絆の軌跡〜過去と未来の交錯〜

□巻之拾壱 残された秘宝
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伍拾六 水晶

西暦7000年 ギルドB2F sideラテ

「………つまり、皆さんの調査は失敗という事ですね…。」

僕達の結果を聞いて、シャドウさんは残念そうに言った。

確かに、僕達は[時の歯車]を盗まれちゃったし、挙げ句の果てに[ジュプトル]も逃がしちゃった……。

フライのお陰で僕達とアルタイルさんは何とか助かったけど、本当に危なかったよ……。

ハクさん達とシルク達のほうは既に無かったらみたいだし……、空振り……。

「……いや、あっしにとっては成功でゲス。」

「「「「「えっ!?」」」」」

えっ!?ブラウンさん、どういう事!?凄く上機嫌だけど!?

「どういう事なん!?ブラウンさん?」

僕と同じで、ハクさんが驚いて聞いた。

「洞窟があまりに綺麗で、あった水晶のうちの1つを持って帰ってきたでゲス。」
「いつの間に……」

そう言ってブラウンさんは鞄から透明な鉱石を取り出した。

うん、本当に綺麗だね。

「……ブラウンさん、少しその水晶をお借りしても宜しいですか?ラテさん、その水晶に触れてもらってもいいですか?」

僕が水晶に見とれていると、シャドウさんが何かを閃いた感じで聞いた。

それに………えっ?僕も?

「ダメでゲス。これはあっしの宝物にするんでゲス!」「もしかすると、[時空の叫び]が発動するかもしれません。」

[時空の………叫び]………?

………ああ、あれね!最近ないからすっかり忘れてたよ。

「「「「「[時空の叫び]?」」」」」「「[時空の叫び]……?ああー、前にシャドウさんが言ってたラテ君の特殊能力だね?」

みんなと違って、[エレキ平原]の時にいたメンバーだけが違う反応をした。

「[時空の叫び]?……数々の伝説を調査してきたけど、初めて聞いたわ。……教えてもらってもいいかしら?」

シルクがノートとペンを取りだしながら言った。

やっぱりシルク、研究熱心だね。

流石は学者って感じだよ。

「………珍しい能力です。物、人に触れるだけで[過去]、[未来]が見えるんです。」

「「「「「ええっ!?」」」」」

またみんなが驚きの声をあげた。

………無理ないよね。僕も初めて知った時はビックリしたから……。

「そっか!そういう事だね〜!もし、[水晶の洞窟]が[時の歯車]に関係があったら、その能力が発動するって事だね〜!」

ウォルタ君が、何かを閃いて声をあげた。

「………そういう事ですね?わかりました!やってみます!」

うん、これはやってみる価値があるよね!

僕は笑顔で答えた。

「ですからブラウンさん、お願いします。」

シャドウさんの声とともに、視線が一気にブラウンさんに向けられた。

「…………わかったでゲス………。」

ブラウンさんは渋々それをシャドウさんに手渡した。

「では、ラテさん、お願いします。」
「はい。」

僕はシャドウさんからそれを受けとった。

………緊張するよ………。

そんなに見つめないで………。

「…………ううっ。」

………きた。あのめまいだ……。

僕の視界は急に真っ暗になり、周りの声と音が聞こえなくなった………。



気がつくと、僕の目の前にはさっきとは別の光景が広がっていた。

湖?なのかな?

奥の方に水が広がってる………。

それに、水晶?

水色の何かが辺りから突きだしてる………。

神秘的のな光景…………。

あと、湖の前には………アルタイルさんに似たポケモンと………、[ジュプトル]!?

何でここに!?

「………悪いが、[時の歯車]はもらっていくぞ。」
「まって…………!それだけは………取ったら……………ダメだ……。」

青いポケモンはボロボロになりながら必死に訴えてる………。

まさに、[地底の湖]での光景をそのまま見ているみたいだよ………。

ここで、視界にノイズが入ってまた闇に包まれた。

そして、意識が戻るといつものギルドがそこにあった。

………さっきの場面を整理すると、水晶のある湖で[ジュプトル]がまさに[時の歯車]を盗もうとしている瞬間だった………。

「………どう?ラテ、何かわかった?」

僕の意識を戻ったのを確認すると、僕の顔を覗き込みながらベリーが聞いた。

「……うん。どっちかはわからないけど、どこかの湖でまさに[ジュプトル]がアルタイルさんに似たポケモンを倒して[時の歯車]を盗もうとしている場面でした。」

僕はありのままに説明した。

周りが騒然としたのは言わなくてもいいよね?

