絆の軌跡〜過去と未来の交錯〜

□巻之拾壱 残された秘宝
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六拾 終結?

西暦7000年 水晶の湖 sideハク

「シリウス!!もうすぐやよ!!」
「湖にも出たから、そのはず!」

ウチらはフラットさん達より速く、先に進む。

フラットさん達、予想以上に足遅かったから、構ってられやんよ!!

シリウスは四肢をフルに使って、ウチは苦手やけど滑空しながら。

地を這うよりは速く動けるんよ。

「「「「「「「「[金縛り]!!」」」」」」」」

丁度人影が見えてきた瞬間、いくつもの声が重なって…………!?

とっさに声のした方を見ると………えっ!!?どういう事なん!?

シルク、フライ、ウォルタ君、あと何人かが沢山の[ヤミラミ]に囲まれてる!?

「ハク!!今のって………。」
「間違いないわ!!あれは確実にシルク達に向けられてた!!シリウス、シルク達を助けるよ!!」

あのままだと、シルク達は…………、全滅してしまう!!

ウチらは、現場にたどり着いた。

「ウォルタ殿!!」「チェリー!!」「「シル………!!?」」

ウチらが、救出すべき親友達の名前を呼ぼうとすると、どこからともなく大小2つの…………えっ!!?[レシラム]に、[セレビィ]!?

なんで!?

「!!?何者だ!?」「そういうことか!![クロスフレイム]!!」「チェリー!!助けに来たよ!!」「!?…………シロ…………さんに…………、シード………さん………?」

ウチらが呆気にとられていると、[レシラム]が今まで見たこと無い規模の炎を[ヤミラミ]に向けて放った。

炎が[ヤミラミ]全員を吹き飛ばした。

「!!?」「シロ!…………助かったよ〜!!」「よし、解かれた!![穴抜けの玉]!!」「シー………ド……。」

拘束が解除された途端、誰かが[穴抜けの玉]を使って脱出した。

………シルク達が前にいて見えやんかったけど……。

「貴様等………、よくも…………。[シャドーボール]!!」「チェリー、僕達も脱出するよ!![テレポート]!!」「ウォルタ殿、シルク殿、フライ殿、無事か!?」

[セレビィ]がチェリーさんに駆け寄って、互いに手をつないだ途端、2人は光に包まれた。

シャドウさんがシルク達に………!!?

どうしてシルク達に!?

それに、あんなシャドウさん、見たこと無い!!

まるで鬼、もう訳がわからんよ!!?

「シルク……、危ない!!っっ!!」「クソッ!逃がさん!!」

シルクの前にフライが身を投げ出し…………!?シルクの代わりに技を受けた。

シャドウさんは…………えっ!!?消えた!?なんで!!?

「「「フライ!!!」」」「フラ…………イ……、あなた………は………。」

ウチとシリウスは思わず彼の名前を叫んだ。

………………一部始終を見ていたのに………、ウチらは何も出来やんかった………。

ウチらは急いでシルク達に駆け寄る。

「よかっ………た……………。シルクに………、当たらなくて………。」
「ぼくもだけど………、当たってたら……間違いなく……死んでたよ……。フライは………、大丈夫……なの……?」

それだけ言うと、フライは力なく崩れ落ちた。

3人とも、酷い怪我………。

「…………意識を……………繋ぐので…………やっとだよ………。」
「フライ…………、あなたも………、限界だった…………はずなのに………。」

シルクとフライはやっとの事で声を絞り出す。

「それより、早くも手当てをしないと!!」「回復できない………シルクが………受けたら………、取り返しが…………つかないことに…………なるから………。」

ウチはバッグからありったけの[オレンの実]を探り出す。

今すぐに手当てを………!!

彼女達も力なく横たわった。

シルクは、ウチらの存在に気づき、視線をこっちに向ける。

「シルクさん!!早く、食べてください!!」

シリウスは今までに見たことがないくらい慌ててそれを差し出す。

「………私の事は…………いいから、………フライ………、ウォルタ君………、特に…………、気を………失ってる………、ラテ君と…………、ベリーちゃんを………、優先して………。」
「でも、このままだと、シルクが………!!」

シルク、君も重傷なのに……あなたは………。

「自分は、あの2人の所に行ってきます!!!」

ウチは涙ながらに訴える。

「………残念だけど………、シルクは……、道具で………回復が………できないんだ………。」
「でも……、でも、どうして!!」

ウォルタ君が歯を食いしばって言った。

…………どうして………。

「[チカラ]の……………、[代償]だよ…………。」
「[代…………償]………?」

フライが悔しそうに言った。

「………そうよ………。ウォルタ君が………技を……二つしか…………使えないように………、私の………[絆の従者のチカラ]にも………、デメリットが…………あるのよ………。その1つが………、[回復行動の…………制約]………。……」
「………。」

ウチはあまりのことに言葉を失った。

制約って……。

「でも………、安心して。………2、3日休めば………体力は………回復するから………。」

シルクは力ない笑顔を見せた。

ウチはとうとう耐えきれず、泣き崩れた。



ギルドのメンバーが到着したのは、それから5分も後だった……。

………

2日後 ギルドB2F sideハク

あの後、大ダメージを受けて弱ったシルク、ウォルタ君、フライさん、気を失ったラテ君、ベリーちゃん、[アグノム]のデネブさんを私達、“明星”を含めた全員でギルドに運んだ。

6人とも、大した怪我もなくて、ただダメージが大量に蓄積していただけやったみたいやよ。

全員、無事でよかったわー!

