黒薔薇

□第四話
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執事の朝は早い。夜は誰より遅く仕事を終え、朝は誰より早く仕事を始める。それが屋敷を一切仕切る執事の勤めである



「随分髪が伸びてきましたねぇ……嗚呼、勝手に縮めてはいけないんでした」



鏡の前でセバスチャンは髪を整える



「人間というのはどうにも面倒だ」



燕尾服を羽織って、セバスチャンは部屋を出た



「さて、参りますか」



まず始めに使用人に一日の仕事の指示を出す



「お早うございます皆さん。そろそろ始業時間ですよ」



キッチンに行くとお馴染みの三人がすでに集まっていた。バルドは寝ぼけているが



「メイリンはリネンの整備を。フィニは庭の木の手入れを。バルドは昼食の準備をお願いします。タナカさんはお茶でも飲んでて下さい」



パンパン!とセバスチャンは急かすように手をたたいた



「さ、分かったら早く持ち場へ行きなさい!ボサッとしない!」



使用人達を送り出したら、次は当主とお嬢様の起床に備えてアーリーモーニングティーと朝食の準備を



「失礼します」



コンコンッ、とノックをしてセバスチャンは中へと入る



「坊ちゃんお早うございます。お目覚めの時間です」



窓際まで来ると薄暗い部屋に明かりを入れるためカーテンを開ける



「本日は良いお天気ですよ」



眩しそうにシエルは目を開けていた



「……」



我が屋敷の主人、シエル・ファントムハイヴ伯爵は12歳にして広大な領地を治める当主である



『ぅ……』



シエルの隣で起きた人物にセバスチャンは困ったようにため息



「お嬢様。また勝手に坊ちゃんのベッドで」

『仕方ないだろ。寝れなかったんだから』



坊ちゃんの姉君に在られるスズカ・ファントムハイヴ嬢は、坊ちゃんとの血の繋がりはございませんが大変仲がよろしい。それはもう本当に

お二人はそれぞれ玩具・製菓メーカー「ファントム社」の社長と副社長としての顔も持ち、狡賢い……失礼、才能溢れる経営方法であっという間に「ファントム社」を巨大企業に成長させた。



「今日はアッサムか」

「流石でございますね坊ちゃん。アッサムで良い茶葉が仕上がったと耳に挟みましたので現地から取り寄せました」



二人はセバスチャンからカップを受け取る



「そういえばバートン伯の養護院の子供達を屋敷に招くことになった」



貴族の富は社会に貢献する為にある。その有り余る財を使い民に施しを行うのだ。名門たるファントムハイヴ家も、例外なく社会への奉仕活動を行っている



「それは良いお考えですね。何日になさるのです?」

「『明日』」



明 日 ?



『親に何か買わせたいなら子供からと言うしな』

「だな」



このガ…坊ちゃん、お嬢様。私にまかせておけば何でもかんでも何とかなると思ってませんか?いい加減人(?)使いが荒すぎます



「了解致しました」



心の声は心の内にしまっておき、セバスチャンはニコッと笑い一礼



「どんな小さなお客様にも、ファントムハイヴの名に恥じぬ最高のおもてなしを」


ーーー


「そうそう…先日お嬢様が注文した、ヘレンドのシノワズリーのティーセットが届きましたよ」



シエルの身支度をしながら敷居の向こうで着替えていたスズカにセバスチャンは言う



『随分と早かったな』

「ですから、本日のアフタヌーンティーはキーマン茶に。ベリーも入ってきましたので、おやつはカラントとベリーでサマープディングにしようと思うのですが、いかがですか?」

「かまわん」

『同じく』

「了解致しました」



スズカの髪をとかしてサイドを編み上げると、セバスチャンはリボンを飾った



「では、私は早速明日の準備に取りかかります」

「『ん』」



さて、ここからが私の仕事の本番です
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