一対の光

□第1話 左刀の双剣使い
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03

凛「……ほら翔、早く来なさいよ!」
翔「はいはい…、分かったから…。」

僕の相方は後を走る僕をキツイ口調で急かし、かなり焦りながら住居群を駆けていく……。

……ついさっきとはまるで別人でしょ…?
朝起きてすぐはあんな感じだけど、これが普通なんだよ。

…毎日ギリギリで焦るなら、もっと早く起きてほしいんだけど……。
前から何回も頼んでるんだけど、無駄に頑固で全然聞かないんだよ…。

僕の勝手な解釈だけど、名家の出身であるプライドから……かな?

凛「もっと早く来てくれたらこんなに焦ることは……」
翔「だから、それは凛が30分経っても出てこないからでしょ?」

弾んだ息を切らしながら、僕は凛の言葉を正論で遮った。

……何か悪いね……、物語の初めからこんな喧嘩から始まって…。

さっきも言ったけど、この遅刻の原因は彼女。
僕はちゃんと余裕をもって迎えに行ってる。

凛「なら、もう10分早く……」

……キリがなさそうだから省いてもいいかな?


……というわけで、僕達はいつも通り言の葉をぶつけながら石造りの迷宮を駆け抜けた。


凛「ハァ…ハァ……。 何とか……ハァ……間に合った……。」
翔「ちょうど1分前………。 ギリギリ……。」

疾走中に腹の虫がおさまったのか、彼女はゼェゼェ言いながら呟いた。

A「………今日は、大丈夫だったな。」

僕も、事の発端に続いた。

……良いのか悪いのか何とも言えないけど、この早朝ダッシュのお蔭で僕達の走るスピードは同じ参等の中でも群を抜いている……。

そんな僕達を、1人の男性が呆れた様子でぼやいた。

その彼は遠距離の攻撃に特化した武器……、弓矢を携えている……。

翔「雄志さん、セーフ……ですよね……?」
雄志「……ああ……。 問題ない……。」

その彼、壱等兵の楓雄志さんが無表情で答えた。

……気づいてるかもしれないけど、この人が僕達の上官。

でも、この人も凛と同じでちょっとしたクセがね……。

凛が強気で男勝りなのに対して、雄志さんは無口。
…必要最低限の事しか言わないんだよ…。

普段僕と凛が喋り倒してるから、彼の事を忘れがちなのはここだけの話……。

出来れば、この事は内緒でお願いします……。


……ちなみに、雄志さんの属性は風で波長はε-B。
詳しくは聞いたことがないけど、オリジナルの魔法を2つぐらい使ってるのを見たことがあるよ。

凛「……で、今日の……任務は……?」

全力疾走した直後でまだ息が弾んでいる凛は、今日の事について彼に尋ねた。

雄志「……[西沙]までこの親子の護衛だ。」

そう言いながら、彼は彼の後ろで唖然としている2人に目を向けた。


……ちなみに[西沙]っていう町は、今僕達がいる首都……、[涼沙]から渓谷沿いに上流に向けて進んだ先にある。

……もちろん、[西沙]も琶の国の藩の1つだよ。

翔「護衛……ですね……?」
B「よろしくお願いします。」
C「……お兄ちゃんたち……、大丈夫なの…?」

僕が確認の一言を加えると、……多分商人かな?
雄志さんと同じくらいの歳の人が僕の言葉に答えた。

対して、その彼の子供が僕達の事を心配そうに見ていた。

凛「…これはいつもの事だから…。」
翔「…だから心配しないでください…。」

そう言ってから、僕達は「問題ないよ!」って付け加えた。



そして、細かいことを2・3点確認してから、街の外へと続く道へと歩みを進めた。



補足だけど、商人が僕達……、兵士を雇う理由は、街の外では獣や魔物がたくさんいるから……。
…いくら魔法が発展している国だからと言っても、誰もが戦えるわけではない……。

………こういう職業制度だから仕方がないんだけど………。
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