野球

□雨降って、
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「宮城、今日この後俺の部屋来れる?」

夕食後そう俺に声をかけてきたのは、あの世界の大谷さん。
トイレでのプチ事件以来仲良くさせていただいているのだが、まさか部屋に呼び出しを食らうとは。
俺、何かしちゃったっけ…?
部屋に呼び出される程の事をしでかした心当たりが全くなくて、返事もせずに呆けてしまう。やっぱりタメ口と呼び捨てがまずかった…?
「あ、予定でもあった?それなら後日でもいいんだけど…」
返事をしない俺に苛立つ様子も見せず、にこりと微笑まれる。いかんいかん。偉大なる先輩を無視するなんて言語道断だ。俺は慌てて口を開いた。
「いえ、すみません!なんにも予定ないです!でも、もしかして僕何かしちゃいましたか…?」
恐る恐るそう尋ねると、大谷さんは一瞬きょとんとした顔を見せた後、クスクスと笑い出した。
少し前は俺なんか手の届かない存在だと思っていたけど、コロコロと表情を変えて話すその姿は、彼も同じ人間なんだと思わせてくれる。
おかしな感想かもしれないが、それくらい彼の成績、引いては存在そのものが雲の上の人なのだ。
「はははっ!やっぱり宮城は面白いね。そんな恐いもんじゃないから安心して?ちょっと話したいだけだから。じゃ、早速行こうか」
柔らかい表情で放たれる言葉にほっとする。よかった、この様子だと悪いことでは無さそう。
念のためいつも一緒にいる朗希に声をかけてから行こうかと考えるも、近くにその姿はない。
ちょっと話すだけみたいだし、大丈夫かな?
「ん?どうした?」
気付いたら大谷さんは俺の隣にいて、肩を引き寄せられていた。
「あ、いえ、一応朗希に声かけてから行こうかと思ったんですけど、いないからいいかなって。」
「朗希?あいつに確認しなきゃいけない感じ?」
「?確認…?そういうわけじゃないですけど、いつも一緒にいるから何となく…」
「……確認しなきゃいけない関係じゃないってことね、了解。」
そう言うと俺の肩に腕を回しながらスタスタ歩き出す大谷さん。でも、歩幅は俺に合わせてくれているようで、特に足がもつれたりはしない。
確認しなきゃいけない関係とは?と思いつつ、こんな所まで完璧なんだなぁ…と惚れ惚れしてしまう。
ぼーっとしていたらいつの間にか大谷さんの部屋に着いていた。ベッドに座るよう促され、迷った結果端に座った。すると隣にどすんと大谷さんが座るので、柔らかく沈み混んだマットレスにバランスを崩してしまい、大谷さんにもたれ掛かってしまった。
「わ…!すみませ……!??」
するともたれ掛かった勢いのままに視界が目まぐるしく変化し、気付いたら天井をバックにした大谷さんが視界いっぱいに広がっていた。
「前も言ったけど、タメ口でいいぞ?まぁ、可愛いから敬語でも良いけど…」
そう言ってくれるけど、やっぱり冗談交じりじゃないとタメ口でなんて話せないよなぁ…。いや、それよりも…
「善処します…あ…するね…?けど、大谷さん…?この状況は…?」
「ん?俺が宮城を押し倒してる。あと、この前みたいに翔平って呼んでくれないの?」
んんんんん…
それは分かるんだけど、俺が聞きたいのはなんでこんな状況になってるかってことで…。
あと、前は冗談で言っただけなんだけど翔平って呼んでほしいのちょっと可愛いな…。
若干パニクりつつ、また返事が疎かになるところだったのでなんとか返答する。
「…翔平、なんで僕のこと押し倒してるの…?」
「宮城が可愛いから、味見したくて。もし、朗希ともう恋人同士だったらさすがに申し訳ないから止めようと思ったんだけど、やっぱり違うみたいだしね。」
味見?朗希と恋人??何を言ってるんだこの人は???
理解が追い付かない俺を置き去りにして、大谷さんは俺の耳元に顔を寄せてきた。
「ぅあっ!?」
耳の縁を舐められ、思わず大きい声が出てしまう。
「耳弱い?」
そう吐息混じりに耳元で囁かれ、ぞわぞわとした感覚が脳を支配する。なに、これ…?
そのまま大谷さんは信じられないことに、耳の穴に舌を捩じ込んできた。
「ひぁあ!ぁ、おーたにさ、何して…んんっ!!」
「しょ・う・へ・い。…まだ、慣れるのに時間掛かるかな?」
耳元で囁くように喋られながらも、合間に大谷さんの舌が耳を這い回り思考が侵される。
「ぁ、しょうへい、も、やめ、んぁっ!?」
耳に気を取られている間に服の中に手を入れられていたようで、胸の突起をきゅうと摘ままれまた変な声が出る。
「ははっ、宮城、敏感だな。これは楽しめそうだ…」
そう熱を帯びた声で呟いた大谷さんは、耳、首筋、胸と自分でも知らなかった敏感なポイントを的確に、絶妙な舌使いと手付きで責めてくる。
「ぅあ、しょーへ、ふぁ、も、やぁ…っ!」
気持ち悪い声が抑えられず、最初は口で手を覆っていたのだが「だめ、もったいない。」と優しく、しかし有無を言わさ
ぬ力で両手を拘束されてしまい、ひっきりなしに上がる声が止められない。
自身から発されているとは信じたくないような声を聞きながら、こんなテクニックまであるなんて本当に超人だな…とぼんやりした頭で場違いなことを考えていた。
ひとしきり弄り尽くされぐったりと力が入らなくなった頃、大谷さんはいつものいたずらっ子みたいな笑顔とは違う、色っぽい微笑みを湛えながら問いかけてきた。
「ね、宮城。もっと気持ちよくしてあげるから、ここ、触っても良い?」
するり、と既に反応しきってしまってる股間に手を滑らされる。あの大谷さんが自分のそんなところに触れているなんて信じられないしなんだか申し訳ないが、その大谷さんの手によって高められた自身をどうにかしてほしい気持ちもあり、ついこくりと頷いてしまった。
「うん、素直で可愛い。」
ちゅ、と額にキスを落とされ、ゆっくりとズボンを脱がされる。流されるままこんな状況になってしまっているが、本当にこのまま先に進んでいいのだろうか。
急に恐くなり、力を振り絞って大谷さんの厚い胸を押すも、びくともしない。
「ん?どうした?恐くなっちゃった?」
そんな俺の考えもお見通しなようで、ズバリの発言に再びこくこくと首を縦に振る。先輩に対して首で返事をするなんて失礼だが、それどころではなかった。
「でも、宮城もここ、辛いだろ?大丈夫。一回出したらそれで終わりだから。な?」
すりすりとそこを撫でられながら諭すように言われ、熱で浮かされたかのように何も考えられなくなってしまう。
もういいや、どうにでもなれ…と半ば諦める気持ちで、またしても首を縦に振ってしまった。
「ぁ、あ、っ」
ぐちぐちと聞くに耐えない音が下半身から鳴り止まない。あれから俺は、大谷さんに抱えられる形で後ろからすっぽりと抱きすくめられ、身体中をまさぐられていた。
大きな手で竿を扱かれながら胸の突起を弄られると、目の前にバチバチと火花が散るような刺激が襲い、頭が真っ白になる。
「ぁ、しょーへぇ、もぅ、でちゃうっ、ぁ、あぁ…っ!……へぇ?なんでぇ…?」
おおたにさん、と呼ぶ度にしょうへい、と訂正されるので名前呼びにもだいぶ慣れてきてしまった。
もう少しでイける所だったのに、急にぴたりと手の動きを止められ思わず不満の声が漏れてしまう。
息も絶え絶えで後ろを振り返ると、意地悪な顔をした大谷さんが俺を見下ろしていた。
「んー、一回だけって約束しちゃったから、出したら終わっちゃうだろ?可愛い宮城をもう少し味わいたくて。だから、あともうちょっと付き合って?」
「そんなぁ……あっ!…んんッ!」
無慈悲なお願いに絶望を感じる間もなく、再び大谷さんから与えられる刺激に溺れてしまう。
「ぁー…っしょーへ、もぉ、むぃ、イきたいぃ……んぁあ…っ…も、イかせてぇ……?」
それから何度も寸止めされて、いい加減辛いし身体の中に渦巻く熱のせいで訳が分からなくなってきたため、気付いたら恥も外聞もなく懇願していた。
「そうだなぁ…俺としてはもっと宮城のやらしいとこ見てたいけど……上手におねだりできたから、イかせてあげる。」
そう言うと、大谷さんは強めに俺のモノを握り込み、激しく上下に扱き始めた。これまでゆるゆるとした刺激が続いていたため、急な強い快感に腰が跳ねるのが抑えられない。
「ぁ、んあァっ!あ〜…ッ!はぁ、イっちゃぅ、イ……ッッ!!」
これまで蓄積されてきた快楽が一気に弾けた衝撃に、俺の意識は一瞬で落ちてしまった。



