絆の軌跡〜過去と未来の交錯〜

□巻之拾弐 たいせつなひと………
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六拾弐 決意

西暦7000年 交差点 sideウォルタ

もしかしたらこのままだとラテ君が7200年代に連れてかれてしまう!!
何とかして止めないと!!

ぼくは力一杯羽ばたき、空を切った。

………手遅れになる前に……。

「どうか……、間にあって!!」

高速で階段を登りきり、坂から急降下する。

「えっ!?シード、嘘でしょ!?」
「チェリー、残念ながら本当だよ!!」

「!? チェリーにシードさん!?」

ぼくの視界に突然2人の[セレビィ]が現れ、危うくぶつかりそうになった。

ぶつかる直前で急上昇して、何とか免れた。

………ふぅ、危なかった……。

「「チェリー、大丈夫!?」」

「ええ、何とか。でも、あなた誰!?」

見慣れない[ウォーグル]に、チェリーは疑いの眼差しを向けた。

「ぼくだよ〜![ミズゴロウ]のウォルタだよ!! …今は[ウォーグル]だけど。」
「えっ!?でも………。」

当然、2人とも信じてないね……。

「チェリーには言ったけど、[真実のチカラ]、それで姿を変えれるんだよ〜!」

ぼくは言い終わる前に淡い光を纏った。

「「!!?」」「これでわかったでしょ?…」

いつもの姿、声で語る。

「……ぼくはシャドウに姿を知られているから、この姿で行こうと思ったんだ。……[真実]を知った以上、知らない人を巻き込まないためにも……。」

ぼくは再び光を纏う。

[真実のチカラ]の効果で素速さが上がってるけど、種族上[ウォーグル]のほうが速く動けるんだよね〜。

緊急事態だから尚更……。

「「人を、巻き込ま……」」

「別れるのはまだ速い!!!」

2人の言葉を遮って、誰かが怒鳴る声………、まさか……、シャドウ!?

「「今のは!?」」
「シャドウだ!! こうしてはいられない!!急がないと!!」
「待って!ウォルタ君!!」

ぼくはチェリーの言葉を無視して、どよめく広場(トレジャータウン)に向けて急加速した。

ウォルタ君、今助けるから!!!

………

トレジャータウン sideウォルタ君

「「「「「「「!!?」」」」」」」

ぼくが現場に到着すると、想像を絶する光景が広がっていた。

まず目に飛び込んできたのは、怪しく渦巻く黒い物体………、あれは何!?

周りにはラックさんをはじめとしたギルドのメンバー、トレジャータウンのみんな、ベガさん、デネブさん、アルタイルさん………。

……何より一番驚いたのが、シャドウがラテ君とベリーを鷲掴みにして、まさに黒い渦に引きずりこんでいる、その瞬間だった。

ぼくから渦まで大体10m、もう渦に入りかけているから間に合いそうにない!!

!!?

