた。
それと同時に、ジョシュアとミンギュが暴走する前にどうにかしないといけないなあ、と頭の端で考えていた。


「シュアヒョン、早く諦めてください」

「お前こそ」

「後で痛い目にあうの、ジョンハニですけどそれでもいいんですか?」

「ゃ、しゅあ、」

「シュアヤ、その辺にしとけよ……」

「クプスは黙ってて、もうハニがあいつのことで泣いてるの見たくないんだよ」

「は?そうなの、ジョンハナ」

「そ、だけど…」

「なあジョシュア、今日は一旦ミンギュに返そう?」

「そうですよ、とりあえず早く返して」


ミンギュは扉から離れて、ジョンハン達のいるベッドまで一直線に進んでくる。
そして強引にジョンハンの腕を引っ張って、ジョシュアから引き剥がすように無理矢理立たせる。


「や!いたっ…」

「ジョンハナ、言うこと聞けって」


力が抜けてうまく立ち上がれないジョンハンをミンギュは軽々と持ち上げて、腕の中に収めた。
そのままベッドの端で落ちそうになっていたパーカーを拾い上げて、ジョンハンに被せる。
ジョシュアは、視線をさらに鋭くさせてミンギュを睨んで、ベッドから降りるとミンギュの腕を掴んだ。


「恋人だからって余裕ぶってたらすぐに奪いに行くから。ジョンハニは、俺のキスも拒まなかったよ」


その言葉に、ミンギュは返事もしずにジョンハンを抱き上げたまま部屋を出て、足で扉を閉めた。

ジョンハンが部屋を出る瞬間に、小さくジョシュアの名前を呼んだことに気づいていないのはスンチョルだけ。
二人が去って静まり返った部屋で、ジョシュアは余裕の笑みを浮かべた。


「相手がミンギュで逆に良かったよ、大したことない」

「そうムキになんなよ……」

「はーつかれた。部屋帰る」

「ジョンハニ、大丈夫かな?」

「酷いことされてたら僕がぶっ殺すから大丈夫」

「怖っ…」







「お前、なにしたか分かってる?」


ジョンハンは、ミンギュの部屋に連れてこられて、息を吸う間も無くベッドに投げ飛ばされる。
ミンギュはベッドの側の机に腰を預けて、腕を組みながらジョンハンに言葉を投げつけた。


「っごめ、なさ、」

「謝ってほしいんじゃなくて、なにしたか分かってんのかって聞いてるんだけど」

「…ごめんっ、なさい、っ」

「悪いって分かってんなら最初からするなよ」


そして机から身体を離して、ベッドにいるジョンハンに乗り上げて胸ぐらを掴んだ。
ジョンハンは既に涙で頬を濡らして、目は恐怖でいっぱいだった。


「おまえな、」

「ひっ、ぃ、ごめ、なさ、」

「なにがごめんなさいなの?」

「っ…しゅあ、たちと、…その…、」

「お前あの後俺が来なかったら、そのまま二人にヤられてたの分かってる?あぁそれとも、もう既にヤってますってか」

「っ!!ちが、」

「その脇の甘さがムカつくんだけど」

「や…っきらいに、ならないで」

「嫌いどころじゃねえよ、殺してやろうか?」


ミンギュは片方の手でジョンハンの顎を掴んで、吠えるようにそう言った。
ジョンハンはボロボロと涙を零して、嗚咽を吐いた。
ひどく泣き出したジョンハンを見て、ミンギュはさらに顔を強張らせて、腹の底から怒りをぶつける。


「なんで泣くの?泣きたいのはこっちだよ」

「ぅ、ひぐっうぇ、ぁ、ぁ…っ」

「お前と同じことしてやるからな」

「!やっ、それは、やだぁっ…」

「なんでお前がよくて俺が駄目なんだよ、笑わせんな」

「〜っ、やだぁっ…ごめんなさ、っ、」

「………」

「みんぎゅだけなの、っしんじて、」

「………」

「おねがい、……」

「…なあ、俺余裕ないの分かるだろ?放っておいたら本当に取られそうなんだよ、ジョンハニは……」

「ぅ…、」

「優しくしたいの、だから他の男のとこ、行くな」

「ごめん、なさぃ…」

「不安とか、悩んでるなら、俺を頼れよ…」


ジョンハンの涙を見て、ミンギュはすっかり参ってしまったようだ。
ジョンハンから身体を離してベッドに座り込むと、ため息を吐きながら頭を掻いた。
そんなミンギュにジョンハンは飛びついて、ぎゅうぎゅうに抱きしめる。


「っみんぎゅ、」

「………」

「みんぎゅが、おれのこと好きなのか、分かんなくてっ…不安、だったの、」

「……うん、」

「それで、…その、」

「分かった、もう言うな」


ミンギュはそう言って、ジョンハンがするのと同じように抱きしめて、サラサラの髪に指を通した。
ジョンハンはそうされるのに目を細めて、ミンギュの胸に顔を押し付ける。


「(やっぱり一番大好き、、)」


ジョンハンの頭の中は一瞬でミンギュでいっぱいになる。
まるでさっきのことなんて無かったかのように、大人しくミンギュの腕に包まれるジョンハンを見て、ミンギュの怒りは静まっていったようだ。


「ジョンハナ、こっち向いて」

「ん、?…っん、ぅ、」


上を向いたジョンハンの唇を捕まえて、ミンギュはそのままベッドに押し倒した。
全部をかき消すように今日はゆっくり愛し合えればいい、そんなことを考えながら。


「今誰のこと考えてる?」

「っ、みんぎゅ、」

「いーこ」
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