「…宮城?おーい……?」
宮城の頬をぺちぺちと軽く叩くも、ぴくりとも動かない。後ろから覗き込むと、口を薄く開きぐったりと目を閉じていた。
どうやら、気を失ってしまったようだ。宮城を抱え、そっとベッドに横たえる。
うーん、やりすぎたか…。でも、想像の何倍も可愛かったな。味見と言ったけど、このまま俺のものにしたくなってしまう。
しかし、自分では気が付いていないようだが宮城には想い人がいる。相手は彼と同い年の令和の怪物、佐々木朗希。そして彼も、宮城をそういう意味で好いている。
少し分かりづらい宮城はともかく、朗希が宮城のことを好きなのは行動などから丸分かりなのだが、なんせお互い自分に向けられる好意には鈍感なようで、友達以上にベタベタしているところはよく見るも、そこから一向に進展する気配がなく、もどかしいったらありゃしない。
宮城が可愛くてつい自分も美味しい思いをするやり方を取ってしまったが、これで嫌でも彼らの関係は変わるだろう。
ブー……ブー……
どこかで振動音が鳴り続けている。
俺の携帯とは違う振動パターンなので、おそらく宮城の携帯からだろう。宮城のズボンのポケットから携帯を発見し取り出すと、画面は目当ての人物からの着信を知らせていた。
「もしもし?」
『宮城!やっと出た!……って、どちらさまですか……?』
「大谷です。宮城は俺の部屋で寝てるけど、どうする?」
『…大谷さん?…大谷さんの部屋で?なんでですか…?』
「ふふ、なんでだろうね。このまま朝まで寝かせておいても、俺は全然いいんだけど。」
宮城の携帯だがしれっと電話に出て、挑発するように仕掛けてみる。すると、朗希は簡単に乗ってきた。
『……いえ、申し訳ないのですぐ迎えに行きます。では。』
ブツッと通話が切られる。抑えてはいたが、電話越しでもかなり苛立っているのが分かった。
眠る宮城の髪をさらりと持ち上げながら、彼の想い人の到着を待つ。
「…がんばれよ。」
芽吹き始めた独占欲にそっと蓋をし、しばしの静寂が訪れた部屋で一人呟いた声は、誰にも聞かれることはなかった。
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