………

sideハク

「……している場面でした。」

ラテさん、その能力、本当なんやね……?

「……でも、もしそれが[過去]だったら………♪」

フラットさんが慌てた様子で言った。

「でも、[未来]の可能性の方が高いんじゃないかな?ウチらが調べたのは[キザキの森]、シルク達は[導きの大河]、フライ達は[北の砂漠]やんね?それに、シルクの話によると、もう一つ盗まれた場所は高所にあったみたいやし……。」

ウチが知っているのはこのくらい。

その中には[森]、[川]、[砂漠]、そして[高所]しか出て来やんかった……。

「今、盗まれている数は4つやから、ウチはラテさんが言っている事は[未来]の事やと思います。」
「そうでないと、場所と数が合わないわね。………[未来]であるのは確実ね。」

シルクも同じ考えやったのか、ウチの話を頷きながら聞いていた。

「………自分も、そう思います。」
「あと、わかったのは、[時の歯車]は[水晶の洞窟]にあるって事だね!」

ベリーさんが嬉しそうに声をあげた。

「そうなるな♪………だから、今後は[水晶の洞窟]を重点的に調べるぞ♪親方様!」
「うん!絶対に[ジュプトル]を捕まえるよー!」

「「「「「おー!」」」」」「よかった。今日は寝ずに聞いてた……♪」

ウチらはラックさんのかけ声と共に一致団結した。

フラットさんが何か言ったような気がするのは気のせいやんね?

………

sideシルク

「「「「「おー!」」」」」

ラックさんの一声のあと、かけ声があがった。

………[水晶の洞窟]ね?わかったわ。

そこで5つ目だから、もしかするとチェリーは[水晶の洞窟]でグラスさんと[ラツェル]さんと合流するつもりなのかもしれないわね。

別れ際に私だけに言ったチェリーの意味ありげな発言も気になるし、行ってみる価値がありそうね。

ウォルタ君とフライも、それぞれチェリーとグラスさんに話たいことがあるらしいから、丁度良いわね。

………探検隊のラテ君達とは目的が違うけど……。

「………あと、皆さんにどうしても話しておく事があります。」

突然、シャドウさん………、私が一番疑っている[ヨノワール]が話しはじめた。

「「話しておく事?」」

ベリーちゃんとハクが声を揃えた。

「………盗賊[ジュプトル]は[未来]からやってきたポケモンです。奴は[星の停止]を引き起こすために来ていま……」
「前から気になっているんだけど、その[未来]の世界ってどんな感じなの?」

ベリーちゃんが、恐る恐るシャドウさんに聞いた。

…………もしかすると、シャドウさんが[未来]のポケモンだという証拠が掴めるかもしれない………。

「………音もなく、風もなく、光さえもない、まさに暗黒の世界…………。[星の破滅]と言ったほうがいいでしょう………。」

シャドウさん………、奴が一言ずつ区切って語った。

……チェリーと言っている事が完全に一致している。

ようやく尻尾を掴んだわ!!

奴には尻尾なんてないけどね。

……なら、グラスさん達が危険にさらされる事になるわ!!

私は、自分の中で結論をだすと、フライとウォルタ君にこっそり目線を送った。

2人とも悟っていたらしく、小さく頷いた。

《フライ、ウォルタ君、これで繋がったわね。》

私は視線を戻しながら念じた。

「でも、どうしてシャドウさんがその事を知っとるの?」

ハクが奴の核心に迫った。

………私の立場では………。

「…………それは、私も[未来]のポケモンなんです。」

「「「「「ええーっ!!?シャドウさんが[未来]のポケモン!??」」」」」

本人もとうとう口を割ったし、命題が証明された………、数学的に言うと、【必要十分条件】になったわね!!

なら、いち早くチェリー達に知らせないと、鉢合わせする事になる!!

そのためにも、行かないといけないわ!![水晶の洞窟]に!!
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