絆の軌跡〜過去と未来の交錯〜

□巻之拾壱 残された秘宝
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伍拾伍 調査結果

西暦7000年 海岸上空 sideシルク

今日の調査は失敗に終わったわね……、表面上は……。

[時の歯車]は無くなっていたけど、確信できた事が1つあるわ。

あのシャドウさん、あの人は[未来]のポケモンで間違いないわ。

世間に知れ渡ってからたった2日の事件を、それに関わっている場所を見事に的中させたのだから……。

広大なエリアから絞り出したとなると、尚更……。

ピンポイントに的中させたとなると、随分前から知っていたとしか考えられない。

「シルク、そろそろ着くよ〜!」
「えっ!?もうそんなに近くまで来たの!?」

私を乗せて飛んでいる[ウォグル]のウォルタ君が、横目で私を見て言ったわ。

朱く輝く夕日を背にし、飾り羽根を(なび)かせる………。

空の朱に羽毛の紺が映えているわ……。

「うん!!あと五分ぐらいで着くよ〜!」
「わかったわ。引き続きお願いね!」

私も、彼には見えないけど笑顔で応えた。

「シルク、姿を元に戻したいから海岸でいい〜?」
「ええ、構わないわ。」

だって、私とフライ、ハク、シリウス、シロさん以外は知らないからね。

「うん。」

ウォルタ君は翼に力を込めて加速した。

宵の西風が私の尻尾を靡かせる……。

私の短い毛並みを撫でる風が心地いいわ……。

私が風の囁きを楽しんでいると、ウォルタ君が高度を落とし始めた。

……着いたのね。

「シルク、着いたよ〜!」
「ウォルタ君、ありがとね。」

私は彼の背中から飛び降りた。

ウォルタ君の[ウォーグル]は平均より大きいから、こういう事ができたのかもしれないわね。

「じゃあ、ちょっと待ってて〜。」
「ええ。ゆっくりでいいわよ。」

私の言葉を聞くと、すぐに光を纏ったわ。

次第に彼を包み込み、普段の姿を形成する……。

私のトレーナーとウォルタ君が言うには、変化する時は何の痛みもないらしいわ。

「………お待たせ〜!」
「ウォルタ君、もう慣れたものね!」

変化には1秒もかかってないわ。………私の体内時計でだけど……。

「うん。バトルでも使えるぐらいだからね〜。じゃあ、行こっか〜!」

私達は顔を見あわせて頷きあい、交差点への坂道へと歩き始めた。


………

数分後 sideフライ

「……ハァ、ハァ、何とか……、間にあった……。」
「僕も、エネルギー切れを起こしそうだったよ……。」

ボク達は、間一髪、絶体絶命の危機から免れれた……。

あんなに速く飛んだのは……初めてだよ……。

いつ以来だろう……、息が切れたのは……。

「フライ、ラテも、おかげで助かったよ!」

ベリーちゃんが、安堵の表情を浮かべた。

「……きっと明日は筋肉痛に襲われるだろうなー。」

ボクは笑いを含めて言った。

「………ところで、ここはどこなのですか?」

若干砂が付いた[エムリット]のアルタイルさんが、辺りを見渡しながら言った。

「ここは僕達が拠点にしている[トレジャータウン]近くの海岸です。」
「わたし達はここのギルドで探検隊をしているんだよ!」
「………ボクは探検隊ではないんですけどね。」
「あなた達は探検隊だったのですか……。」

アルタイルさんが、へぇーっていう感じて呟いた。

「はい。だから、もう安心ですよ!」

ラテ君は明るい声で言った。


ボク達はこの後、保護したアルタイルさんと共に活動拠点のギルドに向かった。

………

ギルド sideシルク

「……そうですか……。もうなかったという事ですね………♪」

私はギルドに戻ると、いち早くフラットさんに報告……。

表面上は失敗……。でも、重要な情報を知れたわ。

「シルク達も失敗やったんやね……?」
「えっ? っていう事は、ハク達も〜?」

ハクが、彼女にしては珍しく暗めの声で言ったわ……。

「……はい。自分達のほうは既に[時]が止まってました……。」
「私達のほうもよ……。」

ハク達も、失敗だったのね……………。

ブラウンさん達も失敗だったらしいわ………。

あとはフライ達だけね……。

絶対に言葉には出せないけど、グラスさん達は順調のようね……。

………今思ったけど、私の立場は一体……。

「ポケモン発見!」
「誰の脚型?」

ここで、いつものヘルツさんとホール君の見張りの声……

「脚型はフライさん!」
「ということは、ラテ達も一緒だな?」
「はい。ベリーも一緒です。」
「あと1人、保護した人がいるんだけど、いいかな?」

見張りの穴の中から、2人の声が響いたわ。

「わかった。とりあえず入ってこい。」

これもいつものやりとり……。

少しすると、ラテ君、ベリーちゃん、フライの順に降りてき……!?

えっ!?どうして[エムリット]が!?

「やっぱり、僕達が最後だったね。」
「うん。でも門限までに間に合ってよかったよ。」

「[穴抜けの玉]が無かったら間に合わなかっただろうね。」「ここが、ギルドですか?」

ラテ君、ベリーちゃん、フライの順に言った。

「フライ?[エムリット]の彼女は誰なのかしら?」

私はフライに疑問をぶつけたわ。

でも、どうして伝説のポケモンの彼女がここに……。

「初めから言うと、[北の砂漠]から更に先にあるダンジョンを抜けた先にある[地底の湖]で出逢ったんだよ。」
「そこには[時の歯車]があったんだけど、わたし達の目の前で盗まれちゃって………。」

ベリーちゃんが消え入りそうな声で言った。

「………つまり、捕まえる事も護る事も失敗……」
「この人達を攻めないでください!私が勘違いしたからこんな事になってしまったんです!……」

フラットさんの言葉を遮って、[エムリット]の彼女が言葉を強めて言った。

……何かあったのね……。

「私の勘違いで、この人達と闘っている間に、本物の盗賊に[縛り玉]を使われて身動きがとれなかったんです………。その後、[フライゴン]の彼に乗せてもらって命かながら逃れてきたんです………。」

彼女が深刻な表情で言った。

「そんな事があったんですね……♪」
「でも、[エーフィー]のあなたは、どうして私の種族がわかったのですか?」

彼女が不信そうに私を見て聞いたわ。

………無理ないわね。

「[フライゴン]の彼もそうなんだけど、私達は5000年前のポケモンなのよ。私達は元の時代で伝説とかを調べていた関係で、あなたの種族とか、ベガさんみたいな伝説の種族を知っているのよ。ちなみに、あなたの種族は、ある地方では[感情]の神として崇められているわ。」

「えっ!?[過去]の!?それに、私の種族なのに知らなかった……。」

彼女は驚きを隠せないでいるわ……。

「………やっぱり、どの時代でも伝説は関わりあっているのね……。」

今思いだしたけど、シンオウの伝説では、[エムリット]、[ユクシー]、そして[アグノム]の3匹が世界のバランスを保っていると伝わっていたわね…。

[時]を司るポケモンと密接に関わっているのも、何かの縁なのかしら?

[ユクシー]のベガさんは[時の歯車]を守っていた。

フライ達の話から推測すると、奪われたのは[時の歯車]。そしてそれを守っていたのは[エムリット]の彼女。

そして、どっちも湖にあった。

まさに、伝説そのままね。

…………ということは、残りの[時の歯車]を守っているのは[アグノム]の可能性が高いわね。

場所も、きっとどこかの湖……。

……伝説通りだと、確実ね。
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