………それにしても、あのシャドウさんの行動、訳がわからんよ………。

[ジュプトル]にならともかく、どうしてシルク達にまで……。

あの人、どこからどう見てもシルク達を殺そうとしていた……。

目つきも、鋭かったし………。

その事についてシルクに聞いたんだけど、<まだ話せないわ。>って言って、全然取り合ってくれない。

何か深い訳があるのは確実………。

ウォルタ君にも聞いたけど、<ハク達のためにも、今は[真実]を知らないほうがいいよ………。もう誰も危険にさらしたくないから……。>って言ってた。

[危険]………?[真実]……?考えるほど分からなくなるわ!!

きっと、ウチらの事を思って言ってくれていると思うんやけど、何かが引っかかってもやもやして気持ち悪い!!

フライさんにはまだ聞いてないけど、たぶん結果は同じやと………。


そうこうしているうちに2日が経って、シャドウさんからの知らせ。

とうとう[ジュプトル]が捕まったみたいなんよ。

「シルク達は見に行かんの?」
「ええ。私達は行けないわ…………。この間の事も含めて、訳は終わってから全部話すわ……。」

シルクは暗い声で言った。

ウォルタ君も、フライさんも沈み込んでる……。

「………そうですか……。ハク、自分達だけでいきましょうか………。」
「……うん、そうやね………。じゃあ行ってくるよ……。」

シルク達がこんな感じやから、ウチらだけで[トレジャータウン]に向かった。

………

sideシルク

「……とうとう、捕まってしまったのね………。」
「うん………。シャドウの行方も分からなかったし、足止めするにも出来なかったからね〜。」

この場に、重々しい風が吹き抜けた。

……という事は、グラスさんは[未来]に連れ戻されてしまうって事?

「………シルク、フライ、今までタイミングがなくて言えなかったんだけど、ラテ君についてわかったことがあるんだ……。」

「「わかった事?」」

突然、ウォルタ君が深刻な表情て話し始めたわ。

「うん。チェリーやシードさんから名前だけ聞いている[ラツェル]さん、実はラテ君の事なんだよ………。」

「「えっ!!?」」

うそ!?まさか…………。

「よく考えてみて……。[終焉の戦]以後、人間は存在しないはずでしょ?でも、ラテ君は元々人間だった………。おまけに、3ヶ月より前の[記憶]がない。………対して、グラスさん達がこの時代に来たのも3ヶ月ぐらい前。しかもラツェルさんは人間で、来る途中ではぐれて行方不明………。偶然にしては共通点が多すぎない〜?」

…………言われてみれば、そうかもしれないわね………。

ラテ君に残ってる[記憶]の期間、そしてラツェルさんが消息を経ってからの期間………。

仮に同一人物だとしたら、丁度繋がるわね。

それと、2人の名前………。

私はペンとノートをとりだした。

「ウォルタ君、全然気づかなかったよ……。」
「私もよ。それと、ウォルタ君は読めないかもしれないけど、見てみて。」

私はペンを走らせながら話を続ける。

「ラテ君の名前をローマ字表記にすると、{R・A・T・E}。対して、ラツェルさんは{R・A・T・W・E・L}。ここで、ラツェルさんのほうの文字を少しいじると、{R・A・T・W・E・L}………。{RATE}になるわ。」

私はここでペンを置いた。

書きながら気づいたけど、確かにこうなるわね……。

「!!本当だ!! どう考えても一致するよ!!でもウォルタ君、いつ気付いたの?」

唯一気づいていなかったフライが、驚きで声を荒げた。

「その時フライはいなかったけど、[導きの大河]を調査した時だよ〜。そこでシードさんに会った事は話したよね〜?その時に気づいたんだよ〜。」

なるほどね……。

その時も、ラツェルさんの話をしたわね。

いろんな事がありすぎて見落としていたわ。

「………!!こうしてはいられないよ!!もしシャドウがこの事に気づいていたら、ラテ君達が危ない!!」

「!?ウォルタ君、ど、どうしたの!?」「えっ!!?ウォルタ君!?」

ウォルタ君が、突然切羽詰まった様子で慌てだした。

ウォルタ君!?

「このまま放っておくと、ラテ君まで連れていかれるよ!!止めにいかないと!!」
「でもウォルタ君!私達はシャドウには姿を知られていて危険よ!!」

何考えてるの!!

私達まで連れていかれかねないわ!!

「シルク達には無理だけど、ぼくには[第2の姿]がある!!それを使えばバレずに救出できるよ!!」

言うや否や、ウォルタ君は淡い光を纏った。

ウォルタ君、本気!?

「でもウォルタ君!!」
「ぼくは本気だよ〜!!」

[ウォーグル]の姿で、必死に訴える。

その目に………迷いはないわね……。

「…………わかったわ………。でも、無理だけは絶対にしないで!」
「でも、シルク!?」

私の答えにフライが反論する。

「………わかってるわ………。でも、ラテ君を助けるにはこうするしかないの……。それに、絶対にシャドウは気づいているわ。[水晶の湖]で奴が現れた時に、<仲間割れして……>って言ってたのが何よりの証拠。」

私達にはそれはできない……。

危険なのは分かっているけど、何も知らないラテ君は………。

「………わかったよ……。」
「…………うん!よし!行ってくるよ!!」

言うとすぐに、螺旋階段に向けてウォルタ君は羽ばたいた。


ラテ君………!!どうか無事であって!!


 巻之拾壱 完  続く
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