絆の軌跡〜過去と未来の交錯〜

□巻之拾泗 エピローグ
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八拾 過去への帰還

二週間後 sideシルク

[磯の洞窟]に戻って、ギルトに着いた頃にはもう日付が変わって朝になっていたわ。

戦いで負った怪我の事だけど、私は特に外傷はなかったわ。

フライは完治するのに一週間ぐらいかかったけど、後遺症もなく、無事、回復したわ。

ラテ君、ベリーちゃん、ウォルタ君も、疲れが溜まっていただけで、特に異常はなかったみたい。

…………あっ、忘れかけていたけど、フラットさんは翼の骨折だけで済んだわ。

………フラットさんが私達の中で一番重傷かもしれないわね。




体力が回復してからは、ウォルタ君への情報の引き継ぎとか、銀行の口座の解約とかをしたわ。

私達が稼いだお金とか、道具はお世話になった人達に差し上げたわ。



そして、昨日はラテ君とベリーちゃん、ウォルタ君、ハク、シリウスと一緒に温泉旅行に行ってきたの。


たのしかったけど、唯一心残りなのが、チェリーとは来れなかった事ね…………。


そして、とうとう来てしまった今日………。

………私達が2000年代に帰る日……。



昼前のトレジャータウン、ギルト、街中の人達が押し寄せているわ。


「…………もう、帰っちゃうんやね………。」

ハクがしんみりとした声で言った。

「ええ………。これは避けられないから、仕方ないわ……。」
「…淋しくなりますね………。」
「………うん。………フラットさん、見知らぬボク達を快く泊めていただいてありがとうございました。」
「本当に、感謝してるわ。」

私達はフラットさんのほうを見て、感謝の辞を述べた。

フラットさん、私達、寝泊まりする場所が無かったから本当に助かったわ。

「シルクさん、フラットさん、行かないでくださいー♪!!」

フラットさん、気持ちは分かるけど、そこまで泣きじゃくらなくでも……。

「シリウス、本当にありがとね。もう会えなくなるけど、同じ[過去]の出身として………元気で………。」
「シルクさんにフライさんも、体調には気をつけて。」
「ええ。シリウスも。」

シリウス、元気で………。

「ハク、あなたと語り合った時間(とき)、私にとって大切な宝物になったわ。」
「シルク、ウチもやよ! 会えなくなるけど、いつまでも友達やからね!」
「もちろんよ!!ハク、あなたは私にとって大切な親友よ!!」

ハクと私は堅く握手を交わした。

初めて会った時は驚いたけど、今ではいい思い出よ!!

「ウォルタ君、ボク達がいなくても、君はもう立派な考古学者だよ!思い出が沢山あって、語りきれないよ。」
「うん。シルク、フライ、2人に会えなかったら、きっと今のぼくは無かったと思うよ〜。それに、ぼくの[夢]を叶えてくれて、ありがとう。感謝してもしきれないよ〜!」

ウォルタ君…………、私も語り尽くせないわ!

あなたの[真実]を、最後まで貫き通してね………。

「ベリーちゃん、ハクもだけど、私達にとってはムードメーカー的存在だったわ。一緒にいて、私まで明るくなれたわ。」
「シルク、フライ。わたしがここまで、バトルでも精神的にも強くなれたのも、2人のお陰だよ!元の時代に帰っても、絶対に忘れないでね!!」
「もちろんだよ!ベリーちゃんのことも、みんなの事も、絶対に忘れないよ!」

ベリーちゃん、初めて会った時に比べて、本当に成長したと思うわ。

最初はどこか頼りない感じだったけど、いまでは凄くたくましいわよ。

臆病だって言ってたけど、私はそうは思わないわ。

だって、[霧の湖]、[幻の大地]でも強大な相手にも屈せずに戦っていたもの。

「そしてラテ君、あの日、あの時、あの場所で2人に会ってなかったら、こんなに楽しい思い出は無かったとおもうわ。物事に常に真剣に取り組む姿、凄く格好良かったわよ。日に日に強くなっていって、こっちも嬉しくなったわ。」
「僕も、同じ気持ちだよ! 会って二日目にした[約束]、そして僕の事も突き止めてくれたし、どうやって言葉にしたらいいんだろう……。とにかく、これだけは言うよ。この時代に来てくれて、ありがとう。」

ラテ君との約束、ラテ君自身の正体を調べて、彼に伝えること……。

これがまさか世界を救う事になるなんて、全く想像できなかったわ!

…………いろんな事を思い出して、語りきれないわ!!

この時代にいた2ヶ月と少しの時間、長くて短かったわ………。

ラテ君達と初めて出会った日が、つい昨日のように感じられるし、もう何年も前にも感じられるわ………。

「…………最後に、感謝の想いを込めて、私達から贈り物をしたいわ。」

そう言って、私は側に置いていた紙袋を探った。

「贈り物〜?」
「うん。種族に合わせて、アクセサリーを準備したんだよ。」
「ハク、ベリーちゃん、あなた達にはイヤリングを渡したいわ。」

袋から青い結晶の付いたそれをとりだした。

「綺麗……。」「シルク、フライ、ありがとう!ウチ、大切にするよ!」

喜んでくれて、よかったわ。

「ラテ君とウォルタ君とシリウスにはリングを。原料は同じだよ。」
「指にも、耳にも着けれるようにしたわ。」

「ありがとうございます。」「じゃあ僕は耳に着けるよ。」「ありがとう。でも青い石って見たこと無いけど、何で出来てるの〜?」

ウォルタ君は耳に着けながら不思議そうに聞いた。

「[時鉉石]と言ってね、特殊な鉱石なんだよ。」
「この鉱石で[時の歯車]が造られるみたいなのよ。採れる場所は…………ランクで言うとプラチナ以上だから、伏せておくわね。知りたかったらシードさんに聞いて。」

実は、[光の雲海]を進んでる時、小さい欠片をちょっとだけ採取したのよ。

このためにね。

「[時の歯車]と………。」

ちなみに、私達の分もしっかりあるわ。

私がイヤリングで、フライはリング。

私は左耳に、フライは右手の指に今朝、着けたわ。

「そうよ。…………じゃあ、そろそろいくよ……。シードさん、お願いします。」

意を決して、フライはずっと側にいたシードさんに話しかけた。

「「いままで、ありがとうございました。」」

私達は声を揃えて、一礼。

………別れが、辛いわ………。

でも、決めたんだから………笑顔で帰ると………。

私はもう会えない大切な7000年代での仲間の顔をしっかりと目に焼き付けた。

そして、心の底からの笑顔を見せる。

「じゃあ、いきますよ………。[時渡り]!」

時代に私とフライ、シードさんは光に包まれた。

すぐにそれは中心に収束し、そこに、私達の姿はもう無かった。




…………みんな、元気で………。

………そして、さよなら……………。

















………

西暦20XX年 sideシルク

「……………シルクさん、フライさん、着きましたよ。」
「……戻ってきたのね………、私達。」
「うん。なんだか実感が湧かないよ……。」

光が収まると、私達は森の中………、そう、この時代で姿を消した場所にいた。

「それもそうですよね。僕がここで[時渡り]を発動させた1時間後にタイムスリップしましたから。」
「一時間後か………。……そういえば、あの時どうして傷だらけで負われていたのですか?」

フライが、ふと思い出してシードさんに聞いた。

「それはですね、…………」

ここから、彼の話が始まったわ。










………こうして、私達の[未来]での物語は幕を閉じたわ。



      fin………………?
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