杜若

□肆話
2ページ/4ページ



総司と手合わせをした後、ふらふらと歩いている時だった

玄関で左之さんと新八っつぁんの姿が見えた



千歳「ねぇ」



と声をかけてみた



永倉「ぬあっ!?」

千歳「ぷっ…(笑)」



新八っつぁんの反応が面白い…



永倉「な、なんだ千歳か…」

千歳「何?何か後ろめたい所にでも行くの?」

永倉「後ろめたくねぇって!」



慌てる新八さんは無視して俺は原田さんに問う



千歳「それで、左之さん、どこに行くの?」

原田「俺らはこれから島原に行くとこだ」

千歳「………島原って。ま、左之さんはお酒が目当てだろうけど、新八っつぁんは…」



と、変な眼差しを送る



永倉「お、おい千歳、そんな目で見るな」

千歳「でも、こんな昼間から行くの?」

原田「ま、男の浪漫ってやつなんじゃねぇの?」

永倉「そうだぞ?千歳、おまえだって男だ。この気持ち分かるだろ?」

千歳「……まぁ」



いや、分かんないなぁ



原田「どうだ?千歳も行くか?」


千歳「あ、いや…さすがに昼間からお酒は遠慮しとく」



話をしていると、平助がやってきた



平助「あれ、千歳じゃん。千歳も一緒に行くの?」

千歳「いや、俺は…」

原田「千歳が女の格好したら絶対似合うよな」



急に左之さんはそんなことを言い出した



永倉「あー、確かに!おまえ可愛い顔してるしな!」

千歳「は、はい!?」

平助「千歳、いつか女の格好してくれよ!な?」

千歳「え!?」

原田「おまえが女の格好してくれるんなら、それだけで充分に目の保養になるしな」

千歳「いや、あの…」

原田「約束だぞ、千歳。いつか女の格好してくれな。忘れるなよ?」

千歳「だから、何で勝手に…」



話が進んでるんですか!?



原田「千歳。土産、何か買ってきてやるから。おまえ、何が食べたい?」

千歳「え……あ、じゃあ団子がいい。みたらし団子」


左之さんは淡く笑い、わかった、と頷いた
俺が3人を見送ろうとした、その時



井上「おや、これから皆で出かけるのかい?」



そこには源さんがいた



原田「う……よりによって源さんかよ…!」



やっぱり後ろめたいんだ…
皆浮き足立っているのがよくわかるよ



平助「ほら、あれだよ、源さん、あれ!み、皆で素振りでもするかなぁって!!」



新八さんも大きく頷く



永倉「そう、それだ平助、よく言った!今日は天気も良いし風が暖かいからな!」



え、むしろ寒いんですけど



井上「いやはや、永倉君たちは勤勉だなぁ。折角の機会だ、私もつきあわせてくれるかい?」



「「「……………」」」



3人とも唖然
まさか源さんがそう言うとは思わなかったんだろう



千歳「皆、御愁傷様で」

「「「…………」」」

平助「あ、ごめん!オレも皆と素振りしたいけど、今日は先約があるから付き合えないんだった!」



先約なんて無いけどね



平助「千歳と一緒に甘味屋に行く約束してんだ!な、千歳!」

千歳「え…そうだっk「な!!そうだよな!?」

千歳「う、うん……」



子犬のような眼差しで、違うと言えなかった



永倉「待て平助、ひとりだけ逃げようなんざ…」

原田「千歳、俺も付き合ってやるよ。千歳も頑張ってるからな。息抜きさせてやりてぇし」

千歳「左之さん…」



なんだか感動する…



井上「そうか、そうか。原田君の言うことはもっともだ。彼のことはお任せするよ。じゃあ永倉君、我々は中庭に行こうか」

永倉「平助のみならず、おまえもか左之…!」



新八さんの握りしめられたこぶしが、ぷるぷると震えている



原田「よし、逃げるぞ」

千歳「おぅ」

平助「新八っつぁん、すぐ怒るからなー」

千歳「巻き込まれるのは勘弁だな」



左之さんに肩を押され、平助に手を引かれ、俺達は玄関から逃走した
後ろから新八さんの怒鳴り声が聞こえたけど、俺達は笑っていた

そのあと、新八さんと源さんは真面目に素振りの練習をしたらしい



千歳「ねぇ原田さん、結局団子買ってきてくれないの?」

原田「あ…いや、近いうちに買ってきてやるよ」



千歳の上目遣いに原田は弱かった



千歳「やったー!じゃあ、今度は一緒に行こうよ!」

原田「あぁ、そうだな」



原田さんは優しく千歳の頭に手をポンッと置いた
俺はこうやってもらうのが好きだ



千歳「左之さんてお父さんみたいだよねぇ」

原田「そうか?」

千歳「うん。安心する」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