黒薔薇

□第三話
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「あーー〜、やられてら。電線パスタは相当お気に召したらしいな、ネズミ共め」

「またネズミですだが?」

「今年は多いねえ」

「ロンドンで異常発生してるって話ァ聞いてたが、まさかこんな郊外まで足を伸ばしてやがるとはなぁ。こんなしょっちゅう停電させられてたんじゃあ商売あがったりだぜ」



そう言って天井裏から降りてくるバルド
どうやら屋敷ではネズミが発生しているらしい



「あっ!ネズミ見っけ!!
えいっ!!」



ネズミを見つけたフィニは近くの像を掴み振り下ろす



「あっ。逃げられちゃいました!てへっ☆」

「てへっ☆じゃねェ!!オレのことも殺す気かッ バッキャロー!!
とにかくあいつらに正面から挑んでもムダだ!頭を使うんだ」

「「頭…?」」

「頭をしぼって敵の行動パターンを読むんだ。突撃ばかりが戦じゃねぇ。そう、陽動作戦(ダイヴァージョン)だ!オレの作戦はこれだ!」



すると何処からか鍋を出す



「大量発生したせいでヤツらは今食糧難とみた。戦場での空腹程ツラいもんはねェ。そこでこれだ!題して“バルドシェフの手料理ネズミ☆まっしぐら”作戦!!!」



鍋には不気味な液体が溢れていた



「まっ、これが玄人(プロフェッショナル)ってもんよ!」

「じゃあ僕は“永遠の宿敵対決トメとジュリー大作戦”ですッ」

「ま、負けないですだよ!!こっちは“一度掴んだら離さないネズミホイホイ大作戦”ですだ!!」

「よーーーしそれじゃあ作戦開始だーーっ」


ーーー


「随分と騒がしいな」



バルド達の騒ぎはある一室に集まっていた者達にフツーに聞こえていた



「どうやらココにも鼠がいるようだ」



薄暗い中ビリヤードをしているのは、上から下まで年齢層が幅広い男女



「食料を食い漁り、疫病ばかりふりまく害獣をいつまでのさばらせておく気だ?」

「のさばらせる?彼らは泳がせているのでは?」

「そう。彼らはいつだって一撃必殺狙い。次もパスなの?」



真っ赤なドレスに身を包む美女は、少女と共にソファに腰掛けている少年を見た。



「ファントムハイヴ伯爵」

「パスだ。打っても仕方ない球は打たない主義でね」

「御託はいい。鼠の駆除はいつになる?」

「すぐにでも。すでに材料はクラウスに揃えてもらった」



カンッ、と球を打つ音が部屋に響く



『巣を見つけて鼠を根絶やしにするには、少々骨が折れる。それなりの報酬は覚悟して頂こうか』

「……ハゲタカめ…っ」



シエル、スズカの目が細められた



「貴殿に我が紋を侮辱する権利が?」

『鼠一匹しとめられない猟犬ばかりに大枚をはたいている貴方に』



ぐ…と押し黙っる男



「残念、ファールだ。ビリヤードは難しいな」

「次は伯爵か。どうする?」

「そろそろこの下らないゲームも終わりにするか」



立ち上がると、シエルは男の横を過ぎざまに問うた



「それで?報酬はいつ用意できる?」

「…こ…今晩には」

「いいだろう。後で迎えの馬車を送る。ハイティーを用意してお待ちしよう、サー」



ぎりっ、と男は歯を食いしばった



「残り3球からナインボールを狙うのかい?」

『当然だろう。シエルを誰だと思っている』

「フ…ゲームの天才のお手並み拝見といこうじゃないか」



愉快そうに笑みを浮かべる周りと比べ、その男は顔を歪めていた



「強欲は身を滅ぼすぞ、シエル!スズカ!」



目を丸くしていたスズカは、シエルと同時には、と吐き出すように笑った



「『強欲ねぇ…』」



球と球がぶつかり合って、ナインボールはガコン…と穴に落ちた
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