「ラテ君!!!ベリー!!!」

無駄だとわかっていても、叫ばずにはいられなかった。

だけど、ぼくの叫びは虚しく空気を振動させるだけだった………。

言い終わるか終わらないかのタイミングで、渦は収束、消滅した。

「くっ……!遅かったか……。」

ぼくは右翼で頭を抱えた。

………シャドウ、やっぱり気づいてた………。

でも、なんでベリーまで………。

ベリーは………、グラスさん達とは全く関係ないのに……。

ぼくな事の無念さで歯を食いしばった。…………嘴だから歯なんてないけど………。

周りの人達は、立て続けに衝撃的な出来事が続いたから言葉を失っていた。

1つはシャドウの行動。もう一つはトレジャータウン、ギルドにはいないはずの[ウォーグル]、つまりぼくの登場。

「………やっと追いついた……。」
「この状況はまさか………、グラスさん……。」

沈黙を破り、チェリーとシードさんが到着した。

「チェリー、そのまさかだよ……。おまけに、ぼくの大切な人まで連れてかれた………。グラスさんと一緒に………。」

[ミズゴロウ]の時よりも低い声で呟いた。

「…………今のは一体……。」
「それに、チェリーさんとシードさんはともかく、[ウォーグル]のあなたは………♪」

シャインさんがやっとの事で口を開き、フラットさんがぼくのほうを見て言った。

「………フラットさん、ずっと黙っとったんやけど、[ウォーグル]の彼はウォルタ君なんよ……。」

ぼくが言う前に、事情を知っているハクが呟いた。

……難しい顔してるから、さっきのシャドウの行動と[水晶の湖]での出来事が引っかかっているのかもしれない………。

「……いやいやハクさん、またそんな冗談を………♪」

フラットさん、声が上づって、パニック状態だよ………。

「フラットさん、これは紛れもない[真実]だよ〜……。見てて。」

ぼくはゆっくり話し、注目を集めた。

目を閉じ、意識を集中させる。

「「「えっ!!?」」」

光がぼくを包み、ものの2秒で姿を変えた。

白い[真実の証]、銀のリングのネックレスをした[ミズゴロウ]………、みんながよく知っている普段のぼくが姿を現す。

「…………こういうこと。」

「!!?」

ハク、シリウスを除いて言葉にならない声が一斉にあがった。

「………この様子だと、やっぱり気づいていたのね………。」
「でも、どうして2人まで……。」

そこに、騒ぎを聞きつけて………正確には、ぼくの叫び声かな……?……、シルクとフライが駆け寄ってきた。

「……ぼくのことを踏まえて、[真実]を話すよ………。」

事情を知っている5人はゆっくりと、ラテ君の事以外の[真実]を語りはじめた。

ラテ君の事はチェリーとシードさんは知らないけど……。

………

数十分後 sideウォルタ

「………これで全部よ………。」

シルクの言葉で、[真実]を語り終えた。

もちろん、辺りは静まり返っている……。

「………ということはつまり、[ジュプトル]は実はいいやつで、チェリーさんと[星の停止]を食い止めるために[未来]からやってきた……♪そしてシャドウさんは極悪非道の黒幕で、[星の停止]を引き起こそうとしている……♪」

フラットさんが、さっきまでの話を纏めた。

………極悪非道とまでは言ってないけど………。

でも、どうしてベリーまで………。

ぼくが独り、考えこんでいる間に議論が展開される……。

………………よし、こうなったら………。

「………チェリー?チェリーはグラスさんをまた導くために、一度[未来]に戻るんだよね〜?」
「えっ?うん、わたしはそのつもりだけど……。」

チェリーは不思議そうに聞き返す。

「なら、ぼくも[未来]に連れてって!!」

「「えっ!!?何だって!?」」「「ウォルタ君、本気!?」」

ぼくの意外な言葉に、4人は一斉にぼくのほうを向く。

「ぼくは本気だよ!!2人とも、ぼくの大切な人、かけがえのない人なんだ!!」

ぼくは心の底から訴える。

特にベリーは幼い頃から仲良くしてきた親友…………、いや、それ以上。

母子家庭で、母さんも殆ど家に居なかったぼくにとっては、何にも変えられない大切な人………。

………ベリーがいなければぼくはどうなっていたんだろう……。

………ベリーがいなければ多分ぼくは孤独だった………。

ベリーがいなければシルク達とも出逢ってなかった。

ベリーがいなければここまで旅が好きじゃなかった。

ベリーがいなければ、今のぼくは存在しない!!

「…………ウォルタ君、わかったわ………。」

「「シルク!?」」「シルクさん!?」

「ウォルタ君、きっと命懸けになると思うわ……。それでも、行くのね?」
「もちろんだよ!!ぼくは誰に何を言われようとも、[意志]を曲げるつもりはないよ!!」

ぼくはまっすぐ、真顔で4人を見つめた。

…………これがぼくの[決意]だ!!

[真実]の名を背負う者として………、いや、一匹の[ミズゴロウ]として、連れ戻してみせる!!2人を!!
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