杜若
□参話
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「…ん?」
…朝?
「ええと…」
しばらくしてすぐ、少女は昨日のことを思い出した
「全部、悪い夢なら良かったのに…私、どうなるんだろう…」
少女がため息を吐いた時
ゆっくりとふすまが開いて、人の良さそうなおじさんが顔を出した
井上「ああ、目が覚めたかい」
優しそうなその人は井上と名乗った
そして、走ってくる音
千歳「ちょっと源さーん!先に行くなんてひどいよ!俺も行くって言ったのに…」
ふてくされたように、子供のように頬を膨らましたその人は、昨日二度も窮地から救って下さった方
井上「ああ、ごめんよ。なかなか千歳君が来なかったからね」
千歳「まぁ源さんなら許すけど」
千歳と呼ばれたその人は私に視線を移した
千歳「起きたんだね、おはよ。調子はどう?」
「あ、はい…大丈夫です」
そっか、と千歳さんは微笑んだ
井上「すまんなぁ、こんな扱いで…今、縄を緩めるから少し待ってくれ」
「え…?」
井上さんは苦笑を浮かべながら、私をぐるぐる巻きにした縄を解いてくれる
手を縛る縄までは解いてくれなかったけれど
「えと、あの、ありがとうございます」
井上「ちょっと来てくれるかい」
「え?」
千歳「今朝から幹部連中で、君について話し合ってるんだけど…君が何を見たのか、確かめておきたいってことになったんだ」
「…わかりました」
私は頷くと、よろけそうになった
その時、千歳さんがそっと支えてくれた
千歳「大丈夫?」
ニコッとしながら言った
「あ…ありがとうございます//」
千歳さんは、どういたしまして、と言って離した
井上「心配しなくても大丈夫さ。なりは怖いが、気のいい奴らだよ」
「はぁ…」
ーーー
幹部のいる部屋に行く途中、千歳さんに話し掛けられた
千歳「そういえば名前まだ言ってなかったね。俺、千歳っていうんだ。よろしく」
「あ、はい!よろしくお願いします。私の名前は」
千歳「あー、いいよ。どうせ幹部連中にも自己紹介するんだし、その時に一緒に聞くから」
「は、はい。わかりました」
千歳「……………」
千歳さんが突然、真剣な眼差しで私を見つめる
その視線が何故か恥ずかしくて、私は顔が熱くなるのを感じながら聞いた
「あ、あの…どうかしました?」
千歳「ん?あ、いや、なんでもないよ」
そう言って千歳さんはいつもみたいなニコニコした表情に戻った